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■分類するな。検索せよ! −−『「超」整理法』で提唱された“押し出しファイリング法”を長年使わせていただいているのですが、あれ以上の整理法はないですね。*“押し出しファイリング法” =使った順にファイルを並べれば、使わないファイルが右に押し出されるという、時間軸を利用した方法が最適です。
野口さん 私もそう思っています(笑)。 −−大きな話題となった『「超」整理法』から15年。今、なぜ『超「超」整理法』として、新たに書き直そうと思われたのでしょう? 野口さん 時代が大きく変わってきていると感じたことが一番の理由です。押し出しファイリング法は今でも使っていますが、それで整理しなくてはならないものが減ってきている。つまり、自分が扱う情報のほとんどが電子的なものになっているとは薄々感じていました。それがGメールを使い始めたら、ある時、非常に能率的なデジタル・オフィスがいつのまにかできていると気付いた。 −−具体的にはどのようなことですか? 野口さん たとえばインタビューを受けた時、以前に書いた記事を参考資料にしたいと思ったことがありました。ところが原稿は自宅のPCに保存してある。だから残念だけど使えないと思った時、ふと、原稿は出版社にメールで送っているので、Gメールのログが自分の原稿のデーターベースになっているはずだと気付いた。早速検索して、すぐにその原稿を取り出すことができました。 もうひとつ、雑誌の連載の原稿を書きながら、前号の内容を使いたいと思ったことがありました。原稿はPCのファイルに残っていますが、第○号と付けていないことがあって、探し出すのに苦労する場合が多いのです。しかし、校正用の原稿はPFDで出版社からのメールで受け取っているから、Gメールのログを見て、PDFを開ければ必要な情報が得られる。掲載誌をコピーしなくても、自然にログに資料が蓄積されていた。デジタル・オフィスが出来ていたというわけです。 −−PCのおかげで資料の作成は確実に楽になりましたが、ファイルを整理したり、保存したりする作業が大変だと感じることはよくあります。 野口さん 非常に手間がかかるでしょう。それがGメールによってまったくなくなるとわかった。それが、ここ数年の大きな変化だと思います。 −−今回の『超「超」整理法』では、Gメールを使うメリットを中心に述べられていますね。 野口さん Gメールは非常に簡単で、タダで使えて、容量が大きい。しかも検索機能が優れているので、今までできなかったことができる。たとえば、ラベルという機能がありますが、紙の書類では、ラベルを貼って分類しますが、2つの事柄に関わる場合、ラベルも2つ付けたいですよね。 −−分類する際、どこに入れるのがいいのか悩むことはありますね。 野口さん 私は“こうもり問題”と言っているのですが、こうもりを鳥として分類するのか、獣とすべきかがわからなくて、とりあえず鳥のほうに入れる。でも、後でそれを忘れて獣だと思ってしまったとしたら、いくら探してもファイルは見つからない。分類することが、そうした危険を招くこともあるのです。でも、2つのラベルが付けられれば、その問題はなくなります。そのために、紙の場合はコピーを取り、もうひとつ同じ書類を作成しなければなりませんが、デジタル上では2つのラベルを付けることができます。 デジタル・オフィスについては私自身、2年前に出版した『超手帳法』で、「まだ出来ない」と言っているんですね。『「超」整理法』を書いた時から、紙の書類をPDF化するには非常に手間がかかるので、絶対にデジタル化できないと思っていました。ところが自分でやる以前に、Gメールのやり取りの中でデジタル・オフィスは出来ていた。今では資料はFAXではなく、すべてPDFで送ってくださいとお願いしています。FAXの方とはもう仕事ができませんと(笑)。 −−PCは便利だけど、メールでのやりとりが多くなり、逆に仕事が増えたという話も聞きますが。 野口さん そういう面もあるでしょうが、メールが増えたなら、必要なものだけを検索する。相手先から電話がかかってきたら名前を検索し、話しながら読めばよい。言い方を変えれば、Gメールのように検索ができるものでなければ使う意味がなくなっているのです。 私がGメールを使い始めたのは、スパムメールの排除がほぼ完璧だという理由もあります。Gメールをスパムメールのフィルターとして使っている人もいますよ。 −−そもそも『「超」整理法』について、考え始めたきっかけとは? 野口さん 扱わなければならない書類がたくさんあって、そうせざるを得なかったからです。ただ、私の言う「整理法」というのは、整理を上手くやるための方法ではないのです。それを誤解して、『「超」整理法』の著者にしては、研究室が乱雑ですねと言われる(笑)。『「超」整理法』というのは、いかにして、整理なんていうばかげた作業をしないで済ませるか、そのための方法なのです。押し出しファイリング法にしても、ひたすら並べているだけですから。必要な仕事に集中するには、整理のようなことに時間を使っていられない。 くだらないことに対して、いかにして怠けるかが重要だと昔からずっと思っていました。90年代には多くの人がMS-DOSの分厚いマニュアルを読んでいましたが、私は必要最低限のことだけ読み、あとは大学院の生徒に聞いて済ませました。いずれもっと簡単になるだろうから、その知識が無駄だと思ったからです。 大切なのは将来の見通しを立てるということです。昔は「読み書きそろばん」といって、私も小学生の時はそろばんの名人でした。ところが表計算ソフトが出てきたら、まったく無価値になった。将来の見通しを重要視するのは、そうした失敗に基づいているのです(笑)。 −−この本の中で、「検索力」を強調される理由は、将来の見通しから来ていると?
野口さん そうですね。検索に関しては、おそらく機械が完全にやってくれることはないと思っています。たとえば「銀座で手頃なイタリア料理店」はどこか、という質問には答えてくれない。なぜなら“手頃な”という言葉を理解しないからです。将来、そうした要求に応えるものが現れるかもしれませんが、私が生きている間には無理でしょう。手頃なレストランを教えてくれる検索エンジンが出来ないとしたら、それは人間がやるしかない。いかに検索を上手く出来るかによって、大きな差が生じます。今や「読み書き 検索」の時代ですね(笑)。 −−たとえば、どのような差がつくのでしょうか。 野口さん 企業などで企画書を書く場合、必要な情報を引き出せるかが能力の差になるでしょうね。ですから入社試験では、検索出来るかどうかをテストすべきだと思っています。「サブプライムローンとは?」などという問題を出す会社はホープレスですね(笑)。そんなものは、検索すればあっという間にわかるのですから。 −−「検索力」を身につけるために何をすればいいのでしょうか。 野口さん この本を読んで頂くことですね(笑)。検索の方法を述べた本はたくさんありますが、そのほとんどが技術的な説明に終始しています。それも必要ではありますが、名前がわからないものをどうやって検索するか。その技術こそ必要です。 −−「銀座で手頃なイタリアンレストラン」と文章入れたところで答えは返ってこない。となると、検索するためには、ある程度の知識が必要になるのでは? 野口さん もちろん知識こそが重要で、その重要性は今まで以上に強まっていくと思います。 ■インプットとアウトプットは紙がいい −−14年前に発案された『「超」整理手帳』シリーズも大変人気です。『図解「超」手帳法』では、デジタル・オフィスの時代になっても、情報のインプットとアウトプットは紙がいいと述べられていますが。野口さん それが如実にわかるのが手帳です。スケジュールをPCのカレンダーに入力するには時間がかかる。だからメモを取って後で入力しようとすると、忘れたり、なくしたりする。その危険を避けるには、手帳に書くのが一番簡単で確実な方法です。アウトプット、つまり予定を確認する時もPCだと手間がかかる。手帳にかぎらず、情報のインプットとアウトプットは、紙を使うほうが圧倒的に早い。一方で保存や検索や通信はデジタルのほうが絶対的に効率的。紙とデジタルをいかに共存させるかが、これからの課題ですね。 今、ほとんどの書類はA4サイズなので、プリントした場合、手帳に収まらないでしょう。A4サイズの書類が入るのは唯一「超整理手帳」だけだと思います。講談社のMouRa(講談社のオリジナルコンテンツを発信するポータルサイト/http://moura.jp/index.html)では、ITとの親和性を考慮したフォルダーなどを無料のサービスとして提供しています。 −−手帳の活用法を提唱された先駆け的存在でもいらっしゃいますが、「超整理手帳」を考案されたきっかけとは? 野口さん 『「超」整理法』と同様、必要に迫られてそうせざるを得なかったからですね。8週間の予定が一覧出来る形にしたのは、翌週に地獄の釜が口を開けて待っているのを見逃さないためです。従来の手帳は翌週の予定が目に見えないので、その週に重要でない用事を入れてしまって、手帳をめくった途端に、慌ててしまう。情報の「見える化」が一番必要なのは手帳です。 −−「超整理手帳」のユーザー同士のコミュニティ活動も盛んで、オフ会まで行われていることに驚きました。 野口さん 自主的に、趣味で集まってきてくださる人たちです。こうした活動は東大で教えていた時、学生たちとアイデアを出し合っていろいろやっていたことの流れですね。 −−ユーザーの方たちのカスタマイズぶりもすごいですね。新たな発想や交流を生み出す手帳を発案され、執筆、そして教鞭に立たれる中で、オンとオフの切り替えはあるのですか? 野口さん 趣味で仕事をやっているので、いつもオンだといえばそうです。いやいややるからオフが必要になるわけでしょう。好きなことだけやっているからいつもオフといえるでしょうし…そういう点では恵まれていますね。 −−なるほど。『超「超」整理法』を読んで発想も新たに、より楽しく仕事したいと思います。本日はありがとうございました。 【インタビュー 宇田夏苗】 |