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決定!ノンフィクション本大賞2018『極夜行』陽の光が絶えた北極圏での壮絶な日々

極夜行
1,500円 (税込)

 

探検家にとっていまや、世界中どこを探しても”未知の空間“を見つけることは難しい。大学時代から、様々な未知の空間を追い求めて旅をしてきた角幡唯介は、この数年冬になると北極に出かけていた。そこには、極夜という暗闇に閉ざされた未知の空間があるからだ。極夜ーー「それは太陽が地平線の下に沈んで姿を見せない、長い、長い漆黒の夜である。そして、その漆黒の夜は場所によっては3カ月から4カ月、極端な場所では半年も続くところもある」(本文より)。彼は、そこに行って、太陽を見ない数カ月を過ごした時、自分が何を思い、どのように変化するのかを知りたかった。その行為はまだ誰も成し遂げていない”未知“の探検といってよかった。

シオラパルクという世界最北の小さな村に暮らす人々と交流し、力を貸してもらい、氷が張るとひとりで数十キロの橇を引いて探検に出た。相棒となる犬を一匹連れて。本番の「極夜の探検」をするには周到な準備が必要だった。それに3年を費やした。この文明の時代に、GPSを持たないと決めた探検家は、六分儀という天測により自分の位置を計る道具を用いたため、その実験や犬と自分の食料をあらかじめ数カ所に運んでおくデポ作業など、一年ずつ準備を積み上げていく必要があった。そしていよいよ迎えた本番。2016年〜2017年の冬。ひたすら暗闇の中、ブリザードと戦い、食料が不足し、迷子になり……、アクシデントは続いた。果たして4カ月後、極夜が明けた時、彼はひとり太陽を目にして何を感じたのか。足かけ4年にわたるプロジェクトはどういう結末を迎えたのか。

読む者も暗闇世界に引き込まれ、太陽を渇望するような不思議な体験ができるのは、ノンフィクション界のトップランナーである筆者だからこそのなせる業である。

 

■決定!ノンフィクション本大賞2018


全国の書店員が「今いちばん売りたい本」を選ぶ「本屋大賞」と、「Yahoo!ニュース」が連携して新設された「Yahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞」が発表されました。

大賞は角幡唯介『極夜行』。

冬至ごろには太陽が昇らなくなる北極圏を、犬一匹だけを連れ、そりで旅する数ヶ月の冒険記です。

ほかノミネート作品はこちら。

 

■真の闇、真の光を求める「脱システム」の旅


著者の旅は困難を極めます。
難関の氷河越えを阻むかのように襲うブリザード、補給を予定していた拠点がシロクマに襲われていたための食糧不足、太陽が昇らないためむしろ満月の夜の方が多少でも明るくなる氷原での迷子…

たいていの人は「なぜ、そうしてまで」という感想を持つと思います。もちろん私もそうでした。

著者は「脱システム」を理由として挙げています。
人工の光に囲まれた現代人にとっては真の闇も、そして闇と対比される太陽の光も、失われたものとなってしまいました。
一年で最も太陽の勢いが衰え、あるいはこの日を境に太陽が再び活気を見せ始める冬至(南半球では夏至)を死と生の象徴として祀ってきた古代の信仰は、現代ではカレンダーに記される行事のひとつにすぎません。
(クリスマスは古代の冬至祭が発展したものという説もあります)

夜、昼、太陽、月、星。

現代のシステムから離れ極夜を旅して、これら天体の生み出す圧倒的な力を目にした時、とりわけ極夜の果てについに目にした太陽は、現代人には感じられない圧倒的な力と輝きでまさに原初信仰の対象としてふさわしい存在感を放つのではないか。

それを感じるため、北緯78-79度の氷河&ツンドラ地帯をひとり旅するのですから、現代に冒険はなくなったというべきか、もしくは現代にも冒険の余地はまだまだあると思うべきか…
いずれにせよ究極の闇の中での著者の心の動きはたいへん読み応えありです!

 

■「夜ごとに私たちは死に、朝ごとに新しく生まれる」


極夜を求めて旅する記録の本書は、旅の約3年前の著者の長女誕生のシーンから始まります。

表紙の暗い空に若干の恐れを抱き、どんなハードな行軍が出てくるのだろう、途中でアザラシに襲われてしまったりするのだろうか(襲われていませんでした)、と北極圏の知識ほぼナシで読み始めた自分にとっては意外なツカミと、出産という行為に為す術なく立ち会う夫=著者の淡々としているのに面白い筆致にあっという間に引き込まれてしまいました。

「夜ごとに私たちは死に、朝ごとに新しく生まれる」

というのはイギリスの詩人エドワード・ヤングの代表作「夜想」の一節ですが、これを引くまでもなく古来より太陽は生で、それが消える夜は死そのものでした。
極夜というもっとも「死」を感じる状況の果てに著者が見た太陽がどんな感情を生み出したか、ぜひ読んで感じてみてください。

2018年の冬至は12月22日(土)です。

それでは、今日も素敵な読書のお時間を!

 

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極夜行
1,500円 (税込)

 

※2018年11月08日時点の情報です。価格や巻数など、最新の情報は商品ページからご確認ください。