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2025-02-19

新シリーズ開幕! 主役はまさかの象!? 『象が来たぞぉ(一)』

新シリーズ開幕! 主役はまさかの象!? 『象が来たぞぉ(一)』

美人姉妹くノ一、温泉でのみ無敵の忍者などが入り乱れる、新感覚の時代小説。

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新聞連載で話題沸騰! 伊達の陰謀 VS 温泉忍者!?

ときの将軍・徳川吉宗の命で、“お庭番”である湯煙り権蔵とくノ一・あけびは四十年前、松尾芭蕉が「おくのほそ道」の旅でつかんだという奥州藤原家の金塊の謎を探るため、仙台藩に潜入した。
一方、西では吉宗が呼び寄せたゾウが長崎から江戸に向かうが、なぜか命を狙われているという。
大の温泉好きで町の湯屋にお忍びで通う将軍吉宗をはじめ、個性的な忍者や家臣らが入り乱れるユーモア時代小説シリーズ第一弾。

■目次

第一章 田力とくノ一
第二章 湯屋やの仲間たち
第三章 象は走る
第四章 捕まったお庭番
第五章 湯屋やの密談
第六章 怪しき唐人屋敷
第七章 権蔵を救え
第八章 独眼竜の無念
第九章 象が行く道
第十章 あけびのおかげで

五十がらみの男が温泉につかっている。
人の顔というのは、ここまでだらしなく崩れるものかと驚くくらい、すっかり弛緩しきっている。
顔はすでに真っ赤である。髷のなかや額からは、油を垂らしたみたいに、汗が絶え間なく流れ落ちている。目はうつろで、なにかを見ているようには、とても思えない。
だが、突如
「あちっ、あちちちっ!」
そう言って、いきなり湯舟から飛び出し、洗い場をごろごろと転がった。
「ふう。やっぱり熱いよな。ここの湯は」
と、男は呻いた。だが、けっして嫌そうではない。湯の熱さを嬉しがっているようである。
まもなく男はのそのそと起き上がると、湯舟の縁のところであぐらをかいた。
それから満足げに湯舟から上がる湯気を眺め、
「うむ。やっぱりここもいい湯じゃのう」
と、つぶやいた。
男の名を、権蔵という。
一部では、〈湯煙り権蔵〉という綽名で知られている。

■著者

風野真知雄(かぜの まちお)
1951年、福島県生まれ。立教大学法学部卒業。93年、『黒牛と妖怪』で第17回歴史文学賞を受賞し、デビュー。2002年、第1回北東文芸賞、15年、『耳袋秘帖』シリーズで第4回歴史時代作家クラブ賞・シリーズ賞、『沙羅沙羅越え』で第21回中山義秀文学賞を受賞。著書に、『いい湯じゃのう』『新・若さま同心 徳川竜之助』『わるじい義剣帖』『味見方同心』『大名やくざ』シリーズ、『恋の川、春の町』など。

執筆:株式会社PHP研究所

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