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−−衝撃的な内容です。何かを告発する意図があったのでしょうか。
岩淵さん まったくないですね。ただ、(映画に比べて)本の方が毎日、携帯で日記を書いていたので、そのとき思ったことを生身の言葉でつづっていて、ダイレクトなんですよね。映画は言葉一つにしても、いろんなことを考えて、フィルターがすごくかかっていると思うんですよ。(本は)まぁ素直に書いているというか。たぶん自分の文章の書き方が乱暴というか、あんまり考えないで書いちゃうので、すごく乱暴に描写しているというのはありますね。でも、その当時の印象というのはその通りで、とにかくそこにいる人の息遣いみたいなものを伝えたかったというのがあります。 −−実名での執筆や顔出しは怖くありませんでしたか。 岩淵さん ぜんぜん怖くないですね。もし何かされたらされたで、そういう方向に人生が向かって行けばいいんだろう、流れに身を任すというか、そういうふうに思ってます。 −−加筆修正は考えませんでしたか。 岩淵さん 思いませんでした。だから今読むとすごく恥ずかしいこととか、エロい話もやたらとあって、これは出した方がいいのか出さない方がいいのかと考えたりしたんですけど、実際そこで働いている人の声であったり、気持ちであったり、性のことであったりというのは、やっぱり嘘は付きたくないし、出しちゃいましたね。 −−工場で働く人たちの描写が印象的です。 岩淵さん それぞれに事情があって、それぞれにドラマがあって。単純作業の職場でも、その仕事しかできない人もいるんですよね。その人に対して「おまえはダメだからこの仕事やってるんじゃねえか」と言えなくて。むしろ、そんなおじさんたちをぼくは愛しているので「面白い人たちだな」と。一対一で、人生の師匠としていろんなことを聞いて。本当に面白く、日々の生活も刺激的で、楽しかったですね。 −−いわゆる「自己責任」を一部認めるような内容ですね。
岩淵さん 自己責任と社会責任と両方あると思うんです。自分の人生を生きているのは自分なので、自己責任を否定したくないんですよね。少なくとも自分の人生は自分で結論付けたい。でもそれとは別に、どういう社会がいいんだろうというのは、また考えなければいけないと思っています。どっちが悪いではなく、どっちもあるということに(映画の試写会などを経て)気づきました。(当初は)けっこうかたくなに「自己責任」と言って「社会は全然悪くない、全部俺が悪いんだ(笑)」と言ってたんですけど。実際、キヤノンの(岩淵さんが働いていた)工場は、昨年の夏で日研総業を切ったんですね。残っている人もいるんですけど、彼らはキヤノンの直接雇用、契約社員という形で残っているんですね。仕事ができる者できない者というのが、キヤノンの方で選別されたわけです。社会の、企業の都合で調節されているわけで。(残れなかった人たちが)次にちゃんと稼げるとか、次の仕事を探すためのお金が出るとか、そういう制度、セーフティーネットは、確かにあった方がいいという気はしました。 −−製造業の派遣社員という働き方は、今後も必要だと思いますか。 岩淵さん 一概には言えないですが、あった方がいいとぼくは思います。セーフティーネットを設けた上で、ちゃんと正社員と派遣社員とを行き来できるような、三十代を超えてからも正社員になれるような雇用のあり方であればいいと思うんですよね。働きたいときに働けるような、精神を病んだり仕事がしんどくなったら、少しリラックスというか、派遣でやれたりというような、働くことをもっと柔軟にやれるような世の中だったらいいのかなと思います。 −−どういう社会が望ましいと思いますか。 岩淵さん 「山ほどお金持ってる人から税金なり何なり抜いてもらって」というような考え方しかできないんですが、どういう社会がいいかって分からないですよね。それが分かっていたら、(選挙に)出馬していたと思うんですよね(笑)。分からないから、映画や本で、もやもやしていると思うので。もやもやしか出せない性分なんで。 −−今現在、キヤノンの正社員の人たちに何か思うことはありますか。 岩淵さん ないですけど、見せたいですよね、この作品を。「自分はキヤノンでやってましたよ」という労働者の自分を。労働者と経営者の距離というものがまったく分からないので、そこを埋めるようなものを見せたいというか。御手洗さん(キヤノン会長・日本経団連会長の御手洗冨士夫さん)にも見せたいなと思います。 −−読者に一言。 岩淵さん 映画は本当に安いカメラで、全然お金をかけずにできたので「みなさんもそこらへんで売っているカメラで映画は作れますよ」と言いたいですね。 |