- 赤木美香 さん (あかぎ・みか)
- 1965年生まれ。広告代理店勤務などを経て、2000年クラーク・フューチャー・コンサルタンツを設立。現在人材&サービスクオリティ開発コンサルタント、認定ホスピタリティ・コーディネーター。セミナー・プロデューサー、キャリアコンサルタントとして活躍中。
インタビュー
- −−この本で一番伝えたいことは何ですか?
- 赤木さん企業研修などをやっていつも感じるのが、自分なりの目標をもっていない人が多いということです。持つことの重要性に気づいていないというのでしょうか。この本の中で「自分の中に自分なりの目標、つまりビジョンをもつこと」と、「自分の仕事の出来不出来は他人ではなく、自分で決めるべき」、ということを伝えたいです。潜在能力も含めて、能力はあっても、それを会社では芽を出させることが出来ない人が多いんですよ。それはとてももったいないことだと思います。会社に入って褒められることがめったになく、「あれやれ、これやれ」と上司から要求され、達成できないと「なんでできないんだ」とけなされるだけの中でやる気をなくしてゆく。しかし自分は何のために仕事をしているのか、自分は何に役立とうとしているのか、などのビジョンを持ったとしたら、もちろん会社の役割責任は果たすけれども、自分の仕事がお客様に役に立つ、お客様に接しない業務の人であったら自分の仕事が社内の人に役に立つと考えるだけで、モチベーションは上がっていくのです。多くの人にビジョンを持つことで、自分の中でのモチベーションづくりをしてほしいと思います。
- −−能力を生かすことができる人とできない人の違いはビジョンを持っているかどうかということですね?
- 赤木さんビジョンを持つことも大事ですが、周りの環境も重要ですね。「君は何のためにこの仕事をしているのか」と仕事をする目的(ビジョン)を伝えてくれる上司がいるかどうかがポイントです。この本を書く時に、「(読者の)ターゲットを絞って下さい」と編集者に言われたんですが、実は若い方だけに限定したくありませんでした。それは上司と言う立場にいる人にも、「自分の仕事は何のためにやっているのか」を考えてほしかったからです。そういう(ことを考えている)上司の元で働く人はそんなにやる気を失っていないんですね。上司が変われば部下も変わります。ですから、迷っているすべての人を対象とさせていただきました。「ビジョン」という言葉を初めて聴くと、大変なことのように思われるかも知れませんが、目標、目的(ビジョン)が明確、期待されていることが明確、役割が明確であれば、誰でも自らモチベーションを上げることができるのです。
- −−それではこの本はあまり上司に恵まれていない人やビジョンを描けていない人に一番読んでほしいということですね?
- 赤木さん先ほども言いましたように迷っている人、すべてですね。仕事が合わないのではないかと悩んだり、人間関係など自分の周りの環境に振り回されている人ですね。私は幼い子供がいて、毎日非常に忙しいのですが、それでも仕事を続けているのは、ビジョンを持ち、私はこれをやりたい、これを達成したいという信念が明確だからなんですね。誰でも信念があれば、ずいぶん生き方が変わってくるのではないかと思います。
- −−よりよく働き、生きるには信念が必要だということですね?
- 赤木さんそうですね。3Vというのは、ビジョン(Vision)とビュー(View)とビクトリー(Victory)のことなんですが、特にビジョン、つまり行き先を明確に定めることが大切です。行き先を明確に定める、とは「自分はこうなりたい」とイメージすることです。そのイメージとは富を得たいということだけでなく、例えばこういう仕事でこういう自分になりたいとか、温かい家庭を築きたいでもいい。自分なりの成功の形、自分なりの人生の行き先を明確にすればいいのです。ビジョンと言うと、よくどこの会社でも社長室などに額縁に入れられて掲げられていますが、それでは意味がないのです。ビューというのは、そのビジョンに視点を合わせるということなんですが、ただそこを見るという意味ではなく、「自分にとってこれが大事で、これをやっていこうと見方を変えること」をいいます。そうでないと額縁のようにビジョンはただの飾りになってしまう。ビジョンがあるだけでは足りなくて、その後にビュー、ものの見方をビジョンに合わせて行動し、かつ「これをやるんだ!」という信念、深い決意がないとその先のビクトリーまで行きつかないでしょう。
- −−ビクトリーとはどういうことをいうのですか?
- 赤木さんビクトリーの概念が難しいとよく他の人からも言われるんですが、例えば、ビジョンをつくって、ビュー、つまり視点を合わせて深い決意をもって行動しはじめるとします。この「しはじめた」ということでビクトリーロードに入ったといえるのです。一歩踏み出すと違うものが見えてきたり、新しい発見があったり、違った人的ネットワークができたり、自分が予期しないビクトリーに向かう扉がどんどん開かれ、チャンスが増えてきます。その一つ一つの行動、小さな勇気や小さな達成感、小さな成功のことを、私は「成功」、つまりビクトリーだと思っています。自分らしい成功を収めることは実は簡単で、シンプルなサイクルで可能なのです。
- −−この3Vはいつ頃思い付いたのですか?
- 赤木さん そうですね、もう10年ぐらい前から考えていました。以前、企業の人材教育のコンサルティングをする会社にいた頃からビジョンが大事、目標が大事ということを意識していました。
- −−誰でも成功できると思いますか?
- 赤木さんはい、思います。可能性が潜在意識の中に入ったまま、という人はたくさんいますから。しかし謙虚さが足りない人はやや難しいかもしれませんね。私が師と仰ぐ人、また会社が伸びているトップの人は皆、視線が低い、つまりその人の目線にまで自分も降りて物事を考える謙虚さがありますね。高飛車でなく、話す相手に目線を合わせる柔軟性をお持ちなのです。そしてビジョンをしっかり持ち、そのビジョンの中に「人(部下)を大事にする」ということが入っていますね。
- −−謙虚に人の話を聞け、気づける人が成功をつかめるということですね?
- 赤木さんそうですね。それだけ自分に選択肢が増える、チャンスが増えるということですから。しかし同じ人であっても、タイミングによって人の話やアドバイスが入って来る時と来ない時もあります。例えば痛みを感じている時、悩みがある時には人の話がすっと入って来ますね。
- −−この本を出すきっかけは何だったのでしょうか?
- 赤木さんこれもビジョンを持っていた成果だと思います(笑)。ビジョンを持つことで自律した人になれる。自分が何をしたいのか、何ができるのかを明確にすると、自分に何が足りないのかがわかる。自分の得意、不得意がわかってくる。得意分野は伸ばし、不得意分野は課題目標を立て克服することができます。不得意分野はときに人の力を借りて克服も可能です。克服の方法を教わったり、ですね。そうやって自分で自分の進む道を考え目標設定し、行動を起こせる人、そしてその行動に責任を持てる人を自律した人だということをずっと講演会で言ってきました。この思いが編集者の青山さんにも伝わったのではないかと思います。周りの人に自分の思いを言うと、周りの人に手を貸してもらいやすくなるものです。つまり周りの人から見たら、その人に何を手伝ったらいいかが分かりやすくなるんですね。
- 担当編集者/青山さん以前何かの機会にお目にかかって、その後、赤木さんからメールマガジンを時々いただいていました。ある時、女性の就職支援の仕事もしているという内容の文章が目に止まりました。もしそうであるなら、ちょっと話を聞いてみようかなと思い、電話をしたら、ビジョンが大切だという話になったのです。本の中にも書かれていますが、確かに「思いを言葉にする」ことは大事だと思いますね。
- −−青山さんがこれはいける!と思われたのは3Vというキーワードがあったからでしょうか?
- 青山さん(3Vは)とってもはっきりしていますでしょう。やらなくてはいけないことがはっきりしていると人間は結構、そこに向かっていけるのではないかと思います。また赤木さんの講演会を聞いていたら、とってもわかりやすい講演をしていたのです。身近な例を出したりしてね。聞いていて「うんうん、わかる、わかる!」とうなずいてしまって・・・。思いがすごく伝わってきたのです。
- −−この本は図解が多いですよね?
- 赤木さん青山さん 赤木さんの講演自体も図解が多いのですが、私がもともと女性誌を担当していて、言葉よりもビジュアルで示した方がわかりやすいということを実感していたので、(図解を)多くしました。赤木さんが作ったものをデザイナーが少し手直しした程度で、ほとんどが赤木さんのオリジナルです。
- −−このビジュアル的なところがこの本の売りですよね?
- 赤木さん言葉だけで伝えても、(聞き手の)心にはなかなか入っていかないんですよ。私が考えや思いをビジュアル化して伝えようとこだわっているのは、メールを使って文章だけで送るより、添付ファイルで画像を送ると容量がとても増えますよね。それと同じで視覚の情報が多ければ多い程、脳細胞を活性化させ、情報を処理しようと無意識に脳が働きますから、記憶に残りやすいと思うからなのです。
- −−その他の売りとは何でしょうか?
- 赤木さんマーケティング担当マネジャー/中島さん 営業的な立場でいうと、この本は「女性が書く成功哲学ビジネス書」ですね。女性が御自分の人生のことをエッセイにして書く人は多くいましたが、成功哲学としては「初」ではないでしょうか。また女性のビジネスパーソンで、かつ子育てもしている人間が出す本ということでは今までにない新しい分野の本だと思います。
- −−本の片隅にはいろいろな名句が書かれていますが、赤木さんのアイデアですか?
- 赤木さんそうですね。私自身も過去に渡って、これらたった2、3行の言葉にたくさんの勇気を与えてもらいました。ビジョンも同じといえますね。ビジョンは実際に書いて、自分の思いや心の有り様を言葉にすることが大事です。さらにそれをイメージすれば、ビジュアル的に自分の目指すべき姿が焼きつけられます。
- −−この本を書いていて大変だったことは何でしょうか?
- 赤木さん自分の思いを誰でも分かるように書くことですね。だからイチローの話など例え話をたくさん入れました。「例がたくさんあって講演がとても身近に感じられた。だから本にもたくさん入れてほしい」と編集者からの強いリクエストもありました。
- −−では書いていて楽しかったことは何でしょうか?
- 赤木さんこの本を読んだ人が「そうなんだ!」「私もやってみよう!」と気付く姿を想像することですね。
- 青山さん私どもの編集長がゲラを読んで「なんだか反省させられたわ」と言っていました。また他の部員にも読んでもらったら、「すごくすっと読めた」と言ったんです。これは赤木さんが自分の思いを誰でも分かるように書こうと頑張ったからだと思います。とにかく多くの人に手に取っていただきたいですね。読みはじめればすっと読めますから。
- −−構想からどれくらいかかりましたか?
- 赤木さん構想は以前からありましたが、去年の夏に青山さんが企画を立て、年内にお互いに思いをやり取りし、書きはじめたのは今年に入ってからです。
- −−赤木さんがキャリアの仕事をするきっかけは何ですか?
- 赤木さん20代の頃、人や機会に恵まれて一瞬、一瞬、一生懸命仕事をしてきましたが、実はビジョンをもっていなかったんです。そこで27才の時にふっとこのままでよいのか、と悩んでしまったんですね。その時、自分のようにキャリアのことで悩む人がもっといるのではないか、その悩みを解決してあげれば、芽を出す人がいるはずではないかと思いついたのです。それからある人との出会いもありました。ある時、仕事でとても疲れていたんですが、すごく楽しそうに清掃の仕事をしている方に会ったのです。70才ぐらいの女性でした。あまりにも楽しそうなので、話し掛けたんですね。「仕事楽しいですか?」と。そうしたら「元気で仕事ができることが、私は嬉しいのよ」と答えてくれました。その時、仕事とはみてくれではなく、中身が大事で、人は好きな仕事をしていれば幸せであると気付いたのです。
- −−赤木さんのモットーは何ですか?
- 赤木さん10のありがとう、「10THANKS」ですね。これも本に書いてありますが、人に感謝の気持ちをもつことが大事だといつも社のものに伝えています。うちの社員がある時こう言ったのです。「いつも反省することばかりで、ありがとうと言えない」と。そこで私はこう言ったのです。「それがありがとうなのよ」と。難しい仕事をもらったということは、自分の実力が足りないと気づけたということで「ありがとう」ですし、その仕事をやり遂げたら自分の実力が上がる、つまりステップアップができるということで「ありがとう」なのです。感謝の気持ちをもっているとマイナスな状況がマイナスじゃなくなってきます。あとは誠実であること、真摯に取り組むこと、謙虚であることですね。
- −−夢は何ですか?
- 赤木さん私の夢は日本に笑顔がもっと増えること、広がることです。大げさな言い方ですが、日本の社会をもっとよくしたいんですね。日本は、毎日のように殺人など暗いニュースが流れるような国になってしまいました。犯罪を犯す人というのは自分と言うものを持てていないのかもしれません。笑顔とは心の満足から生まれます。心の満足とは自分を見つめ、まずは自分を大事だと思うことです。自分を大事にするとは、自分の中にある大切にしている価値観ややりたいことにまず自分が気づいてあげるということです。そしてその思いを大切に することです。誰も何か意味があってこの世に存在すると思います。不必要な人なんていないわけですから、「自分が大事」が理解できれば、「人が大事」だと思えてきます。心に相手を受け入れる余裕ができ、心の満足があれば笑顔が出るんですね。誰でも生きる使命があり、誰もが大事な人なのです。その意味をわかるだけで、生きるためのモチベーションは上がるんですね。自分の軸をしっかり持てばいいのです。実はこの考え方は周りの人から教えてもらったことです。先ほどもいいましたように、私は人と機会に恵まれてきました。だからこれからは教えられたことを(他の人に)返したい。いただいた恩は返したいと思います。
|