- 高濱正伸(たかはま・まさのぶ)さん
- 1959年、熊本県生まれ。3浪で東京大学入学、4年留年した後、大学院進学。学生時代から予備校等で受験生を始動する中で、学力伸び悩み、ひきもりなどの諸問題が幼児、児童期の環境と体験に基づくことを確認。1993年「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した学習教室「花まる学習会」を設立。その後、小学4年生〜中学3年生を対象にした「本格的な学習方法」を伝授する学習塾「スクールFC」を設立。年100回以上を数える講演会は毎回キャンセル待ちが出るほどの盛況ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」「ソロモン流」「中居正広の金曜日のスマたちへ」などテレビ出演も多数。
インタビュー
■類例を見ない“1人子育て時代”に求められるのは、夫の根本的な意識改革
- −−「夫は犬だと思えばいい。」――非常に目を引くタイトルですが、なぜあえて挑戦的とも取れるこのようなタイトルをつけられたのでしょうか?
- 高濱さんむしろそれが狙いだったんです。この本はぜひともお父さんたちに読んで欲しかったので。でも、内容を読めばわかると思うんですが、この本で私はむしろ世のお父さんたちを抱きしめてる。皆さんのために、深い愛情を込めて書きましたから。
- −−確かに、掲載されている事例が細やか、かつ豊富なので、悩んでるのは自分だけじゃない、と思わせるリアリティと安心感がありますね。
- 高濱さんやはり皆さん、様々な事例を紹介すると安心もされるし、共感してくださいますね。今の時代は、お母さんが孤独感を感じながら1人で子育てしている。昔はおばあちゃんやら、近所のおばさんなんかが何かれとなく口出して、みんなで子育てしていた。それが今やお母さんが誰にも相談できず、1人で子育てしているんですね。こんな子育ては今まで世界中どこにもなかった。いわば異常な時代。だからこそ、今の時代はお父さんがお母さんを支えなければいけないんです。
- −−本書は、そのお父さんに意識改革を迫る内容になってますね。
- 高濱さん恋愛時代は何をしてもかわいいと思ってたのに、結婚して2〜3年も経てば何をいつもイライラしてるんだろう、俺はなんでこんな鬼婆と結婚したんだろう、と大抵の夫が思うようになる(笑)。妻の話に、建設的なアドバイスをしてるつもりが、なぜか妻がイライラしてる。それで何イライラしてるんだ、なんて言っちゃってさらに火に油を注ぐ。妻はただ話をきいて共感してほしいだけなんですよ。それを男は理解できない。そしてそのうち、この人には何を話しても無駄だわ、とある日突然三行半をつきつけられたりする。男としては、自分は一生懸命頑張ってきたつもりなのにね。
- −−高濱さんの実感として、妻との関係に悩んでる男性は多いと感じられますか?
- 高濱さんそれはもう100%といっていいくらいですよ。一生懸命やってるのに、妻に「あなたはわかってない」って言われてね。そもそも何がわかってないのかが、男はわからないんですよ。それをこの本を読んでまずは理解してほしい。自分が「わかってない」ことをまず知ることが大事なんですよ。男は妻の長い話を無意味に感じて、さっさと結論づけようとする。でも「意味」で考えることが男の弱さなんです。それに気付くのが、まず第一のステップですね。
- −−そして妻のほうは妻のほうで、「夫は犬」と考えて歩みよることが大切だ、と。
- 高濱さんそうですね。犬に向かって今日は散歩したくない、なんて言えないじゃないですか。犬が散歩したがってるから散歩する。それはつまり、犬の気持ちに100%寄り添ってるわけですよね。相手が犬、別の生き物だと思った瞬間に寄り添える。だから夫のことも別の生き物だと思うと楽になりますよ(笑)。
- −−「夫は犬」というアイデアは、いつ頃思いつかれたのでしょうか?
- 高濱さん5〜6年前の講演会ですかね。ある時ふっと口に出したら、会場がドッと沸いたんです。その後も毎回ウケるので、皆さん、実感があるんでしょうね。夫のことを馬鹿にしてすっきりするっていうのもあるでしょうし、犬の単純さとか、だらしないところとか、ほんと我ながらピッタリの表現だと思いますね(笑)。
- −−では妻を動物にたとえると何でしょうか?
- 高濱さんそうですね、お父さんたちの意見で一番多いのは「虎」ですね。「猫」っていう意見もあるんですが、いやいやあんなかわいいもんじゃないだろうって(笑)。
■目標は子どもたちを「1人で飯が食える人間」に育てること
- −−これまで教育関係の著書を多数執筆されてきましたが、今回初めて夫婦関係の著書を書かれた理由とは?
- 高濱さん子どもの教育に携わる中で、子どもの学力や素行というのは家庭に起因する部分が非常に大きいと感じてたんです。特にお母さんの存在がとても大きい。お母さんが安定していれば、子どもも安定している。でも今のお母さんはとても孤独で、子育てでいっぱいいっぱいになってる。それはなぜかと考えたときに、夫の存在、夫のあり方というところに思い至ったのです。
- −−本書では、子どもの頃から異性を学ぶ、異性とどんどん付き合うことが大切、とも説かれていますね。
- 高濱さんそうですね、社会的な性差は埋めるべきものですが、動物的には男女は別の生き物です。それを理解して、若い頃から異性と接する訓練をするべきだと、私は考えています。だから私は塾の生徒にも、どんどん恋愛をしろ、と伝えています。私の若い頃なんて、女性にマメに尽くすなんて馬鹿みたい、って本気で思ってましたからね。そうじゃない、と。異性が何をすれば喜び、悲しむか。それを若いうちから学ぶことは、その後の人生も豊かにすると思いますよ。
- −−そして、いじめ問題など昨今の教育問題にも言及されています。
- 高濱さん今は幼児期に「喧嘩はいけません」ってトラブルを除去するような教育が蔓延している。そのせいで、今の子は喧嘩の仕方を知らない。死ぬまでやっちゃうんですよ。男の子なんて多少の喧嘩は当たり前、その中で学んでいくのに、お母さんが1人で子育てしてると、成人女性の感覚で「喧嘩はいけない」となる。だから社会に出て上司に多少きつく言われたくらいで、ポキンと折れてしまうようなひ弱な人間が増えてしまった。それはお母さんばかりの問題ではなくて、はやり1人子育てという時代背景が大きいですね。昔であれば、近所のおばあちゃんが「男の子なんてそんなもんよ」と言ってくれたんですけどね。
- −−「1人でご飯が食べられる自立した人間に育てる」のが高濱さんの教育ポリシーだとお伺いしました。
- 高濱さん希望の学校に合格させて塾の実績を上げるだけなら、ドリルを繰り返しやらせるだとか、いくらでも方法はある。でも、志望校に合格して学歴をつけたところで、社会に出ることもできず、まともに飯も食えないような人間が増えてしまった。それじゃあいけないんですよ。だから私の塾では、野外教育を取り入れるなどして、志望校合格よりもっと先の将来を見据えた教育をしています。今までの教育へのアンチテーゼ、ともいえるかもしれませんね。
- −−そういう意味で本書は、単なる夫婦問題に留まらず、子育て、日本の教育、様々な示唆に富んだ内容になってますね。
- 高濱さんこの本は夫婦関係だけでなく、会社での異性との接し方なんかにも役立つと思いますよ。私の講演を聞きに来てくれたおばあちゃんから、いよいよこんな先生が登場した、この話をぜひ今の若い人に伝えてほしい、と熱烈な手紙が来たこともありました。男女のあり方は、すべての基本だとも思うので、お父さんお母さんだけでなく、若い世代にも是非読んでいただきたいですね。
- −−では最後に、高濱さんの今後の“夢”をお聞かせください。
- 高濱さん色々ありますけど、やっぱり私は子どもたちの未来のために働いてるので、この本のテーマになっている家庭を良くするということをもっと広めていきたいし、子どもたちの教育の大部分を担う公立の小中学校、公教育改善のお手伝いをしたい。もっというなら障害児の教育改善。これは長い間手付かずで隔離教育のままで来てしまっているので、何とかしたいと思いますね。関係ない夢としては、音楽で成功したいです(笑)。実は中学の時からフォーク・ロックのバンドのボーカルをやってるんですよ。今も月一回ライブを開催しています。
- −−バンドのボーカル!だから講演もお得意なんでしょうか。
- 高濱さんそれは若い頃に落語を聴きこんだからかなあ(笑)。僕の20代は面白いですよ、色んなことやってきましたからね。映画もたくさん見てきたし、お話していても様々なカードを出せるんですよ。迷走の20代でしたが、あの頃やってきたことは全部今に役立ってますね。そういう僕の経験を、子どもたちの未来のために少しでも活かせれば、と思いますね。
- −−本日はありがとうございました。今後も日本の子どもたちのため、ご活躍をお祈りしております。













