- 長田渚左さん (おさだ・なぎさ)
- 東京都出身。ノンフィクション作家。桐朋学園大学演劇専攻科卒業後、海外リポーターを経てスポーツライター、キャスターとして活躍。NHK「FMホットライン」編集長を経て、フジテレビ「FNNスーパータイム」ではスポーツキャスターを10年間務めた。2004年4月からNHK BS-2「週刊ブックレビュー」の司会を務める。2006年11月、編集長としてフリーペーパー「スポーツゴジラ」を創刊した
インタビュー
- −−なぜ今回は水泳の北島選手に注目されたのですか?
- 長田さん“目”ですね。本当に欲しいものだけを探し出せる猛禽類の目。常に自分にとって何が重要かを理解している人間の目です。あの目を持っていれば、仮に彼が違う競技、仕事をしていたとしても、やっぱり「書きたい」と思ったでしょう。
- −−確かに彼の眼力は凄い。ブラウン管からも伝わってきます。猛禽類の目を見つけたのはまだ2人目ということですが、1人目がボクシング元世界チャンピオンの浜田剛史さん、2人目が北島選手。3人目はまだ出会っていませんか?
- 長田さん今はまだいません。心ときめく人は多いのですが、あの“目”がないのです。
- −−そのほかに北島選手の魅力はどのようなところですか?
- 長田さんきちんと挨拶ができるところです。ご実家が商売をされているという、生まれ育った環境のおかげでしょうね。私よりかなり年下ですが、人としての基本がちゃんと出来ている北島選手のそういうところが好きですし、尊敬もしています。
- −− 印象深い言葉として、北島選手は5人のコーチの事を“鬼”と言ってましたね。
- 長田さん畏敬も尊敬も含めて北島選手は、コーチ陣のことを“鬼”だと言っているのでしょう。例えば、肉体改造担当の田村コーチは受け答えがやさしくて北島選手の言うことを一所懸命に聴いてくれるそうなんです。それでも彼から「鬼ですよ。何言ってもメニューが減らないんだから」って言われてコーチも参ってましたよ(笑)。
- −−1人の選手に5人のコーチが付いて混乱はないのでしょうか?5人全員が集まって指導する事はあるのですか?
- 長田さん5人が1度に集まっているのを見たのは、たった2回だけです。ヘッドコーチ、映像分析、戦略分析、肉体改造、コンディショニング。それぞれの分野で北島選手に魅力を感じている人が自分の言葉で彼を指導していました。それぞれお互いが尊敬し、信頼し合っているので、5人で集まる必要もそんなにないのです。
- −−本を読んでいると、コーチ陣と北島選手のいい関係、程よい距離感を感じます。選手を操り人形しないというか…。
- 長田さん平井コーチと北島選手はお互いの事をあまりよく喋らない関係なんです。多くのアスリートの場合、必ずコーチと一緒に行動しているのが一般的ですが、それがないので、「北島に彼女がいるのかいないのかも知らない」って言ってましたよ(笑)。練習はメニュー合わせてやっているわけで、一日中2人でいる必要がないんです。あの二人の場合、それがかえってうまくいくのでしょうね。平井さんもなるべく放り出そうとしているようです。
- −−この本をどんな方々に読んでいただきたいですか?
- 長田さん普通のサラリーマンの方ですね。特に何かをまとめあげるような仕事をしている人に読んでいただきたいです。
- −−そういう思いで、タイトルに「プロジェクト」と入れたのですね!
- 長田さんそうなんです。「スポーツ版プロジェクトX」を書きたいと思っていました。“平泳ぎ”に5人もの男達が夢中になっている。周りは最初「何がおもしろいんだ?」て思ったでしょうが、私自身は「ぜったい面白いものが書ける!」という自信がありました。水泳やスポーツに関心のない方でも楽しんでもらえると思うし、プロジェクトのあり様が、皆さんの仕事のヒントになってくれればと思います。
- −−ただのアスリートの物語じゃないのですね。本が出来るまでの苦労談はありますか?
- 長田さん裏話ですが、今回の本は予め出版が決まっていたわけではないのです。当初は実費でせっせと取材に行ってました。バルセロナまでですよ!「世界新をみてくるから」って周りや家族を説き伏せて。で、結果的に北島選手が世界新を出して出版が決まったんです。「世界新の力はすごいなー」ってその時は思いました(笑)。
- −−この本を読むとオリンピックをみる視点が変わります。北島選手の泳ぎや5人のコーチの存在も気になりますね。
- 長田さん 実況中継もメダルや記録だけに注目するのではなく、選手がアテネに来るまでの「ドラマ」を伝えて欲しいなと思います。北島ファンはこの本を読めば、より深く彼の泳ぎに注目できるでしょう。でも最近は水中のカメラワークも良くなってきているし、水泳競技は本当に楽しみですね。
- −−6月に行われた大会で調子がでていなかったようですが、最近の北島選手の記録を見てどうですか?
- 長田さん現時点で絶好調ではないのかもしれません。でもオリンピックを控えたこの時期って正直言って掴みにくいんですよ。88年のソウルオリンピックで鈴木大地さんが金メダルをとったときも直前期、彼は腰が調子が悪いと言われてました。でも終わってみれば金メダル。何とも言えませんが、アテネもそんなドラマチックな展開になるのではないかと思います。
- −−長田さんが思う、オリンピックでの北島選手の金の確率は?
- 長田さん1つはとると思います。100mか200mかはわかりませんが…。結構簡単にとってみせるんじゃないかと思います。
- −−北島選手以外に、日本の選手で注目している選手と種目はなんですか?
- 長田さん水泳に関しては中村礼子さんですね。それと競技では柔道、レスリング、バレーボール、サッカー、ホッケーなどです。特に今回は女性の活躍に注目してます。バレーボール女子なんていつになく盛り上がってますし、見どころは本当にいっぱいですよ。
私が本番で強いと思うのは女子サッカー。男子はゴール前でパス回しをするでしょう。自信がないというか、最後は誰かに任せたいみたいに。女子は違う。“私、私、私が決めちゃう”と思い切りの良さがでる。歴史が浅い分、サッカーの本質を女子は掴んでいる気がしてます。上手くいけば、とてつもないプレーを見せると思います…期待してます。(笑) - −−長田さんが感じるオリンピックの魅力は?
- 長田さんオリンピックというのは、いろいろな事が起きる大会です。これまでのデータで1番にいると優勝候補と見がちなのですが、そういう人が意外なミスをやってしまう事も珍しくない。そうすると2番から30番くらいまでの小さな差の選手達がもうぐちゃぐちゃになる。番狂わせで誰が浮上してきても少しも不思議ではないんです。 ちなみに、オリンピックでメダルをとる確率はどのくらいかと言うと、銀河系の宇宙から隕石が落下してきて、歩道を歩いている人の頭に当たって、その人が卒倒した所に脇から出てきた4トントラックが引いちゃったというくらいの確率と言われています。まぁ滅多な事ではとれないということです。人はデータ通りに事を進められない生き物ですからね。勝敗は最後まで本当に分からないということ。モロに人間が出るというところがオリンピックの面白さです。とてつもない魅力です。
- −−アテネには取材で行かれるのですか?
- 長田さん行きたいのですが、娘から「夏休みだから一緒にいて欲しい」と言われて…。でもやっぱり行きたいですね!
- −−いろいろお話を伺えて本当にオリンピックが楽しみになりました。今日はどうもありがとうございました!
- 長田さん一緒に北島選手を応援しましょう。










