- 菊池健彦(きくち・たけひこ)さん
- 1959年生。青森出身。大学卒業後、洋書店の営業マンとなるがノルマを達成できず34歳で退社、引きこもり生活に入る。ほどなく英語学習に目覚め寝食を忘れるほど没頭するが、引きこもり生活7年目にして貯金が底をつき上京して働くことを決意。初めて受けたTOEICで970点をマーク。以降満点の990点を24回記録する。海外渡航経験はない。趣味はリストウェイト、アンクルウェイトをつけてのウォーキング。
ブログ:https://kikuchi.wondernotes.jp/
インタビュー
■イングリッシュ・モンスターの英語学習法を大公開!- −−約7年間引きこもりながら英語を勉強されたということにまず驚きますが、その原動力となったものは何だったのでしょうか?
- 菊池さん ただ英語の勉強が面白かっただけなんです(笑)。引き込もっていたからといって、社会が憎いとか人が怖いとかそんな気持ちはみじんもなかった。貯金を食いつぶしながらの生活だったので、将来に不安がなかったといえばウソになりますが勉強してる間は忘れられた。最盛期は1日20時間ほど勉強してましたね。若い人がAKB48に夢中でファンレターを書くのと同じ感覚、かな?

- −−それほどまでに菊池さんをひきつけた英語の面白さとは?
- 菊池さん 最初は「TIME」とか「Newsweek」の記事を1ページ読むのに1日がかりだったんですよ。1ページ中に知らない単語が何十個も出てくるんだから。それが半日になり、数時間になり、そのうち日本の新聞を読むのと変わらないスピードで読めるようになった。そうすると書いてあることがどうもおかしい…、と思うようになってね。僕が勉強していた90年代の日本はまだ勢いがあったせいか日本が海外の記事で叩かれることが多かった。それが悔しくて採用されることのない反論投稿をせっせせっせと投稿し続けてました(笑)。
- −−本書では特に単語の重要性を唱えていらっしゃいますね。
- 菊池さん 英語に苦手意識のなかった自分でも最初は「Newsweek」1冊読むのに3ヶ月以上かかったんです。1冊の中に知らない単語が数千と出てくる。それで嫌というほど単語の恐ろしさを知りました(笑)。だから僕の引きこもり留学の基本は「単語」です。もちろんただやみくもに覚えればいいというわけではないですよ。TOEICならTOEIC頻出単語に絞るのが効果的でしょう。でも単語を覚えずにテクニックだけで点を取るという方法を、僕は知りませんね。
- −−具体的にはどのような方法で単語を学習されたのでしょうか?
- 菊池さん 記事中にわからない単語があれば、単語にマーカーを引いて意味を調べる。そして記事の余白に単語とその意味を書き写していく。たとえば「cling」であれば「c---------- =執着する、ひっつく」という風に単語の頭文字だけを書き写す。これは英語→日本語、だけではなく日本語から英語にも翻訳できるようにするためです。この調子でわからない単語をどんどん書き記していって何度も記事を読み返しながら単語を覚えていく。さらにわからなかった単語を単語帳にも書いて覚える。
- −−それだけ膨大な数の英単語、忘れてしまうことはありませんか?
- 菊池さん もちろんありますよ。これだけ勉強しても悲しいことに2ヶ月経つと忘れてるんです。だけどこれだけは言えます。忘れることを恐れないでください。「また覚えられる、楽しめる」って思うんです(笑)。それに、1度覚えた単語は再び思い出すことでさらに定着する。ゼロに戻るということはないんです。だから僕の方法は10個を完璧に覚えるのではなく、100個覚えて99個忘れる、その繰り返しです。

- −−英語が必要だと思っているけれど、なかなか時間が取れない…そんな忙しいビジネスマンが英語を勉強するにはどうすればいいでしょうか?
- 菊池さん 真面目な方ほど計画を立ててその通りに実行しようとするんですが、実際は忙しくて勉強の時間すら取れないことも多いでしょう。だけど悩んでる時間があるなら単語1つでもいいから覚えたほうがいい。忙しくて5分しか勉強できなかったなら5分でいい。1週間何も勉強できなかったとしてもその5分が無駄になることは絶対ないんです。もちろん1ヶ月たてば忘れますよ。でもその時にまたゼロから覚えるのと、忘れたものを取り戻すのとでは全く違います。できなかった自分を責めるより、できる時にできることをやる。あとはできるだけ自分の好きなジャンル、たとえば音楽なら音楽、で勉強するといいしょうね。
- −−英語力を計る指標としてTOEICの重要性も高まってきていますね。
- 菊池さん ビジネスに挫折した僕が言うのも何ですが、成熟した日本市場で企業が拡大し続けるにはやはり海外進出しかない。そのために必要なスキルが英語であるのは間違いないし、TOEICは少なくとも「読める」ことの証明にはなる。TOEICだけで英語力は計れないとは思いますけどね。
- −−TOEIC対策として注意すべき点は?
- 菊池さん 皆さん、忙しいとつい効率を追い求めて「これさえやれば…」とか「気がついたらペラペラ」などのうたい文句が踊る本に手を出しますよね。でも「明日から営業成績が100倍に!」なんて本が胡散臭いのと同じで、僕からすれば英語に近道はなくて1つ1つ単語を覚えていくしかないと思っています。あとは実際にTOEICで何回も満点を取ってる人の本で勉強することも大事だと思いますね。
- −−菊池さんが考える、英語学習で一番大切なこととは?
- 菊池さん 楽しむこと。やめないこと。死ぬまで続けること(笑)。英語を教えに行った企業で50代くらいの方に聞かれたんです。「NHKの"基礎英語"で勉強してるけど、自分みたいな年齢の人間が中学生向けの教材で勉強しても意味ないですか?」って。なんだか胸が「キューン」となってね。こと英語の勉強に関しては何歳までに何かを必ずやらなければならないなんてことはまったくないです。35歳だろうが55歳だろうが、いつからでも始められる。僕は3日坊主推進論者でもあってね。3日でやめたってそれを100回繰り返せば1年坊主。1年坊主を3回繰り返せばTOEICの200点、300点楽に上がりますよ。

- −−最後に。本書の売れ行きも好調、テレビ出演、教材開発など次々と新しいジャンルに挑戦されていますが、菊池さんの次なる夢は?
- 菊池さん
…うーん、ちょっと恥ずかしいんですけどお金が貯まったらまた昔みたいに引きこもって一日中英語の勉強したいですね(笑)。お金が無くなって上京した時に一番心残りだったのはリスニングに関して報道番組、討論番組レベルの聞き取りが不完全だったことなんです。だからもう一度引きこもってリスニングを強化できればな…、と。あと、「もう年だから英語なんて無理かな」とおっしゃる方も多いんですが、そうじゃない、いくつになってもどんな方法でも勉強はできるんだよ、ということをFace to faceで伝えていきたいですね。
<後記>
知名度が上がってきた今もスーツは5,000円、一食500円の「清貧」生活を送る菊池さん。お話を聞きながらその強さの秘密が理解できました。それはどこまでもポジティブ、ということ。できるときにできることを、できない自分を責める時間があるなら1つでも単語を!というその精神は人生に通じる言葉にも思えます。「今後の夢」を聞いたときに返ってきた予想外の言葉には取材陣一同ビックリ。どこまでも無欲、徹底したその英語オタクぶりに心打たれる思いでした。さ、原稿書いたら今日は1つでも英単語、覚えようかな。
Shinobu Nakagami

















