- 並木裕太(なみき・ゆうた)さん
- 1977年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン校でMBAを取得。2000年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社後、最年少で役員に就任。2009年、フィールドマネージメントを設立。日本を代表する企業のコンサルタントを務める。プロ野球に関しては、オーナー会議への参加、パ・リーグのリーグ・ビジネス、ファイターズやイーグルスのチーム・ビジネスをキーマンとともに作り上げている。日本一の社会人野球クラブ・チーム「東京バンバーダ」の球団社長兼GM。著書に『ミッションからはじめよう!』。
インタビュー
■日本の野球は鎖国状態。メジャーリーグに日本人だけのチームを作ってもいい
- 並木さん
- 僕はずっと野球少年で、プロ野球選手になりたかったんですよ。それで、今もプロ野球に関わる仕事をさせていただいているんですが、どうにも日本の野球界に元気がない。古田さんや桑田さんが活躍した、あの面白い時代をもう一度取り戻したい。それで今日はテリーさんに色々ご意見をお伺いできればと…。
- テリーさん
- 僕らが子供の頃って、子供がジャイアンツなり、好きな球団の帽子かぶってたじゃないですか。今はそれがない。メジャーリーグなんかはヤンキースの帽子がファッションになったりするんですけどね。日本の野球は鎖国状態ですよね。ホームでプレーすることが誇りになってるけど、むしろ開幕戦を台湾や韓国なんかの海外でやる、っていう考え方も必要ですよね。
- 並木さん
- アメリカのメジャーリーグはWBC(ワールド・ベースボール・クラッシック)を開催するなどしてワールドシリーズを最高のエンターテインメントに育て上げようとしてる。日本は、拡大するというよりは現状維持、今のジャイアンツをなんとか守ろうとしているだけのように感じられます。テリーさんもおっしゃってたように、アジアに日本の野球を広めるなどの視点が必要ですよね。
- テリーさん
- 僕ね、日本人だけのチームがメジャーリーグにあるといいなと、ずっと思ってるんですよ。以前、東京都が向こうのチームを買えばいいんじゃないかって言ったことがあるんですが、道路作るのだって数百億かかるでしょ。だったらメジャーリーグにチームを1つ買って、日本人選手しかいないチームを作ったほうが、よっぽど日本のためになる気がするんですよね。ダルビッシュとイチローが1つのチームにいたっていい。そうすれば日本人ってこれだけ力があるんだなって思えるし、痛快ですよね。たとえば、日本のプロ野球に韓国人だけで構成されたチームがあってもいい。そうしたら毎日、日韓戦。これは盛り上がりますよ(笑)。
- 並木さん
- 韓国では最近、野球人気が高くなってきてるんですよ。ここ数年で動員が3倍程度伸びてるんです。しかも20代のデートコースになっている。韓国の場合はわかりすいスーパースターがいるんですよね。メジャーや日本で活躍した選手とか、足がめちゃくちゃ早いとか。あとはスタジアムですね。韓国ではイニングが代わる時、アイドルのものまねとか、コンサート的なイベントが行われるんですよ。だから居酒屋行くより、球場行くほうが面白い、ということになる。
- テリーさん
- 日本より進んでますね。野球だけじゃない楽しみがあるってことですよね。
- 並木さん
- 日本は野球チームと球場が違う会社によって経営されているところが多いので、なかなか難しいんです。セ・リーグで球場を持ってるのは広島だけ。対するパ・リーグは日本ハムファイターズ以外はすべて球場を持っている。放映権料に頼らざるをえないセ・リーグのチームと、球場ビジネスでお金が作れるパ・リーグとではビジネスモデルが異なってるんですよ。だからパ・リーグの戦力が段々上がってきて、いい意味での戦力均衡になってきてるんです。
■もし野球の“テリーチャンネル”を作るとしたら
- テリーさん
- 今、放映権の話が出ましたけど、今は昔と違ってほとんど地上波での野球中継がなくなりましたもんね。
- 並木さん
- アメリカのメジャーリーグは、10数年前までは日本のプロ野球と同じ規模だったんですが、放映権で大きく成長したんです。今では日本のプロ野球と比べて、売上に4倍もの開きがある。日本ではメディアが球団を持っているので、難しい部分もあるんですけどね。これまで大きな収益源だった放映権をどうしていくか、これが日本野球の大きな課題だと考えています。
- テリーさん
- 僕みたいな野球ファンからするとね、今はCSで全球団の試合が見られるじゃない。2月だと、朝から晩までキャンプをやっていて、BGM代わりになるからものすごく幸せなんですよ。
- 並木さん
- そうなんですよね、昔と違って、プロ野球がマニアックエンターテインメントになりつつあるんですよ。でも、何とか昔と同じ輝きを取り戻せないか、とすべてのプロ野球チームが考えています。プロ野球中継って3時間くらいやるじゃないですか。でもそのうち、ピッチャーが投げて動き出してっていうインプレーの時間って15分程度なんですよ。だから残りの2時間45分を使って、何かできないかなと。
- テリーさん
- ねえ、飽きますよね(笑)。サッカーも将棋も、時間決まってるのにね。野球はいつ終わるかわからないから、球場に見に行っても帰りの時間が読めない。そんな馬鹿な話ってないですよ。僕も3時間超える試合になると、腹立ってきますもん(笑)。9回までやっていいけど、時間は2時間50分以内にするとか、そういう工夫は必要だと思う。
- 並木さん
- テリーさんがもし野球チャンネル作るとしたら、どういう風に構成しますか?
- テリーさん
- 将棋って、終わった後必ず振り返りをやるじゃないですか。あの時こういう風に考えて、こう打った、とか。それを野球でやってもいいかなと思いますね。野村監督とかが出てきてね。なんで3球全部ストレートだったの?とか。あとはもう1台カメラがあって、選手のつぶやきとかぼやきを拾うとかね。今ね、もう僕でもカーブとかシュートとかの微妙な違いがよくわからなくなってきてる。だから今の球種は何だったのかとか、それこそ完全看護で野球を見せてあげる。そうしないと、特に女の人なんかは興味持てないですよね。
- 並木さん
- なるほど…、「テリーチャンネル」で新しい野球の形が作れたら面白いですよね。
- テリーさん
- あとね、今って昔と違ってなかなか選手が引退しないでしょ。谷なんて全然出番がない。だけど、その中で一生懸命頑張ってるところに、視聴者が共感するんですよね。窓際族のお父さんなんかが自分を投影してね。日本人は、アメリカ人みたいに単純じゃないから、スーパースターが売って走ってはい万歳、じゃないと思うんですよ。その辺りを考えると、また違うものができるかもしれない。
- 並木さん
- 引退した選手の職探し的な番組が、結構視聴率取ってますもんね。
- テリーさん
- そうなんですよ。引退した選手とその美しい妻のドキュメンタリーで視聴率が20%取れる。プロ野球なんてジャイアンツ戦でも9%取れるか取れないかなのに。だからたとえば40代、50代の選手を必ずチームに入れるとかしてもいいのかもしれないですよね。そうすると今の50代の人たち、奮起すると思うんですよね。
- 並木さん
- 正統派の野球でかっこよさを追い求めるのか、ファンを増やして野球のエンターテインメント性を追求するのか。もし後者なら選手の協力が必要だし、チーム単体というよりリーグ全体で方向性を決める必要がありますね。
- テリーさん
- そうですね、さっきからお話していることはすべて野球のビジネスとしての可能性であり、それは大きな視野で考えていかなければいけないでしょうね。
- 並木さん
- 僕は古田さんと一緒に10年くらい色んなこと考えて発信してきましたけど、なかなかのれんに腕押しの10年でしたね。日本プロ野球機構と、チームが考えていることのベクトルが合ってないんですよ。日本プロ野球機構のミッションは日本シリーズを滞りなく実施すること。対するメジャーリーグは世界の野球を作る。その辺がもどかしかったんですが、今日テリーさんに色々ご意見お伺いして、また新しい可能性を提案していければと思いました。ぜひ、テリーさんに野球のテレビ中継作ってもらいたいですね。本日はどうもありがとうございました。














