- 西原理恵子さん (さいばら・りえこ)
- 1964年、高知県生まれ。武蔵野美術大学卒。同校在学中の1988年、週刊ヤングサンデー『ちくろ幼稚園』でデビュー。1997年に『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞、2004年に『毎日かあさん(カニ母編)』で文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞、2005年には『上京ものがたり』『毎日かあさん』で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。
公式サイト「鳥頭の城」(https://toriatama.net/)
インタビュー

- −−結局、これはFXをやってはいけない、という本なのでしょうか。
- 西原さんそうなりますね。あのまま右肩上がりだったら「こんなに儲かっちゃった! 下の“資料請求”をクリックしてね」となるハズだったんですが。でも、社長さんも大阪の方で、私も西の人間(高知県出身)なので、そんなところでウソをつくわけにはいかないじゃないですか。西の人間は、ソンしたら大げさに転んで笑ってもらわないといけない主義。社長さんもそのノリをわかってくださっている方なので、まさか、私に「ウソを描け」とも言えないですし。私、「ウソを描け」って言われたことまで描いちゃいますから(笑)。
それで、一千万円、やっちゃいましたんで、はい。 - −−それにしても、ダイナミックな負け方でしたね。
- 西原さんでも世界中、負けてますからね。ドバイとか、ビルが建たなくて止まってるって聞きますもんね。あの国でお金が動かなくなることがあるなんて、わからないですよね〜。世界中を買えそうなくらいお金があふれていた国なのに。
タイミングもあったと思うんです。最初にこの企画を持ってきてくれた時に、一度お断りしてるんですよ。それをあきらめずにまた来てくれてはじまったのですが、私もいろいろプライベートなことがあって、半年以上お待たせして。そうこうしてる間に、こんなことになったので、早くやっておけばよかった、半年早かったら(笑)。
でもね、一回に一千万つぎ込んで、二千万に増えるとするでしょ。それって、パチンコ台でフィーバーして球が出ている状態ですよ。そんな時にやめる人がいますか? いないでしょ。だから、世界中の人がやめていないハズです。決算をクリックして現金にして、それを定期預金になんかしないでしょ、こういうやり方をしている人は。 翌朝起きたら、200万儲ってることもあるワケで、それを決算しないですよね。
全員、お金が無くなって、自分の一千万が500万になって、いよいよガマンできなくなった時に、はじめてやめるんです。儲かってる時にやめた人はいないと思いますよ。人間の欲を非常に刺激するものだから。 - −−投資は、やめ時さえ知っていれば、負けないと言いますね。
- 西原さんそれはほんとに正しいよね。今から思えば、あの時が一番儲かっていた、あの時クリックしておけば……って。株でもなんでもそうですが、誰もそんなことしません。上がろうが下がろうが、ほとんどの人が一番高い時に買って、一番安い時に手放すという、典型的なシロウトの……はい。
- −−マンガを拝読すると、もうほとんどドーンドーンと加速して下がり続けていきますが、たまに盛り返しそうな勢いもあり、マンガを描かれていていかがでしたか。
- 西原さん具合悪くなりましたね……。一度に一千万なくなると、まだほら、忘れるというかね、あきらめもつくものですが、一時間毎に5万円ずつなくなっていくから。今日は20万、明日は40万円なくなった……これ、すっごく心臓に悪いんです。パソコンの画面を見るたびに、ちょっとずつちょっとずつ、下がっていくという。
しかも、パソコンの画面に張りついてチェックしていたから、目も悪くなっちゃって。一千万より、私のこの商売道具の目のほうが大変です。そういう感じに、すごく大事なものを、いろいろ失くしたと思いますね、私。

- −−その後の経済動向を見ると、やはり、一番やってはいけない時だったんですね。
- 西原さんでも、今買わないと一生買えないと思って買った時が一番高かったって言いますよね。オイルショックの時もそうでしたけど、株も、今買っておかないと、もっと高くなるから、と。あの時、決済しておけば、あの時、買っときゃ、ですよ。でも無理なんです。そんなことはあり得ないんです。人って欲を出すと、そうなんですよ。
マスコミも意地悪ですよね。だぁれもFXで勝っていないうちに「FXなら勝てる」なんて本を出したり。私なんて、ほら、「こんなに負けた」っていう本を、ちゃんと出しましたから。
この本の中の対談で、経済アナリストの森永卓郎さんに「勝ち続けている人って本当にいるんですか?」と伺いましたが、損切りは「秒速で切らなきゃいけない」って言ってました。「自分のリスクを認識して、取引の一秒後に損切りできる人でないと勝てない」って。無理、無理。秒速なんて。 - −−もう、普通の人は無理ですね。最近は、ネットで主婦が稼ぎたくてはじめたりすることもあるようですが。
- 西原さんこういうものは、バクチと同じなので、払わなければいけないお金を使っちゃいけないんです。バクチは遊び金でやるものだけど、遊び金でやる人は少ないですよね。でもね、自分が働いたお金でなら、どれだけ使っていいかわかるじゃないですか。このお金を稼ぐのにどれだけかかるかわかっていれば、一カ月1万円までしか使わないとか、それぐらいわかりますよね。

- −−今度のボーナスで検討している人もいると思いますが、FXをやる前には必読ですね。それにしても、西原さんの場合のは、バクチだとしても、大きな賭けだなぁと思いました。
- 西原さん私はもともとバクチが好きで、バクチのマンガを描いてきましたから。ただバクチとしては、相手が見えないからつまらないですね。麻雀や、バカラとか、ディーラーが見えていて、並んでやってる人間とムダ話をしながら勝負するのが楽しいわけです。相手がまったく見えないところにいて、自分の負けたお金も勝ったお金も、どこにいったかわからないというのはねぇ。まったく実感がわかないお金ですね。
- −−勝負とはちがう感覚なんですね。
- 西原さんうーん、まぁでも、またなにかチャンスがあったらやっちゃうかもしれません。欲がすごく深いから。だって、自分で頑張って働いて稼いだお金で、何を買うかということですよ。私は投資や運用という言い方が大嫌いなんですけど、だって基本的には、それ全部、ギャンブルですからね。
それを間違えて、ダンナの大事なお給料や、子供の学費をつぎ込むのは、それが大間違い。奥さん、絶対やっちゃいけませんよってことですね。
私は、ブランド物を買うより、断然、こっちのほうが楽しいから。私の、使っても良い貯金の一部だったってことです。
これまでやったギャンブルでは、麻雀はおもしろかったですね。キライな人とやるとつまらないけれど、好きな人とずっと文句を言い合いながら勝負するというのは、それはなかなかおもしろかったですね。負けても楽しかった……っていうか、負けっぱなしだったですけどね。
でも、ほら、東京に出て来て、マンガを描いてるのが、私にとっては一番のバクチなので(笑)。1枚20円ぐらいの紙が、何万円にもなるワケでしょ。なーんだ、私がFXじゃん、私がレバレッジかかってるじゃん。なにか、青い鳥をみつけたような気持ちでございます(笑)。

- −−そうすると、今回のFXは、西原さんだからこそできたバクチ、ということですね。でも、やっぱりちょっと、イタかったですか?
- 西原さんうーん、たしかにイタかった……。一千万円、イタかったなぁと思ってるんですよね。
- −−社長さんのぽんちゃんとは、今は何をされているのですか。
- 西原さん「サイバラ水産」(https://www.saibarasuisan.com/)というインターネットの魚屋さんをやってますね。この魚屋はオトクだと思う。「社長業とはドM業だとみつけたり」って自分でも言ってましたけど、社長さん自ら、北海道に行って業者をみて契約して。開業記念キャンペーンの時には、セールで魚を半額で売ったりして。注文が入るたびに、チクチク、毎日針が刺さるような、かなりハードなSM状態。ドM業のなせる技だと思いますね。
もともと、社長って究極の中間管理職で、株主さまにしかられ、下から突き上げられ、トラブルの責任を背負う、シンドイ仕事ですね。若い人がやりたがらないのも、なかなかわかる。 - −−そのサイトを見ると、西原さんのイラストが満載ですね。また組んで、おもしろいことをされているわけですね。
- 西原さんそうですね。広告としてマンガを描いてます。45才、キャンギヤルですね(笑)。
こうやってね、いろいろなジャンルの仕事ができるので、本人も飽きないし長く続くんでしょうね。仕事を断らずになんでもやってくると、思ってもいないことを頼まれたりもするわけですね。今回のおかげで、NHKの経済番組に出演したりもしたし。そうやっているうちに、また仕事が広がるから。ほんとに、いろいろな方が教えてくれたことですね。自分が思ってるだけでは狭いですから。いろんな人が来て、いろんな仕事のお話をくださるのは、ほんとにありがたいですね。 - −−この本も、後半には作家の岩井志麻子さんたちと交流されている様子や、泣いたり笑ったりの「鳥頭日記」が掲載されていたり、途中に西原さんと社長さんとの対談や、経済アナリストの森永卓郎さんと三人で、今回の顛末の分析をされてる記事などが掲載されていて、飽きない構成になっていますね。
- 西原さんもともとネットで連載していたマンガだし、目にイタいですから、間にちょっと記事を挟んだり、目にやさしくなるように、いろいろ入れてあります。
とはいえ、こういったギャンブルものが、実は本業の二大柱でございまして、おもいっきり大張りして負けました。世のFX本の中で唯一、「負けました。しかも大負け」という本なので、ひとつよろしくお願いいたします。
どんな経済本よりタメになりますよ。やれば、負けるよって(笑)。 - −−肝に銘じます(笑)。今日はありがとうございました。
- ※FX(外国為替証拠金取引)とは、海外通貨を売買して利益を得るハイリスク・ハイリターンの金融商品。

- ★身削る商売をしています。体当たり感はさすが!そんな彼女の人生ドM感に共感が持てます。
- ★ファンはもちろん、ファンでなくてもおもしろい。身銭をきったFX漫画。FXの参考にはならないかもしれませんが、楽しめます。
- ★りえぞー先生はこうでなきゃ。FXの仕組みが少しだけわかったような気も。



















