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天然コケッコー

映画化で話題沸騰!あの胸キュンをもう一度! くらもちふさこの名作少女マンガ『天然コケッコー』そよちゃんと大沢くんの初恋田園ライフ!

 だれもが一度は経験する甘酸っぱい初恋を描いた、くらもちふさこ先生の名作少女マンガ「天然コケッコー」が映画になりました! たった6人の生徒が通うド田舎の分校に、東京から転校してきたカッコイイ男の子・大沢くん。方言まるだしだけど純情可憐な美少女そよちゃんは、初めての同級生にドキドキで……。のんびりした田舎ライフの中で育まれていく二人の初恋。それを見守る、家族や友人、村の人々、島根の四季……。雑誌「コーラス」で1994年1月号から2000年7月号に連載された原作は、累計140万部を誇る大人気コミックス。くらもちふさこ先生に、作品の思い出や、映画化についてお話を伺いました。


天然コケッコー関連作品


『天然コケッコー』(文庫版全9巻セット)
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くらもちふさこ
集英社

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『天然コケッコーの散歩路増補版 シネマプラス』
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くらもちふさこ/“天コケ”サポーターズ
集英社

『天然コケッコー 映画ノベライズ』
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下川香苗/くらもちふさこ
集英社

CD『言葉はさんかくこころは四角』
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くるり
映画の主題歌!

CD『「天然コケッコー」Original Sound track』
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REI HARAKAMI


くらもちふさこさんの作品


『[α](上)』
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くらもちふさこ
集英社

『[α](下)』
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くらもちふさこ
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『いつもポケットにショパン』
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くらもちふさこ
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『くらもちふさこthe best(1) Betsuma days読みきりセレクション』
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くらもちふさこ
集英社

『月のパルス』
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くらもちふさこ
集英社


『百年の恋も覚めてしまう』
『百年の恋も覚めてしまう』
くらもちふさこ
集英社

『千花ちゃんちはふつう』
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くらもちふさこ
集英社

『チープスリル』
くらもちふさこ
集英社

『アンコールが3回』
くらもちふさこ
集英社

『海の天辺』
くらもちふさこ
集英社

『いろはにこんぺいと』
『いろはにこんぺいと』
くらもちふさこ
集英社

『Aーgirl』
『Aーgirl』
くらもちふさこ
集英社

『わずか5センチのロック』
くらもちふさこ
集英社

『おしゃべり階段』
くらもちふさこ
集英社

『Kiss+πr2』
くらもちふさこ
集英社

『東京のカサノバ』
くらもちふさこ
集英社


くらもちふさこさん

プロフィール


くらもちふさこさん
1972年 「メガネちゃんのひとりごと」で『別冊マーガレット』よりデビュー。
1970年代から「いつもポケットにショパン」「海の天辺」など、コンスタントに数多くの作品を発表。1990年半ばに『コーラス』に移籍、「天然コケッコー」「月のパルス」「α-アルファ-」などを発表。1996年「天然コケッコー」で第20回講談社漫画賞受賞。現在『コーラス』で「駅から5分」をシリーズ連載、映画化に伴い「天然コケッコー」特別編を短期集中連載中。

インタビュー


−−「おしゃべり階段」「いつもポケットにショパン」など、たくさんの作品を描かれてきたくらもち先生ですが、実は「天然コケッコー」が初めての映画化なんですね。ファンにとっては、待ちに待っていた映像化ですが、どんな経緯で実現したのでしょうか。


くらもち先生 お話をいただいたのは、3〜4年前、「天然コケッコーの散歩道」(映画化にあたって増補版が発売)というムック本が出て間もない頃だったと思います。「ジョゼと虎と魚たち」などを手がけた脚本家の渡辺あやさんから、ものすごく、お心のこもった真摯なお手紙をいただきまして、この方だったら間違いないと思いました。
 そうは言っても、映画会社や出版社などいろいろ事情もありますでしょう? 映画化に関しては、これまでにもいろいろなお話をいただいてきましたが、こちらの理想にそぐわなかったり、さまざまな事情でポシャってしまったり。今回のように、良いと思った企画がとんとん拍子で進んだパターンは初めてでした。
 私はわりと新しもの好きなので、自分の作品が映像になるとどういう風になるのか、すごく興味がありました。信頼しておまかせできる方々に出会ったということが大きいですけれど、ぜひ実現して欲しいなと思いました。世界観を壊さないで……ということもなかったし、この題材を使って、おもしろいもの、新しいものを構築していただけるのではないか、そういう気持ちでしたね。


天然コケッコー−−試写をご覧になって、いかがでしたか?

くらもち先生 どういうものができるのか、自分では想像できなかったので、期待感でワクワクして見ました。そういう意味で、その気持ちを満たしてくれたと言いますか、良い作品ができたなぁ……と、大満足でした。いろいろな視点で見ることができる映画で、とてもひとことでは表現できないですね。この部分ではああだ、あの部分ではこうだ、とそれぞれ感想は出せるのですが、ひとことでは申し上げられない。ただ、とても満足しているということは、お伝えしたいです。
 本当に、才能あるスタッフのみなさんのお力だと思います。ぜひ、見てください。


−−それでは、原作のお話を伺いたいのですが、この連載は、先生がそれまで執筆していた「別冊マーガレット」から「コーラス」に移って、最初の連載だったのですね。田舎を舞台にした題材で長期連載というのは、どんな心づもりというか、企画だったのでしょうか。

くらもち先生  最初から長期連載という予定だったので、自分が常に新鮮な気持ちで描けるものが良いと思っていました。私は時々、キャラクターをいじることに飽きることがあるんです。もう、このキャラクター、おなかいっぱい……となってしまう。そういう時は、すぐ連載を終わらせてしまうのですけれど、長期連載ですからそうならないように、ある程度、自分の許容範囲の中にいるキャラクターを主人公にして、ゆっくりいじれるというスタンスで描けるものが良い。そういう前提で、はじめました。


−−それで、すごい素直なそよちゃん(右田そよ。主人公)が登場したわけですね。一方、そよちゃんの彼となる大沢くんは、先生のそれまでの作品に登場する男の子とはちょっと違って、新鮮ですが……。

くらもち先生  私、基本的には飽きっぽいんですね。絵が変わってしまうのも、そういうのが出ていて、飽きてくると、すぐ次の絵って、変えてしまう。男の子に関しても、自分にとって未開の地というか、あんまり描いたことがないタイプの方が……。苦労するかもしれないですけれど、描きやすいタイプだと、やっぱり最初に申し上げたように、飽きてしまうので。
 それで大沢くんは、私自身が苦手だなぁと思うタイプの子にしたんです。ちょっとひねたところがあってクール。実際、こういう子がいたら、どうつきあっていいかわからないですよね。今の私ならなんとかしますが、たとえば同年代だったとしたら、こういう子にはまず近づかないですね。そういう子です。それを自分が描いたら、逆に、おもしろいのではないか。そういう興味もあって描いてみたんです。


−−なるほど。そうすると、先生のスタンスとしては、あっちゃん(山辺篤子。マンガ家志望で、大沢くんにひそかに憧れ、作品のモデルにしている)に近いのでしょうか。

くらもち先生  そうなんです。だから、篤子は一番描きやすい脇役でした。でも、あの子を主人公にすると、いつもの作品になっちゃう。なので、あえて脇役に置くことで、自分にとって、新鮮に描けたわけです。あの子の気持ちが一番理解できるという読者の方も多かったので、脇役は脇役でも、必要不可欠だったんですね。


天然コケッコー−−とはいえ、どの登場人物の誰が欠けても「天然コケッコー」は成り立たないですよね。

くらもち先生  そうですね。自分の中で、この気持ちはこの子では描けないからあの子で補おうと、基本7人で、自分の描きたい部分を補ってくれていますね。要するに、7人で私の一人分をやってくれているような。それぐらい、どの子が欠けてもダメではありますね。


−−それにしても、読むたびに、中学時代のさまざまなエピソードを思い出して胸がキュンとします。先生は、そういった当時の思い出や記憶を、大切にされているのですか。

くらもち先生 たぶん、時間が止まっているのかもしれません。世の中でもまれていないので、あんまり成長していないんだと思うんですよ。だから、いつまでたっても、中学時代とか、そういう昔の事柄を抱えているのかも……。
 ああ、でもね……、描いてしまうと忘れるみたい。映画化にあたって、作品を読み返したところ、忘れてしまっていることがすごく多かったんです。「ああ、こんなことを描いていたんだ」とか「そうそう、そういう思い出があった」とか。自分でも「よくそんなこと覚えていたなぁ」というエピソードがたくさんあって(笑)。描くことで、済んだことにできたのかもしれないですね。


−−さっちゃん(田浦早知子。村の最年少)がやっていた、色水遊びも懐かしかったです。

くらもち先生  やっぱりされてました? でも、最近の色紙は、色が落ちないんだそうですね。だから、このエピソードも早く書いておかなくてはいけなかったんだなと。時代の流れによって、描けるもの、描けないものがありますから、どんどん描いておかないといけないエピソードってありますよね。


−−この作品のもうひとつの魅力は、懐かしい田舎の描写です。お母様の郷里の島根を舞台にされたということですが、あの田舎のリアリティはどうやって培われたのでしょうか。ここで生まれ、ここで暮らしていくんだという、日本中の人がそれぞれの場所で持っている、故郷を愛する気持ちというか……。

くらもち先生  そう、それが私の一番の願いだったんです。自分の中では、都会も田舎もあまり線引きされていなくて、自分が生まれ育った土地が一生のもの、という印象。そういうものを感じていただけると、ありがたいなと思っていました。
 それに田舎には、東京の人間にしか分からない部分もあるのではないかと思います。そのために、大沢を東京から行かせたりしたんですね。一番いけないのは、自信なく描くことです。私の半分には、田舎の血が流れていると思いこんで、血が描かすというか、DNA的なものに頼る部分もありました。
 なんにしても、描いている私がその土地を好きなので、大沢が「うわ、店が何もない」とか言っても、大丈夫という自信もありました。


天然コケッコー−−この、作品全体の暖かさは、そういう気持ちから生まれてきたものなのですね。

くらもち先生  取材をしながら、やはりこの土地が好きだなぁと実感しましたね。土地柄というか、親戚がいるせいか、顔つきとかも親近感があって(笑)。次第に私はこの土地の人間なんだと思えるようになっていったんですよ。取材するたびに、その土地とのつながりが強くなっていくんですね。描く前も、もちろん自分の田舎だから好きだったんですけど、通っていくうちに親密度が強くなっていくのを、自分の中でとても感じていました。


−−お話はかわりますが、文庫版とコミックス版で、なにかちがいはありますか?

くらもち先生  基本的には同じなんですが、文庫にした時、9巻に1話だけ、「おおきに」という巻を書き下ろして追加しています。当時は、ちょっと描き足りなかったな、もう少し描きたかったという気持ちがあって、文庫のページが余っていたので、大筋に影響のない程度のものを、追加したんです。


−−なるほど。コミックスと文庫では総巻数がちがうので、同じ中2から3年間の話なのに、お話が進むペースがちがう印象がありました。その上、文庫にしかない巻があるとすると、コミックスで読んだ人も、また文庫版を揃えてみたくなりますね。

くらもち先生  中2から3年間の出来事については、あまり計算していませんでした。学校時代のイベントをメインに考えてストーリーを作っていったので、体育祭を描いたから、次はクリスマス、それからお正月という具合に、イベントでつながっていく。3年間なら運動会は3回あったハズなんですが、それは無視しているんですよね。おかげで今回、「コーラス」でまた、書き下ろしをすることになって、苦労しています(笑)。間に割り込めないので、非常に描きづらいんです。もっとそういったことを、計算しておけば良かったんですが……。


−−そうだったんですか。逆に緻密に計算して、イベントでストーリーを組み立てているのかと思っていました。全編を通して、青春のイベントのひとつひとつを順番に体験していける構成になっているのかと……。

くらもち先生  そうですね。一番大事なのはキャラクターの気持ちの動きなので、それをきちんと追っていくことができたので、こんな形でうまくまとまったんだと思います。


−−おかげで、そよちゃんと一緒に楽しく3年間過ごさせてもらえたと思います。途中、爆笑しちゃうようなエピソードもたくさんありましたし。

くらもち先生  読んでいて、楽しいと思っていただけるのが、一番ありがたいですね。感動したという感想より、笑いましたという感想がうれしいんですよ。


−−最後に、先生にとって、少女マンガってどんなものなのでしょうか。

くらもち先生  そうですね……。これも、ひとことでは言えないのですが……。少女マンガの存在があったから、自己表現もできたし……。デビューする前から、読者としても、少女マンガとの関わりがすごく長かったと思うんですね。自分にとっての少女時代の夢であり希望であったので、ほんとに長い人生、わたしにとって必要不可欠なものであったと思います。常になくては困るもの。そういう存在だと思いますね。


−−今日は、貴重なお話を、本当にありがとうございました。







少女時代に、だれでも一度は読んだことのある、くらもちふさこ先生の少女マンガ。いつ読みかえしても、あの頃の自分に引き戻されて、胸がキュンとしてしまいます。そよちゃんみたいに純情可憐じゃなかったけれど、父親と娘のやりとりに、ついハラハラ、ホロリとしてしまったり、友人とのエピソードに子供時代を思い出しクスッと笑ったり。映画を見てから読むか、読んでから見るか……そんなのどっちでもOK。あなたも『天コケ』、ぜひ読んでください。
【インタビュー 波多野絵理】


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