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−−『疾風ガール』の続編ということですが、前作同様、ライブシーンをはじめ、アーティストたちの日常をリアルに描いた展開にぐいぐい惹きこまれました。ご自身もずっとバンドをやれていたそうですね?
誉田さん 14、5歳から30歳までやっていました。 −−ホラー小説でデビュー後、警察小説のヒット作を生み出されてきましたが、かつて身を置いた音楽業界を描くにあたり、他の作品とは違った、覚悟のようなものはあったのでしょうか? 誉田さん いや、なかったです(笑)。実は、僕が初めてダラダラと書き連ねたものが、こんな感じの内容だったんです。ただ、主人公はミュージシャンではなく、音楽スタジオを経営している家族の娘で、小学校時代から書き始めたら、いつになってもバンドを組むシーンにたどり着かない。彼女が運動会の駆けっこで一番になれない理由を、そのお兄ちゃんが解き明かしたりしていて、全然前に進まなくて、これは困ったなと(笑)。ところがバンドのために書いた歌詞を見ると、ストーリー仕立てで起承転結がついている。それなら同じ要領で小説を書いたらどうだろうと思って、歌詞を基に短編を書き始めました。ホラーが好きだったので、ホラー小説で賞をとってデビューしましたが、一連の作品を書き終えて、次に何を書こうかと考えた時、ロックバンドの物語が思い浮かんだ。45歳ぐらいになってから、青春時代を振り返るような感じで書くつもりでしたが、出し惜しみしていても仕方ないし、主人公は女の子にして欲しいと言われて、初めて書いたものを思い出したんです。といっても、運動会のシーン以降の話はまったくなかったのですが、イメージ的には、あの少女が大きくなったのが夏美ですね。 −−バンドをやめて、小説家になった理由とは? 誉田さん もともと文章を書くことに興味があったわけではないですね。小説も、バンドにしても、自分で何かを作って、それでほめてもらいたい。面白い、良かったと言ってもらいたいというのが共通しているだけで。ただ、バンドはお金がかかるんですよ。スタジオ代に楽器や録音機材の費用、楽器のメンテナンスも必要になってくる。ライブをやるにしても、チケットを買ってくれた人が店に来てくれて、ドリンクチャージを払うまでは売り上げとして成立しない。ステージに立つとわかるんです。あれ、あのグループが来ていない……と気づいた瞬間、頭の中の電卓が動き出して何千円赤字だ!と思って歌詞を忘れたり(笑)。要するに、ステージの上でバカになれないタイプだった。 考えてみたら、バンドをやる中で一番好きだったのが作曲で、ワンコーラスができた瞬間が最高のカタルシスだったんですね。デモテープを作るのも、ライブも実は面倒くさかった。それに長い間バンドを続けていながら、プロミュージシャンになると一度も言えなかった。アマチュアでいいと思っていたわけでもないのに、なぜか言えなかった。もうひとつ、椎名林檎さんの存在も大きかったですね。プロの歌を聴いても「自分のほうがこの部分はいいんじゃないか」とか必ず言い訳をしていたのに、椎名さんが出てきた時、「この人には何も敵わない」と思った。それで30歳でバンドをやめて、小説家になる宣言をしました。 −−『疾風ガール』、そして本作でも、圧倒的な才能を目の当たりにして、その道を去る人間たちの姿が描かれていますが、ご自身の経験が投影されているのですね。 誉田さん そうですね。夏美のマネージャーの祐司は島崎ルイと、『疾風ガール』の薫は夏美という才能と出会って去っていく。これらの関係は僕と椎名さんです。とはいえ、特定の登場人物が僕自身というわけではなく、自分の体験をいろいろな場面に散りばめています。 −−夏美とルイという、バッグラウンドも性格もまったく違う、才能豊かな2人のヒロインの対比、やりとりがとても面白いですね。剣道に青春を賭ける女子高生を描いた『武士道』シリーズをはじめ、誉田さんの作品にはライバルでありつつ励まし合い成長する、女同士の友情を信じさせてくれるヒロインがたびたび登場します。女性を主人公にするのはなぜですか?
誉田さん 登場人物の性別とか年齢とか、男の自分が女性を書くということに対するこだわりはあまりないですね。常に考えていることがあるとすれば、主人公が自分の力で何かをクリアするかどうか。困難があった時、こういう風に突破して欲しいという願いと、それを乗り越える意味は何か?というのを物語に課しているので。だから登場人物たちが足の引っ張り合いをしている暇はないし、足の引っ張り合いを題材にはしたくないんです。 −−女性のほうが書きやすい、ということはありますか? 誉田さん 女性を主人公にしたほうが、書く上で比較的自由だというのはありますね。女性はどんなに幼くても女で、そのまま大人になる。でも、男性の場合は少年だったのが、ある時一大決心をして、一生懸命、自分を男の型にはめていく。その型はものすごく社会的なものなので、はまろうとすると辛いし不自由なんですよ。言い換えれば、社会性を全部取り払ってしまえば男だって自由になれるし、逆に女性が男性のように社会の型にはまろうとすると不自由になるんです。 今回は才能を持った人間が前に進んでいく物語なので、主人公には夏美が向いていると思ったけれど、社会のシステムを描くのであれば、男性のほうがいい場合もあるでしょうね。まあ、そうなると爽やかで楽しく、というわけにはいかないだろうけど。 −−執筆する際は、現実の俳優さんからキャラクターのイメージをふくらませたり、逆にTVや映画などを見て、気になった人からインスピレーションが湧くことも多いそうですね。 誉田さん そうですね。小説が書き終わるまでの間に、俳優さんのイメージが変わってしまうこともありますが(笑)。 −−ひとつ気になったのが、作品の中に登場する曲です。ひょっとして、実際に誉田さんが書かれた曲なのでは?つまり、実際に存在する曲なのではないかと思ったのですが。 誉田さん 『疾風ガール』に出てきた薫の新潟時代の曲以外は、僕のバンド時代の曲をそのまま使っています。薫の場合はビジュアル系、パンクっぽい感じで、自分がやっていたのと違うので新たに作りました。物語の中に一回だけ出すのであれば、曲がなくてもいいですが、何度か出すとなると、軸がぶれないためにも書いたほうがいいのかなと。 −−小説を書く間に、曲も作られていたとは驚きです(笑)。 誉田さん 基本的に3分の曲は3分でできるといわれているので。上手くいく曲はそんな感じです。1時間で読める小説を1時間で書くのは無理ですけどね。 −−作品を読んで、実際に曲を聴いてみたくなったのですが。発表の予定などは? 誉田さん いや、読んで下さった方のイメージを壊すといけないので、想像のままお任せしたいと思います(笑)。 −−お話を伺っていると、かなり具体的なイメージがあって、その上で執筆されているのですね。
誉田さん そうですね。正直、僕は文章そのものにはあまりこだわっていないんです。読んで下さった方の頭の中で、自分の文章がどう動くか。そこでイメージされるものが重要だと思っているので。そうかといって、くど過ぎるとイメージがふくらまなくなってしまう。たとえば『武士道〜』に出てくる剣道の試合のシーンはスピード感が大事なので、行数を使わずに、単語を重ねるようにしていますね。 −−この作品だけでなく、『ジウ』・『武士道〜』とシリーズものが多いですが、その理由とは? 誉田さん 最初からシリーズ化を考えて書いたのは『ストロベリーナイト』だけなんですよ。基本的には1冊で満足感が得られるようにバッサリ終えるようにしています。警察小説の場合は事件解決によって、ある程度スッキリ終えられるのですが。シリーズが多い理由は……以前、新聞記者の方に言われたのですが、社会は常に動いているので、時事を扱って書く場合、自分である程度時間を区切って、起承転結をつけなければならない。つまり小説的手法を取らざるを得ないと。僕は物語が1ページ目から始まって最後に終わるようにしたくないんです。社会と同じように、主人公の人生も続いている。物語と同時に夏美やルイが生まれたわけではなく、彼女たちはそれ以前から生きているし、本の最後に人生が終わるわけでもない。そう思って書いているので、現実を切って書く記事の手法に近い部分があるのかなと。そういう意味で、続編が生まれやすい作風なのかもしれないですね。物語の余韻をどうするかはケース・バイ・ケースですが、作品自体は毎回バッサリ終わらせているつもりです。 −−今後はどんなものを書いていきたいですか? 誉田さん これからも警察小説は書きつつ、全体の2分の1ぐらいはそれ以外にしたいなと思っています。『武士道〜』を書いた時、ミステリーで人が死ぬのは物語が始まる点火装置にすぎなくて、他に世界が動き出す装置があればそれでもいいのだと気づいて。夏美と祐司が出会い、一方はスカウトしたい、でも片方はイヤだと言う。そこで夏美が敬愛する薫が自殺して、その謎を追いかけて……という点火装置があれば、殺人事件でなくても物語は動き始める。それが掴めてからジャンルを意識しなくなった。人が死ななくても小説は書けます、これからは(笑)。 −−ジャンルの枠に留まらない素敵な作品を楽しみにしています。ありがとうございました!
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