- 香川芳子(かがわ・よしこ)さん
- 1931年、東京都生まれ。女子栄養大学学長、医師、医学博士。1954年に東京女子医科大学を卒業後、東京大学大学院・カリフォルニア大学大学院を修了。1969年に女子栄養大学内に栄養クリニックを開設し、予防医学の観点から、「四群点数法」に基づく生活習慣病の治療に当たる。埼玉県坂戸市との共同プロジェクト「さかど葉酸プロジェクト」により脳血管障害や認知症患者を減らし、医療介護費の削減を進めるなど活動は多岐に渡る。著書は『なにをどれだけ食べたらいいの? バランスのいい食事ガイド』『好きな日から始められる栄養家計簿』など多数。
インタビュー
■自然界にあるものを、あるがままの姿で食べるのが一番
- −−2011年1月に出版された『女子栄養大学の学生食堂』が話題になっていますね。学生食堂もたくさんの一般の方でにぎわっているとか。
- 香川さんそんなご馳走じゃないんですけどね(笑)。価格も高くないですから。
- −−定食が420円。お腹いっぱい食べてこの値段は安いですよね。
- 香川さんもともとは、学生と職員のためだけの食堂ですからね。女子栄養大学の学生は、お昼以外に時間割が空いていないので、13時以降だけ一般の方にオープンにしているんです。召し上がれる範囲の方には、ご自由に召し上がっていただければと思います。ただ、あまり外向けにお知らせすると、ご近所にも食べ物屋さんがいっぱいございますし、申し訳ございませんので…(笑)。おいでいただくのは、ありがたいんですけどね。
- −−女子栄養大学の学生さんたちは、太りすぎず痩せすぎず、バランスの取れた体型の方が多いですね。
- 香川さんそうですかね(笑)。みんな学生食堂のメニューを喜んで食べていますよ。ここの学生は、入学した途端に、自分が食べているものを記録して提出しなければならないんです。栄養の勉強をしようというのに、自分自身がちゃんとできていないで、なんで他人様のことが言えるんですかと。

天ぷらや唐揚げなど揚げ物を使いつつ、
カロリーを抑えているのが特徴のひとつ。
- −−学食のホワイトボードに、それぞれの食事の栄養素の表が張り出されていましたね。一方で、栄養があると太ってしまうんじゃないか、と連想してしまうんですが。
- 香川さんそれはカロリーの問題です。カロリーが多いと太るんですね。栄養素にはカロリーの他に、ビタミン・ミネラル・食物繊維などいろいろあります。そのような要素が揃った時に、「栄養がある」というんです。例えば、野菜が健康にいいというのは、いろいろな成分を含んでいるからなんです。そこからひとつだけ成分を取り出して高い値段をつけて、健康食品だとか、サプリメントだとか言ったりしていますよね。でもそんなことをするより、野菜をそのまま食べたほうがいいんです。
- −−なるほど。カロリーだけではなく、複合的な栄養素として考えなければいけないんですね。
- 香川さんええ。人間は大昔から自然界のものを食べていますよね。ですから、お砂糖だけとか、でんぷんだけとか、精製したものはないんですよ。そんなものにはカロリーは有るけれど他の栄養がないわけです。
- −−学生食堂では、栄養豊富な胚芽米(※1)を使われているとか。
- 香川さんそうですね。お米にしても、お米自身が種から芽を出すためには、でんぷんを利用してエネルギーにしなきゃならない。エネルギーを生成するためのビタミンをちゃんと持っているんです。でも人間は、お米を一生懸命搗いて真っ白にして、それをむしりとっちゃうんです。そして昔の人間は片っ端から脚気になってしまっていました(※1 胚芽米:ビタミンB1、ミネラル、食物繊維などの豊富な栄養を含む「胚芽」を残した米)。
- −−もともと食べ物には、十分な栄養素が含まれているんですね。
- 香川さんええ。こんな風にして食べられるんですよ、っていうことを学生は学食で覚えるわけですよ。今、便秘って騒いで薬を飲んだりしてますけど、四群点数法(※2)で、ちゃんと350グラムの野菜を食べている人はそんなことする必要ないんです。一年生になって四群点数法に従って食べ始めると、三日で頑固な便秘が治ったとか、すごく元気になったとか言っていますよ。必要なものはちゃんと摂らなきゃいけないんです(※2 四群点数法:食品を栄養素別に四つに分け、それぞれの食品群から一日に何をどれだけ食べると体によいか算出する食事法 『女子栄養大学の学生食堂』より)。
- −−そんな短期間で結果が出るんですね!
- 香川さん三日間で変わったっていう学生が結構いますよ。改めて自分で考えなおす機会になっているんです。今まで食べていたものがとんでもなかったっていうことが分かって、家族にもそれを伝えています。うちの卒業生は、割合健康状態がいいんですよ。もう、60代、70代になってもピンピンして仕事してるし、ご両親もみなさん健康です。年をとったら弱るっていうのは、当たり前じゃないんですよ。
- −−日々の食べているものを変えるだけで、将来の病気のリスクを減らすことができるんですね。
- 香川さん糖尿病から失明したり、透析したりする人が増えています。こうなってから慌てても、もう元には戻らない。若い時からきちんとした食べ方を知り、食べればいい。とても簡単で、四群点数法を実行してくださればいいんです。
■ 「四群点数法」で体重は自由自在にコントロールできる
- −−『女子栄養大学の学生食堂』に掲載されている日々の献立は、どのようにして作られているんでしょうか?「四群点数法」に従ったメニューなので、栄養計算をしなくても、栄養バランスがとれるのが特徴ですね。
- 香川さん栄養士がおりましてね、毎日、その時に手に入るものを使って、献立を作っています。それはもう、次から次へといろんなものを作るわけですよ。

■1日20点(1600kcal)の食品のとり方
四群点数法は、食品を4つのカテゴリに分け、
栄養素ごとにバランス良く取得する考え方です。
(参照:『女子栄養大学の学生食堂』P.16)
- −−確かに、すごくレパートリーに富んでいますよね。野菜が入ったメニューも多いですし、デザートまであるのが嬉しいです。
- 香川さんはい、野菜を摂るのは大切です。日本では、健康日本21という目標を立てましたね。野菜をできれば一日350グラムを食べましょう、というものですが。食べられてますか?
- −−うーん、350グラムはちょっと…
- 香川さん日本では、日に日に野菜の摂取量は下がっていますよね。だからこの学生食堂では必ず小鉢がついています。そういうもので野菜が摂れるようになっています。野菜は食べにくいとか言いますけど、これはね、砕いても煮てもかまわないので、自分が食べやすいようにしちゃえばいいんですよ。その気になれば、わけないですよね。
- −−野菜が大切なのはなぜでしょうか?
- 香川さん例えば、葉っぱ類に含まれている葉酸。日本では240マイクログラムあればいいと言っていますが、アメリカでは400マイクログラム。日本は葉酸の摂取を増やす取り組みの面で、非常に遅れています。これが欠乏すると動脈硬化が進みやすいから、脳卒中になりやすい。女性の場合は、葉酸が少ない状態で妊娠すると、脳がない状態で赤ちゃんが生まれることさえあります。葉酸の摂取量を増やすことで、脳血管障害や認知症などが減らせます。うちではハウス食品さんのご協力で、葉酸を添加した米である葉酸米を坂戸の高齢者施設で使ってるんですね。葉酸を添加したパンも販売しています。坂戸市民には葉酸のことを知らせて摂れるようにしています。その結果、人口10万人の坂戸市で、2年間合計で22億円の医療費・介護費が減っております。
- −−22億円! すごい額ですね。
- 香川さん坂戸市民が健康になったのは、葉酸米や葉酸パンを食べたおかげです。みなさん葉酸が体にいいことを知っているから、葉酸を含んだ米やパンを買うし、葉酸を多く含んだ小松菜などをたくさん食べています。うちのスタッフや学生が行って料理を教えてもいるんですよ。
- −−野菜を食べ続けるには、いろんなメニューを工夫することも大切ということですね。『女子栄養大学の学生食堂』には豊富なメニューがありますが、材料をアレンジしてもいいですか?
- 香川さんええ。これをそのまま真似なくっても、四群点数法をベースに、他の食材に置き換えたりして食べてくださればいいと思います。例えば育ち盛りの子供なら、カロリーを多めにすれば動いていても問題はないです。体重を見て、カロリーを調整すればいいですね。スポーツで筋肉を増やす時にはタンパク質を多めにするとか。少なくとも野菜はちゃんと食べておかないとね。
- −−読者さんには主婦の方も多いと思いますが、四群点数法の知識を身につけることで、自分だけでなく周囲にもいい影響がありますね。
- 香川さん料理はたくさん知っておいたほうがいいけれど、料理がわからなくたっていいんです。たとえば生卵をご飯にかけたって卵は卵ですからね(笑)。どのように料理するかよりも、どれだけの材料を食べれば、どれだけの栄養を摂ることができるかということが大切です。それが分かるようになれば、体重も自由自在に調整できるようになりますよ。
- −−体重を自由自在に調整できるのは素晴らしいですね! そのためにはまず、何から始めればいいでしょうか?
- 香川さん今日の野菜は何にするかっていうことから考えていくのがいいんじゃないですか。買い物する時から考えておいて、それを全部使いこなすことから始めるということですよね。
■ 幸せに長く生きるために…女子栄養大学の目指すもの

- −−香川先生は、医師でもありますね。
- 香川さん医者は、研究だけやってもかまわないわけですがね。教えながら、栄養クリニックというものを始めました。食事をきちんと食べることで健康になることを証明して、そのやり方をみなさんに普及しようということで始めたんです。学生には臨床検査もずっと教えていました。病気になっちゃったら医療費はかかるし、本人も不幸せだし。健康保険や税金がそちらへ持っていかれるわけです。
- −−本人は病気になり、治療のために国や他の人の保険料や税金などを使う。幸せなお金の使われ方じゃないですね。
- 香川さんそうなんですよ。みんながちゃんとした食べ方ができれば、医療費はもっと抑えられる。みんなが健康になって幸せになるじゃないですか。ここの学校はそれだけを目指しています。そのためにはおいしくないと食べてくれないから、料理もちゃんと教える。料理の専門家である栄養士も育てる、ということをやっているんです。
- −−なるほど…今日はとても勉強になりました。
お忙しいところありがとうございました!
- 三食ともこのレシピどおりに作ると2000キロカロリーくらいになりますが、それでも満足感は十分に得られます。20キロ減量に成功したので、その維持のために使わせてもらっています。数ある低カロリー本の中でも、お腹が十分に満足できるものばかり。しかも美味しくて作りやすいものが掲載されているのでお勧めです。
- 社員食堂の本も持っていますがこちらの料理のが私好みでした。どれもこれも美味しそうで、これで健康的に痩せられて塩分カットもできるなら本当ラッキー!って感じです。カフェテリアの本も近々出るみたいなので、そちらも予約しました〜。
- ボリュームは写真で見るより少なく,足りないように感じるかもしれませんが,味付けなどに色々な工夫がしてあり,減塩が苦になりません。少なめの量に慣れるように頑張りたいです。
- サブなども充実していて良いです。さっそく何品か作りましたが、どれも美味しいです。

















