- すはら ひろこ さん
- 住生活アドバイザー。一級建築士、インテリアコーディネーター。日本女子大学で家政学・住居学を専攻。著名建築家のもとで美術館やホテル、住居などの設計を経験した後、(株)アビタ・クエストを設立、代表取締役に。聖徳短期大学で13年にわたり収納を講義。個人宅の内装設計、大規模物件のデザイン監修やテレビ、ラジオなど各種メディア出演、執筆、講演など片付け・整理収納のプロとして活躍中。 『1分片づけ術 らくらく!スッキリ!』(イースト・プレス)、『収納&整理のきほん事典 親切・ていねい・よくわかる!』(西東社)など著書、監修書籍多数。
すはらさんのHP:http://suharahiloco.wordpress.com/
インタビュー
■物がもっと生かせる収納とは?
- −−「無印良品」と言えば、機能性の高さと心地いいデザインで、今や日本のみならず海外でも根強い人気がありますが、その商品に注目した収納の本は、これが初めてだそうですね。
- すはらさんそうなんですよ。ですから、編集担当の方に「『無印良品』のアイテムを使った収納の本を作りませんか」とお話を頂いた時に、ぜひやってみたいなと。実は私自身が「無印良品」がスタートしたばかりの1980年頃に買った、PP収納ケースを今でも使っているんです。すごくシンプルで、機能性を突き詰めたところが気に入っていて。今は「無印良品」が収納用品の定番として浸透していますけど、当時はバブルの絶頂期で、イタリアンデザインといった装飾的なものが流行していたんですね。そんな中にあって「無印良品」のシンプルさは、ちょっとした衝撃でもありました。
- −−編集者とすはらさんの純粋な「無印良品」ブランドへの興味から、この本が生まれたというのが面白いですね。
- すはらさんそうですね。もともとインテリアや収納に興味がある人は、すでに「無印良品」を活用している場合が多いと思います。ですから、この本では既知のファンはもちろんのこと、整理・収納が苦手な人にも参考になるように心がけました。
- −−「家が片付かない」「物が入り切らない」と悩んでいる人は多いと思います。特に暑い季節は掃除がますます億劫になってしまって……家を片付けるには、まず何から始めたらいいのですか。
- すはらさん講演やセミナーで必ず聞かれるのが、その質問ですね(笑)。家の状況にもよりますが、やはり手を付けやすいところから初めるのがコツです。たとえば冷蔵庫の中を見て、「これを食べたら危険だ」といったものから捨てる。家が片付かない大きな理由は、物が多過ぎるからなので、それを解消するのが一番。冷蔵庫の中は、物を処分するトレーニングにはいいんです。壮大な計画を立てて押し入れから始めたものの、夕飯までに終わらなくて、そのまま詰め込んだらもっと悪い状態になったなんてこと、ありますよね(笑)。
- −−それ、すごくわかります(苦笑)。
- すはらさんまずは冷蔵庫から初めて、慣れてきたらキッチンの引き出しを一段やってみるとか、1歩1歩進めていくのがいいですね。必要な物は、もちろん残さないといけないけれど、減らす作業をしないかぎり、収納の仕方だけでは解決できないので。もし収納スペースには余裕があるのに片付かないとしたら、物の場所が決まっていないとか、収納方法が違っていると考えた方がいいですね。
- −−収納スペースと言えば、どうにか詰め込んだものの、出しにくくて使っていない物がたくさんある気がするのですが……。
- すはらさん物が多くて無理に詰め込んで、そのまま死蔵品になるパターンは多いんですよ。これまで収納と言うと、「どうやったらたくさんしまえるか」が注目されていました。でも最近は、「物が使いやすくなる収納」を考えるようになってきています。出し入れしやすければ使うチャンスも増えるし、持っている物を十分に生かせるでしょう。
■物を捨てることも、すべて自分を見つめる作業
- −−この本の最初に「スペースによって収納の仕方は変わる」と述べられていていますね。ここで少し、収納のコツを教えて頂きたいのですが。たとえばリビングはどうすればいいでしょうか。
- すはらさんファミリーの場合、全員がちゃんと収納ができるとはかぎらないので、片付けが苦手な人でも、無理なく出来る方法を考えることですね。瞬間的にきれいになっても、それが続かないと意味がないんですよ。結局、散らかって片付けてと小刻みに繰り返すことになりますが、その面倒加減が大きいと、やっぱり片付けなくなるんです。この本にも書きましたが、気軽に戻せる場所を作る。テレビのリモコンといった日常的に使う物は、かごやボックスに投げ込めるようにするとか。目障りなら蓋付きのアイテムを選ぶなど、道具を見つけることもポイントです。その点、「無印良品」の商品は日本の住宅にもマッチしやすいですし、定番の収納用品が多いので後で買い足しができる。収納用品を選ぶ際は、定番商品を持っているブランドというのが、条件でもありますね。
- −−キッチンはどうでしょう?
- すはらさんリビングと考え方は同じで、使う頻度が高いものは、無理して引き出しや戸棚の中にしまわなくても、出してあったほうが都合がいい物もあるんですよ。一つ言えるのは、中華にパスタ鍋、最近はタジン鍋やスチームケースと、日本人は食生活がとても豊かな分、調理器具も増えますよね? 特にタジン鍋は背が高くて収納場所に悩むところですが、それなら室内に置いて見せてしまってもいいかもしれません。
- −−なるほど。すはらさんがそもそも整理・収納に興味を持ったきっかけとは?
- すはらさんもともとは建築士として美術館やホテルなどの設計に携わり、その後、独立しました。私自身、収納が得意だったわけではなくて。独立後、資料や書類が溜まっていく状況に、まず整理術に興味を持ったのが始まりです。そこから収納術へと興味が広がりました。独立するとオフィスの家賃も払わないといけないし、そのためにも2人分は働こうと思って、でも身の回りの整理が出来ていないといい仕事ができない。家も片付いていなければくつろげないし、そうなると仕事にも悪影響が出てしまう。そう考えていくうちに、今の仕事につながったんですね。大学で住居学を専攻した時から住まいに関わる仕事をしたいと思っていたので、ようやく自分がやりたいことに近づいてきた感じです。
- −−各地でのセミナーが満員になるなど、すはらさんのアドバイスを求める人は後を絶たないと思いますが、そんな中で感じていることはありますか?
- すはらさん一時期“片付けられない女”が話題になりましたが、“断捨離”ブームの後は、捨て過ぎたリバウンドで悩んでいる人も増えています。結局、物を捨てることも含めて、整理・収納というのはすべて自分を見つめる作業なんですよ。形だけで物を捨ててしまうと味気なさを感じて後悔したり、物が減ったのに、どう収納していいかわからなかったり。そうなってしまうのは、自分の価値観、どう暮らしたいかを見つめなかったからなんですね。 それに収納というのは、物を手に入れるときから始まります。これを買った時、どうしまい、どう使って、最終的にどうやって自分の手から離れるかをイメージすることは、とても大事です。私も含めて、女性は流行を追って服飾品や美容系の商品が欲しくなりますよね。でも物を手に入れたと当時に、私たちは“捨てられないストレス”も手に入れているわけです。
- −−お話を伺いながら収納も買い物も、すべて自分を見つめる作業なのだと痛感しました。最後に今後、やってみたいことは?また整理・収納に悩む人たちにメッセージをお願いします。
- すはらさん今後も、これまでやってきたことを継続していきたいと思っています。今「おうちラボ」と称して新聞を発行したり、さまざまな活動を行っていますが、おうちが一番素敵で、愛せる場所になればいいなと思っているので、それをみなさんにお伝えしていきたいですね。 「無印良品」の商品はサイズも素材もデザインも計算し尽くされているので、初心者でも失敗がないはずです。「無印良品」のアイテムを使って、収納のコツが学べる仕組みになっているというのは、生涯学習のユーキャンさんならではの本です。この本がきっかけとなって、片付けたくなって頂けたらうれしいですね。。
すはらさんの言葉に「私も整理・収納できるかも」と勇気をもらった今回の取材。ちなみにオフィスのデスク周りを片付けるコツは「書類は積み重ねずに立てる。整理上手な人と仲良くなって、その人にアドバイスをもらってもいいですね」とのことでした。「無印良品」の商品の活用法は見ていて面白く、やる気にさせてくれます。この本をヒントに早速、できるところから始めてみては?
取材・文/宇田夏苗













