2025-12-16
「本当に大切なものは何か」を心に問う、傑作ファンタジー!『花売り姫』
“ある問題”を抱えた梓未は花畑を管理している「ひい」と出会い……
ある理由で高校を退学し、母と二人で田舎に引っ越してきた梓未。母が営む花屋を手伝っていたが、ある時、家の裏に紫陽花や桜、桔梗、牡丹など、咲く季節が違うはずの花々が咲き乱れる不思議な花畑を見つける。
花畑の主である女性“ひい”と出会い、仲良くなった梓未は、美しい花と自分が持っていたものを交換してもらうようになるが、次第にひいの態度が変わっていき……。
「本当に嫌いなものは何か」「本当に好きなものは何か」「本当に大切なものは何か」を問う、不思議で美しい物語。
「──すごいっ!」
梓未は身を乗り出して歓声をあげた。
こんな近くに、こんなあざやかな花畑があったなんて。
梓未の家と山にはさまれた場所に、ゆるくなだらかになった土地があり、色とりどりの花がところせましと身を寄せ合って咲いていた。雑木林に囲まれた花畑は、ひとまわり小さい体育館くらいの広さがある。そこに、花がこれでもかと咲いているのだ。
夢でも見ている気分だった。
たったいま、いやなことを思い出したから、ごほうびでももらったんだろうか。じっさい、こんな花畑を前にしたら、花屋の娘でなくともテンションが上がるに決まっている。
梓未はきょろきょろと周囲に目を走らせた。
この秘密の庭に入っていく道が知りたい。入口はどこだろう。
だが、右手を見ても左手を見ても、隣家の生垣がつづいているばかりで、家の裏手に位置する花畑へ通じる道は判然としない。もしかしたら、雑木林の中に道があるのかもしれない。目を凝らしたが、梓未には見つけられなかった。だが、花畑の右奥、雑木林のすぐ手前に、小さな小屋が建っているのを見つけた。
小屋があるということは、人がいる。
だれかがこの花畑を世話しているのだ。
■著者
長谷川まりる(はせがわ まりる)
1989年、長野県生まれ東京育ち。職業能力開発総合大学校東京校産業デザイン科卒業。2018年、『お絵かき禁止の国』で講談社児童文学新人賞佳作を受賞、翌年、同作でデビュー。22年、『かすみ川の人魚』で日本児童文学者協会新人賞、24年、『杉森くんを殺すには』で野間児童文芸賞を受賞。著書に『呼人は旅をする』『この世は生きる価値がある』『アリーチェと魔法の書』『ぼくのシェフ』などがある。
執筆:株式会社PHP研究所








