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| 『人を動かす秘密のことば なぜあの人は心をつかむのが上手いのか』 |
| 『知的な距離感』 |
| 『超あやしい!?マジック入門』 |
| 『へなちょこマジック大作戦』 |

| 『前田知洋/スーパー クロースアップ マジック 前田知洋 プライベートレッスン〈2枚組〉』 |
| 『前田知洋/スーパー クロースアップ マジック 前田知洋 奇跡の指先〈2枚組〉』 |

| 『MAHOROBA -遙か彼方YAMATO-/マジシャンの憂鬱』 |

| 『フォーリング・イン・ラヴ,アゲイン』 小曽根真 |
| 『ザ・ベスト』 小曽根真 |
−−プロのマジシャンということで、思わず前田さんの手に注目してしまったのですが、本当にきれいですね。 前田さん いや、正直にいうと、僕の手はマジック向きではないんですよ。こうすると(5本の指を揃えて見せながら)、指と指の間に隙間が開いてしまうので、子どもの頃、近所のおばさんに「これでは水もすくえないし、お金持ちにもなれない」と言われていました(笑)。手の内側に何かを隠すことが多いマジシャンにとって、指に隙間ができてしまう手は良くなくて、マジックを始めた当初はこの欠点を補おうと、お客様との距離感や言葉でどんな工夫ができるかとよく考えていました。そうした経験が前作の『知的な距離感』、そして言葉をテーマしたこの本を書くことにつながっています。 −−最近は「正しい日本語」をテーマにした本が話題を集めていますが、「ウソをつかずに秘密を守る」といった、言葉の正確さとはまったく違うアプローチで書かれているのが新鮮でした。
前田さん 正しい日本語を話すことも、伝えることも大切ですが、一方で、正確さに気にし過ぎると話しにくくなったり、ひいては言葉の間違いで人を責めたり、評価してしまうことがあります。ですから、この本ではもし正しい日本語が話せなかったとしても、相手と仲良くしたり、できるだけ語弊を与えない方法があることを伝えたいと思いました。 −−中でも「言葉の量を考える」という視点が面白いですね。携帯、メールを通して人との距離を埋めるようなコミュニケーションが主流の今、必要以上に言葉を発し、相手を不愉快にさせていたら…などと我が身を振り返りました(苦笑)。 前田さん 言葉に含める情報量を増やさないことも必要だと思いますね。コンピューターにしても、少し前までは通信速度を上げたり、いかに大量のデータを交換できるかといった、多くの情報を詰め込むことに目標が定められていましたが、その目的が果たされた今、量よりも、どんな情報を流すかに注目が集まる時代になってきています。とはいえ、相手と深く関わりたいという人間の思いはいつの時代も変わらないものです。本の中にも書きましたが、情報量を少なくしつつ、沈黙を避ける解決策として、丁寧語を使うのもひとつの方法だと思いますね。 −−日本初のクロースアップ・マジシャンとしてご活躍されていますが、なぜクロースアップ・マジックを選ばれたのですか? 前田さん 僕がマジックを始めた80年代当時は、イリュージョンブームで、自由の女神を消すとか、何百人もの観客を集めて行う、大掛かりなマジックが流行していました。でも、僕はそれとは違う方向性もあるかなと感じていて。あらゆる意味で、多様な商品が出てくる過渡期だったこと、あとは人と接することが好きだったというのもあります。まあ、ひねくれていて、頑固だったのでしょうね(笑)。 ただ、一つのことを頑固にやり続けていると、たまたま時代と重なることがあるんですよ。時代の流れを追ってこうしよう、ああしようとやっていると、いつまでたっても時代と合わないことがあるので、一つのことを頑固にやってきて良かったかな、とは思っています。 カッコいいことを言えば、運命みたいなものも感じますね。マジシャンとしてアルバイトしていた大学時代、担当教授に「英語を習いなさい」と言われて。それからロサンゼルスに留学したら、有名なマジックの会員制クラブがあって、しかも当時のハリウッドにはマジシャンがたくさんいたんです。そのおかげで海外のマジシャンと交流しました。いろいろな経験が積み重なって、今に至っているわけです。 −−そうした経験が、前作の『知的な距離感』、そして今回と、コミュニケーションをテーマにした著書に込められているのでしょうか?前田さん 本を書いたのは、自分が与えてもらってきたものを、何らかの形でお返ししたかったからです。マジシャンというと、先輩のマジシャンに何でも教わるものだと思われますが、マジック以外の世界で得たことがとても多いのです。たとえば、手を見られる仕事なので、「マニキュアをしたほうがいい」とアドバイスしてくれたのは女性の編集者の方でした。最初は「男なのに…」と躊躇したものの、実際にしてみたら、すごく評判が良かった。これからは本当の意味で、女性が社会進出していく時代なると思いますが、女性が社会に出た時、最も軋轢が生まれやすいのが人間関係ではないかと思います。一方の男性たちからすれば、仕事のできる女性にどう接していいかわからない。僕自身が受け取ってきたものを本としてまとめることで、そうした問題に直面した方に役立ててもらえればと思いました。 −−この本に書かれているコミュニケーションの秘訣は、上司と部下といったビジネス上の関係だけでなく、PTAやご近所付き合いなど、さまざまな場面に取り入れることができそうですね。 前田さん 例として、ビジネス上の関係を多く挙げたのは、よりたくさんの方に役立てて欲しいという思いからです。マジシャンというと、四六時中マジックをしているイメージがありますが、日常の8割は打ち合わせしたり、企画書を書いたりと、普通のビジネスマンと変わらない暮らしをしているんですよ(笑)。 −−世界各国で活躍されていますが、マジックをする上で、観客の国や文化の違いを感じることはありますか? 前田さん 僕がプロとして活動を始めた、約20年前は同じマジックをやっても、日本とアメリカでは受け方が違いました。アメリカから戻り、最初に日本でマジックをやった時は、あまりに受けなくて、自分の実力と経験が足りないと感じたほどです。ところが、しばらくしてハワイでやったら、思っていたように受けたんですね。その時、文化によって受け入れられるものが違うことに気づきました。でも、本質的には人間は変わらないのではないでしょうか。たとえ文化が違っても、人間が心地良く感じられるコミュニケーション自体はそれほど変わらない。むしろ、時代による変化のほうが大きいので、それに対しては常に敏感でありたいと思っています。 たとえば、マジシャンというと燕尾服姿のイメージがありますが、もともとは200年前、ロベール・ウーダンというマジシャンが、「お客さんと同じ格好のほうがいいから」と、当時の社交服だった燕尾服を着たのが始まりなんですね。ところが、今では普通の人が燕尾服を着ることは皆無になってしまったので、燕尾服を着ていると不自然に見えてしまう。僕自身は観て頂く方と同じ格好がいいと思い、ネクタイとジャケットを着ていますが、「そんなビジネスマンみたいな格好だと、仕事がもらえないぞ」と先輩マジシャンに言われたこともあります(笑)。今では東京、ニューヨーク、パリといった大都市の人々の文化的な感覚には差がない気がしますが、服装や言葉遣いといったものは、時代の影響を受けるので、常に見直しておく必要があると感じています。 −−言葉、人との距離のとり方、服装などについて考えていくと、人間がいかに表現豊かな存在なのかがわかりますね。前田さん 人間って、そういうものですよね。同じ質問をするにしても、人によっていろいろな言葉の選び方があるわけで、無意識であっても、誰でもどこかで選択しているわけですから。 −−マジックをする上で、いつも心がけていることは何でしょう? 前田さん マジックをする上であってはならないのは、お客さんに「このマジシャンは、いつもこのマジックをやっているんだろうな」と思わせてしまうことです。そのマジックを演じるのがたとえ1,000回目だとしても、お客様がなぜそのカードを選んだのか……などと考えてから、次のセリフを言ってみる。そうすることで、コミュニケーションが本物になります。宝塚歌劇団月組の「マジシャンの憂鬱」という舞台のお手伝いをさせて頂いた時に感じたことですが、俳優さんにとっては毎回同じセリフでも、観客にとっては初めて聞くもので、また、そう感じることができなければ、観ていてもつまらない。マジックも、その舞台のように、演じるたびに違うドラマを作り、観客を感動させたいと、いつも心がけていますね。 −−トリックだけでなく、観客に対してどう振舞うかが、マジックを成立させる上で大切なのですね。 前田さん そうですね。僕の経験からいうと、「人気のあるマジシャンと同じマジックができるようになっても、決して彼自身にはなれない」と気づく瞬間があるんです。その時、なぜ彼は人気があるのかと考えていったら、お客様との距離や、言葉に秘密が隠されているとわかった。でもだからといって、彼を真似れば彼のように受けるわけではないし、5年前はその方法で人気があっても、今、人々が求めているものは違うかもしれない。こうしたことは、どんなビジネスに携わっていても、経験することではないでしょうか。
前田さん 実はもともと「距離感」「言葉」、そして「視覚」をテーマにした3冊の本を書きたいと思っていて……。マジシャンは観客の目線を誘導するといわれますが、次は「視覚」について書く予定です。 よく「夢は何ですか?」と聞かれるのですが、僕にとっての夢は近いところにあるものだと思います。たとえば、今の夢は、このインタビューで自分の思いを伝えることであったり。でも、そんな近い夢を重ねていくと、どこかで形になることがあるのです。マジシャンになって20年経ちますが、10年ぐらい前までは、夜中に「どうしてこの仕事を選んだのだろう」と冷汗とともに目が覚めることがよくあって(笑)、マジックで生活ができることも、本を出すことも、昔の僕にとっては夢みたいなことだったわけですから。 誰でも社会に出ると、いろいろなことに戸惑うと思うんですよ。一生懸命やっているのに、認められなくて辛さを感じたり。この本を通して考え方を変えたり、ちょっとした工夫を加えることで、人間関係が上手くいくこともあると感じてもらえたら、そして少しでも楽になって頂ければうれしいですね。 −−「視覚」についての次回作をとても楽しみにしています。今日はありがとうございました!
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