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| 『俺はあやまらない』 福田和也 扶桑社 |

| 『地ひらく(上) 石原莞爾と昭和の夢』 福田和也 文藝春秋 |

| 『地ひらく(下) 石原莞爾と昭和の夢』 福田和也 文藝春秋 |

| 『贅沢な読書』 福田和也 筑摩書房 |

| 『甘美な人生』 福田和也 筑摩書房 |

| 『悪女の美食術』 福田和也 講談社 |

| 『ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法』 福田和也 PHP研究所 |

| 『魂の昭和史 すべての日本人に感じてほしい』 福田和也 小学館 |
| 福田氏が柳美里、坪内祐三、リリー・フランキーら4人の同人と共に、独自の人脈と視点で編む季刊文芸誌 |

| 『en-taxi(v.17)』 扶桑社 |

| 『en-taxi(v.16)』 扶桑社 |
| これまでのen-taxiを見る>> |

| 『デカローグ』 監督: クシシュトフ・キェシロフスキ |
| 『ふたりのベロニカ コレクターズ・エディション』 出演: イレーヌ・ジャコブ 監督: クシシュトフ・キェシロフスキ |
−−『俺はあやまらない』は、作家の柳美里さんと評論家の坪内祐三さん、そしてリリー・フランキーさんと共に同人を務めている季刊文芸誌「en-taxi」の連載をまとめられたものですが、文芸誌を売るのは大変だと言われる中で、連載小説の『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン』が大ベストセラーになりましたね。 福田さん 『東京タワー…』については、連載1、2回目の原稿を読ませて頂いた段階で、とてもいい作品だということはわかりました。でも世の中、いいモノが受けるとは限らない。少数の人がいいと言っても、読者まで届かないというのが常に大きな悩みなわけですが、本当に予想してなかったぐらいきちんと届いて。裏庭から石油が出たみたいにラッキーなことでしたね(笑)。 −−そもそも、季刊文芸誌en-taxiを始めようと思ったきっかけとは?
福田さん 僕の文筆業における師匠格に、江藤淳という文学者がいらして、江藤さんが40、50代ぐらいの時、季刊藝術という雑誌の同人を4人でやっていたのがとても良かった、という話を聞いていたんですね。季刊藝術には中上健次や柄谷行人といった作家や評論家の初期のいい文章が載っているのですが、そんなことから、自分も40歳ぐらいになったら、そういうことをやりたいと思っていました。それで、会社の歴史にそういった雑誌がないことから、知り合いの扶桑社の編集者に、「今のままだと(あなたの)居場所が会社になくなるよ」とか脅して口説いたんです(笑)。 −−それにしても、4人の編集同人の顔ぶれが実にユニークですね。 福田さん 坪内さんは僕と同年輩なのですが、1人は批評家がいたほうがいいと思っていたし、坪内さんは編集者をやっていたから雑誌のことがわかる。それに、僕と坪内さんでは読者層も違うので、2人いれば読んでくれる人が広がるんじゃないかと考えました。もう1人は小説家がいいと思っていたのですが、ある意味、どこにも所属せずにピンで立っている人、自分にはない何かを持っているということで柳さんにお願いしました。リリーさんについては、前から書いたものを読ませて頂いていて、「凄腕の人がいる」と感じていたのと、若い人にこの手の雑誌を読んでもらうには、グラフィックが大事で、その点、リリーさんはよくわかっているからと思って持ちかけたら、最初はどういうつもりなのか疑われて(笑)。でも、引き受けてくれました。 −−『俺はあやまらない』では、さまざまなジャンルで独自の道を歩んでいる方々を取材されていますが、たんなるインタビューと違い、一緒にどこかの街を歩きながら、会話が進んでいく中で、ふと見せたり、口から出たりする表情や言葉が伝わってくるのが面白いですね。 福田さん 僕の場合は取材といっても、相手に質問するというより、一緒にいた時のその人の雰囲気や行動を見て書くことが多いんですよ。人選も、基本的にはつき合いのある人ばかりです。そんなに運動神経が良くないから、パッと見て「この人に会おう」とアプローチすることはほとんどないですね。立川談春さんとは、本の中で書いた、柳家小さん師匠の墓参りに行く直前に知り合って。誰かと付き合おうと思うと、まずお互いの距離を縮めようとか考えるじゃないですか。男女関係ではないですが、そのためにはやっぱりデートするのが一番いいんです(笑)。 −−たとえば大竹伸朗さんは、普通では考えられないほどのペースで作品を作り続けていたり、角川春樹さんにしても、この本の中で福田さんが取り上げる方々は、既成の枠組みを突き抜けた人、という共通点がある気がしたのですが……。福田さん あえてそういう人を選んだというより、そういう人しか僕に付き合ってくれないからそうなったんでしょうね(笑)。この本に出てくる人たちは、言ってみれば、ひとつのことしか出来ない人ばかりですよね。そういう人には美しさがあるんですよ。大竹さんにしたって、作品を作るために、天ぷら屋の天井を剥がしてもらってきてしまうような人ですよ(笑)。毎日毎日、雨が降ろうが何が起きようが絵を描き続けているのに、去年、(東京都現代美術館で)「全景」展をやった時は、毎日美術館に行って、お客さんにサインしたりしてる(笑)。お客さんはサービスだと思ってるけど、そういうことってなかなかできない。ああいう人が好きですね。 この本に出てくる人に共通点があるとしたら、本当に自分がやりたいことが出来ていて、それを世間が許した幸せな人、ということでしょうね。僕がよく学生さんに言うのは、自分が出来ることと自分がやりたいこと、それから世間が認めてくれる、つまりある程度、収入になる、という3つが全て揃えばいいけれど、出来ることとやりたいことが重ならないことはよくあるんだと。そのうちの2つ、出来ることとお金が稼げることが重なればいいんじゃないかと。この本に出てくるのは、その3つが重なった人たちですね。もちろん、並大抵の精進ではあそこまでにはならないわけですが。 −−『ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法』という本を書かれるほど、ものすごい量を読み、書かれている福田さんご自身も、その3つが揃った方ではないかと思うのですが。 福田さん どうなんでしょうね。僕自身は学者になろうと思って大学院に行って、修士課程が終わった時、指導教授がほんとにいい先生だったのですが、「君は学者に向いてないからやめておいたほうがいい」と言われて、ガーンとなって。その当時、自分自身の結婚問題があって、大学院に行っている間はいいけれど、完全にプー太郎になったら、相手の親が黙ってないだろうと思って、父親がやってた鉄工所に就職しました。2年ちょっと働いたところで、父親から「お前が会社にいると雰囲気が悪くなるからやめてくれ」って言われた(笑)。その頃はかみさんが働いていたからいいけど、これはまずいなあと思って。それでずっと前から本を書けと言ってくれていた編集者がいたので、それから1年ぐらいかけて『奇妙な廃墟 −−フランスにおける反近代主義の系譜とコラボラトゥール』というのを書いて出したら、江藤淳さんが評価してくれたんですね。本を出すとうれしくて、いろんな人に送るでしょ。でも返事をくれたのは江藤さんだけで、あとは書評も出なくてね(笑)。そこから「諸君!」とか「新潮」に書くようになって、書けばお金になるとわかったので、もう必死で書いているうちに、どうにかなったんですよ。 −−『贅沢な読書』という著書の中では、「若い人たちはけっして本が嫌いでもなければ、読む力が落ちているわけでもない。本をきちんと手に取らせることができていないことが問題」だと述べられています。en-taxiのような文芸誌を作ったというのは、多くの人に本に触れて欲しい、といったご自身の役割を意識されているからでしょうか?福田さん 自分自身の役割については、どうなんでしょうね。まあ、僕は本に浸って生きてきたし、本が好きな若い人も好きですね。大学の授業で福田が読めと言ったから、無理やり読んでみたら面白かった、というのでいいのですが、不特定多数の人に本を読んでもらうのは大変です。でも、たとえば旅先などで、その土地のことを書かれた本を読むっていうのはいいですよね。この間、エジプトに行ったんですが、ナギーブ・マフフーズという、エジプトで唯一のノーベル文学賞を獲った作家がいて、エジプトでその人の『バイナル・カスライン』という、カイロの下町の話を読んだのは、すごく贅沢でした。小説にしてもストーリーが面白いというだけでもすごいけど、それとは別に、本の中にいるのが楽しいっていうのがあるじゃないですか。言ってみれば居心地のいい部屋みたいな、読んでいると幸せになる、そんな本の愉しみ方を知って欲しいとは思います。 −−最後に、en-taxi、そしてご自身の今後についてお聞かせ下さい。 福田さん en-taxiについては、こういう雑誌の役割に、新しい書き手に登場してもらうというのがあるし、リリーさんのように、一部の人には知られていたけれど、世間にまだきちんと知られていない人を紹介するのが仕事だと思います。すでに何人か心当たりはあるので、彼らを世間に紹介して、得るべき評価を受けるようにするのが、雑誌の責任だと思っています。僕自身については、今まで通り、世間と編集者が我に返らないように、騙し続けていかないと(笑)。 −−これから福田さんのどんな騙しが登場するのか……大いに楽しみにしています(笑)。ありがとうございました。
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