- 清水悦子(しみず・えつこ)さん
- 夜泣き専門保育士。大阪府生まれ。東京都立保健科学大学(現・首都大学東京)卒業後、理学療法士として都内病院などに勤務、出産を機に退職。長女の壮絶な夜泣きで、育児ノイローゼに。このままでは家族がつぶれてしまうという想いから、夜泣きについて勉強を始める。元医療従事者の視点から、夜泣きは睡眠障害の一種ではないかと考え、生活リズムを主体とした夜泣き改善方法にたどり着く。これにより、半年悩まされた夜泣きが、たった5日で改善された体験に衝撃を受け、同じように夜泣きに悩むママたちに伝えたいと、保育士資格を取得。ネット上で発表した『赤ちゃんにもママにも優しい安眠ガイドブック』が絶賛を浴びる。現在はお茶の水女子大学大学院・人間文化創成科学研究科博士課程にて、乳児の睡眠研究の第一歩を踏み出しながら、講座、ブログやメールを中心に、子どもの睡眠や夜泣きのサポート活動を精力的に行っている。ブログ「赤ちゃんの夜泣き対策の王道、ここにあり!」http://ameblo.jp/yonaki-byby/
インタビュー

■夜泣きに悩むママから、夜泣き専門保育士に
- −−この本は、清水さんがネットで情報提供されていた冊子がもとになっているそうですね。ご自身も夜泣きに悩むママだったそうですが、実際にはどんな状況だったのですか。
- 清水さん一言でいうと、壮絶でしたね。基本的に私は楽天的で、何でも結構乗り切れるタイプだったんですよ。初めて娘を出産した当初もそんな感じで、正直「こんなものか」と思ったりもしていました。ところが生後6ヶ月頃からいきなり夜泣きが始まって。1週間後には夜1時間ごとに起こされるようになり、さらに週2、3回朝方2時間ぐらい泣き続けて、もう何をしても泣き止んでくれない状態になったんです。そうするとやっぱり、精神的にどんどん落ち込んでいくんですよね。まさに真っ暗闇の中にいる感じで、次第に育児ノイローゼのようになっていきました。
- −−伺っているだけで辛いですね。本やネットなどで解決方法を探したりしたのでしょうか。
- 清水さんもちろんしました。でも泣いてから泣き止ませる方法がほとんどで、“泣かせないための方法”はほとんどありませんでした。しかも泣き止ませる方法をいろいろ試みても、いっこうに夜泣きが止まらないんですね。それで最初から“泣かせない”という、根本的に夜泣きを解決する方法がないかと考え始めたんです。
- −−具体的にはどんなことをされたのですか?
- 清水さん夜泣きに悩むママたちが最後に行き着くものに、海外のネンネトレーニングというのがあって。その中に「生活リズムに着目する」というのを見つけたんですね。それを機に、赤ちゃんの生活リズムや睡眠について、医学的な本や論文を徹底的に調べるようになりました。
- −−独自で研究を始めた、というのがすごいですね。
- 清水さんここから抜け出したいという、もうその一心だったのだと思います。ただもともと私は医療系の仕事をしていたこともあり、医学的な文献を調べる方法を知っていたのは良かったですね。
- −−そこから、この本の中で紹介されている「日本人の生活スタイルに合わせた、赤ちゃんとママのための睡眠改善方法」を見つけられ、娘さんに実践されたわけですね。
- 清水さんそうですね。といっても自分で学んだことが、その時点では最後の砦だったので、実践というより「もうこれをやるしかない」という感じでした。すると半年悩まされた夜泣きが、たった5日でまったくなくなったんです。
- −−まさに大発見ですね!
- 清水さん正直、自分でも感動してしまって。同時に、「こんな簡単なことで解決するのか」と。それで周りの夜泣きに悩む方たちに、この方法を伝えたくなってしまったんです(笑)。 ただそれをやるにしても、何もバックグラウンドがないと信用に欠けてしまう。それで子どもの専門家と言えば、保育士だなと思って、通信で勉強を始めて保育士の資格とを取りました。それからこの本のもとになっている冊子をまとめて、ネット上で情報提供を始めたんです。
- −−その反響というのが、本当にすごかったそうですね。
- 清水さんそうなんですよ。すごくビックリしたのと同時に、うれしかったですね。それで気を良くした私は、これを本にできたらと思い、出版社に企画書を持っていったんです。
- −−聞けば聞くほど、清水さんの行動力に驚かされます。
- 清水さん行動力というより、娘の夜泣きがなくなったことが、私にとってはものすごく衝撃的で、だからそこまで出来たのだと思います。でも出版が決まってから、正直悩みました。こういう情報を出すことで、逆に悩むお母さんを生み出すのではないかと。実際に、夜泣きに悩む親しい友人にアドバイスをしたことがあって、その赤ちゃんは治らなかったんですね。ネットに寄せられる感想を見ても、この方法で夜泣きが改善したのは全体の7割ぐらいです。でも改善しなくても、心温まる言葉をいっぱい下さるんですね。だから書籍化するにあたっては、たとえこの方法で改善してもしなくても、それは赤ちゃんのせいでも、お母さんのせいでもないのだと。その事実を受け入れてもらえるようにしたいと思って書きました。

■夜泣きが始まったら、1人で頑張らない
- −−ここで少し夜泣きについて教えて下さい。夜泣きが始まったら、まず何を意識すべきでしょうか。
- 清水さん一番は生活リズムですね。赤ちゃんの生活が不自然になっていないかと考えてみるのがいいと思います。「こんな時間に赤ちゃんが起きていいのかな」とか、そういったことはみなさん感覚と知恵で何となく分かると思うんですよ。
- −−生活リズムを整えるには、どうすればいいですか?
- 清水さんこの本にも書きましたけど、「朝昼は明るくにぎやかに・夜は暗く静かに」という早寝早起きの生活リズムを意識することですね。夜泣きで寝付きが悪いと、携帯をいじりながら寝かしつけたりしがちですが、赤ちゃんの体内時計をくるわせることにつながるので、やめたほうがいいですね。
- −−清水さんの睡眠改善方法を読んで、とてもいいなと思ったのが「イチャイチャタイム」です。寝る前の30分間、部屋の明かりを薄暗くして、ママと赤ちゃんでスキンシップを取るというものですが、これはやったほうがいいですか?
- 清水さんそうですね。私の娘は4歳になりましたが、今も続けています。成長するにつれて、「イチャイチャタイム」は子どもの告白タイムにもなるんですよ。「今日は何かおかしいな」と感じた時、「実はね……」と悩みごとを聞けたりするので、赤ちゃんにかぎらず、ぜひ試して頂きたいですね。
- −−夜泣きが始まった時のパパの役割は?
- 清水さん小さい時から寝かしつけに参加するといいと思います。特におっぱいを卒業する時には、パパは助っ人になるので。子どもはパパにはおっぱいがないことが分かっているので、諦めて泣き止むのも早くなります。それをサポートするためにも、それから大きくなって「パパはいや」みたいなことにならないためにも(笑)、寝かしつけを習慣化して頂きたいですね。
- −−なるほど。ところでご自身は、もともとは理学療法士として仕事をされていたそうですね。
- 清水さんといっても大きな目標を抱いて理学療法士になったわけではなくて。子どもの頃からなぜかおじいちゃんやおばあちゃんが好きで、だからシニアの方たちが頑張っているところがいいなと思って、リハビリ関係の仕事を選んだんです。でも現実は、当然ですがまったく違いました。障害を抱えた方たちのそばにいるわけですから、そんな生易しものではなく、死と向き合うこともあるわけです。それも含めて、とてもいい経験をしたと思っています。それに人の生死という意味では、赤ちゃんも同じですからね。
- −−現在は大学院で乳児の睡眠研究もされているそうですが、今後の目標とは?
- 清水さん研究については、まだまだこれからなのですが。すごく大きな目標としては、「夜泣き外来」のようなサポートシステムを作っていけたらいいなと思っています。赤ちゃんの眠りや育児の相談が、気軽にできる環境を実現するための活動をしていきたいですね。
- −−最後に、夜泣きに悩むお母さんたちへのメッセージをお願いします。
- 清水さんまずこの本については、一見すると、マニュアルだけの本だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、読んで頂ければ、決してそうではないと分かって頂けるはずです。時間の目安が書いてありますが、この通りにしないといけない!とか、こうならないとおかしい!ということではなく、子どもの個性を受け止めるための、一つの読み物として受け取ってもらえたらうれしいですね。 私自身、ブログや講演などでママたちと交流する中で、一番感じるのは「みんなすごく頑張っているな」ということなんですね。孤立しがちで情報だけが氾濫している、子育てがしにくい世の中で、ママたちは本当に一生懸命赤ちゃんと向き合っています。私自身がそうだったように、人に頼れなくて1人で頑張っている方も多いと思います。この本を読んで、また1人で頑張るのではなく、最初から子育てに誰かを巻き込むようにしてほしいですね。自分のためにも、赤ちゃんのためにも。 真っ暗闇のトンネルにも、必ず出口はあります。この本が、一筋の光となって、ささやかな道案内になれたなら、こんなに嬉しいことはありません。
- −−清水さんの今後のご活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました!
「そうか、赤ちゃんはまだ地球という環境に慣れていないんだ!」。この本を読んでまず思ったことです。そこに生命の神秘を感じ、さらに読み進めるうちに、赤ちゃんもお母さんも一人の人間として愛おしみ、ご自身が辛い思いをしたからこその、清水さんからのママたちへの熱いエールのようなものを感じました。おっしゃる通りたんなるマニュアル本ではありません。けれどすぐに実践できることがたくさん!一読して欲しい1冊です。
取材・文/宇田夏苗













