2025-10-06
リアルな食体験を描く短編小説集 『おいしいはやさしい』
食べるってめんどくさい、でも、愛おしい
2023年にアイドルを卒業した宮田愛萌さんは、同年『きらきらし』(新潮社)で小説家デビューを飾りました。短歌やエッセイも発表しており、作家として活躍の場を広げています。2025年1月には、私立中学の入試問題に作品が採用されたことも話題となりました。
■実際に味わいながら描いた「食」と人生が交差するあたたかな連作短編集
万葉集、恋愛、短歌に続いて選んだ最新作のテーマは「食」です。「食べるのが好き」「作るのが好き」「人に作ってあげるのは好きだが自分には適当」「人に作るのはプレッシャー」など、食事に対するスタンスや思いは人それぞれ。そんな多様な感覚が連作短編集のインスピレーションになったといいます。「できるだけ経験したことを描きたい」というこだわりから、作中に登場する料理は、自ら飲食店に足を運んで取材したものばかりです。味や香り、食卓の空気感を物語に織り込み、食と人生が交差する味わい豊かなストーリーを4編収録しました。
『おいしいはやさしい』は食べ物にまつわるお話です。私が昔ダイエットに夢中になっていった時には、飲食に抵抗があったり、偏った食生活をしていたものです。おかげで今もまだ、お腹がすく、という感覚が返って来ないままで困っています。そんな私ですが、食べ物への興味は人並みかそれ以上にあり、このお話を書いている間は取材と称して色々なお店に行くことや自分で作ることを楽しんでおりました。登場人物の味覚と私の味覚が違うせいで、私が思ってもないことを作中で述べなければならなかったこともありましたが、それも含めて書くのがすごく楽しかったです。
読んだ方が、お腹が空いたな、何食べようかな、と思ってくださったら嬉しいです。(宮田愛萌)
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■あらすじ
どうしても料理をしたくない新婚のアラサー、過度なダイエットに励む姉を見守る受験生、家出して都会を満喫する主婦……。食品の成分表示が気になるオーナーが開いた「カフェ・オヴィ」には食と人生に悩む人が訪れ、自分の心と向き合う。女性の内面を、温かく繊細に捉えた、書き下ろし連作短編集です。
■著者
宮田愛萌(みやた・まなも)
1998年、東京都生まれ。2021年、國學院大學文学部卒業。17年から22年までアイドルグループのメンバー。著書に、『きらきらし』(新潮社)、『あやふやで、不確かな』(幻冬舎)、『春、出逢い』(講談社)、写真短歌集に、『わたしのをとめ』(短歌研究社)、共著に、『晴れ姿の言葉たち』(文藝春秋)などがある。
執筆:株式会社PHP研究所








