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【BLコミック】両性具有の王子が“嫁”入り。ふたつの国の思惑が交差するファンタジーBL『狼の花嫁』

狼の花嫁 1
700円 (税込)

【民族BL×両性具有】王と侍女の間に生まれた第六王子のルーイには、誰にも明かせぬ秘密があった。それ故に父王に虐げられ、母の命と引き換えに「女」として政略結婚することを命じられる。嫁ぎ先は隣国、狼と共に生きる民族の住まう地。しかし、婚礼を終えた晩、番となる王子・ゼスに、王女ではないことを見破られてしまう。追いつめられたルーイは、自身が「半陰陽」であることを告白しーーー。新たに紡がれる番の運命の物語、開幕。

狼は恋に啼く』や『狼は花の馨り』に続く狼シリーズ3作目、『狼の花嫁』(りゆま加奈/フロンティアワークス)は両性具有の王子様が主人公の物語です。前作では、狼とともに暮らす民族の中で稀に生まれる白い髪をもつ子ども(白鹿)の視点から描かれていましたが、今作では、この民族に嫁入りに来る、隣国の王子・ルーイから物語は始まります。

 ルーイは、大国の第6王子でしたが、王と侍女との間に生まれた子であり、人目につかないよう幽閉され、周囲の人々は彼を気持ち悪がりました。ルーイがそれほどまでにひどい扱いを受けたのは、彼の生まればかりが原因ではありません。それは、彼のもつ身体によるものでした。

 ルーイは陰と陽のどちらももった「半陰陽」、つまり両性具有であったのです。自分の身体は好奇の目にさらされ、差別を受けました。時折挟まれる回想シーンには、どうやら若い男性から性暴力にあったかのような描写もあります。劣悪な環境で育ってきたルーイは、自尊心も低く、内向的な青年でした。

 そんな彼に、ある日王から命令が下されます。それは長らく戦争関係にあった隣国の王子との結婚でした。嫁ぎ先は小さな民族の国ではありますが、そこを通らないと豊富な資源が手に入りません。大国といえど少し分の悪い王は、しかし彼の娘たちを嫁として渡すのはもったいないと、ルーイを渡すことを思いつきました。侍女との子とはいえ、血はつながっているはずの父から「利用価値」のためだけに隣国に飛ばされることになったルーイ。彼は絶望の中、しかし拒否することによって自分の母親に危害があってはいけない、と従うことにしたのです。

 冒頭は、なんとも暗い。ルーイのあまりにかわいそうな境遇を思うと心が痛みます。しかし、彼が嫁入りしてから、少しずつ作中の雰囲気はあたたかく変わっていきます。

 ルーイの夫となるゼスは、無愛想で言葉の少ない王子でした。ルーイの様子がおかしいことにいち早く気づき、彼が男であると知ったゼスは、しかし「人質」としては使えるとしてそのまま自分の番(つがい)としておくことにします。

「人質」といいながら、ルーイのことを気にかけ、彼の髪色を笑うものをたしなめ(ゼスの民族は黒髪が基本であり、ルーイの金色の髪は異国のものでした)、彼の笑顔にハッとした表情を浮かべるのです。ゼスは酒の席で媚薬を飲まされ、理性を失ってルーイを襲いかけたときも、彼の涙を浮かべる表情に手を止めました。「怖がらせてしまった」と後日謝るような優しさもあります。

 不器用なゼスと自信のないルーイは、少しずつ、本当に少しずつですが、心の距離を近づけていきます。

 そんな2人の間に、白鹿であり、もともとゼスの番候補であったユルール(ユルールは男だが、この世界では白鹿は神聖なものとして王子と番になることが定められています)が登場し、再び物語はうねりを見せるのです。ゼスと仲がよさそうなユルールは、しかしルーイにも、何だか意味ありげな視線を向けます。

 狼とともに暮らす民族と、神聖な白鹿、そして両性具有の王子様。この三者の関係性には、どうやらもう少し謎がありそうな予感を残し、第1巻は終わります。果たして、ゼスとルーイは今後どう関係を深めていくのでしょうか。そして、ユルールの思惑とは。緊張感のある物語のあとのおまけ漫画には、狼とルーイの可愛らしい絡みもあって癒されます。第2巻ではもっとルーイの笑顔が見たいです。

文=園田菜々

▼この記事で紹介した書籍

狼の花嫁 1
700円 (税込)

 

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