- 斎藤潔さん (さいとう・きよし)
- (有)オン・ゴーイング代表。ICF(国際コーチ連盟認定)プロフェッショナル認定コーチ、財団法人生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、日本コーチ協会正会員(会員番号232)。大学卒業後に大手印刷会社に入社し、営業、社長室、経営企画室などを経て、東証一部上場プロジェクトに参画する。24年のサラリーマン生活に終止符を打ち、2003年7月確認有限会社オン・ゴーイング設立。企業活性化コーチング、コミュニケーション向上コーチングなどのビジネスコーチングを行う傍ら、 コーチング関連情報が集まるサイト「オン・ゴーイングパティオ」を開設し、ポッドキャストを通じてコーチングの普及と人材交流の場の提供を行っている。この7月に最初の著書「オレは聞いてない!」を刊行。
インタビュー

- −−独立3年目にして初の著書を出版されたわけですが、本を書こうと思い立ったのはなぜですか?
- 斉藤さん正直なところ、ずっと本を書くことは意識していませんでしたね。コーチングというのは人と人との関わり合いなので、そのときそのとき、現場で起きていることが全てなんです。それを大切にしたいという思いがあったので、文章にして残しても伝わらないのではないかと思っていたんです。 とはいうものの、独立して2年、周りの方々と話す中で、何か形としてまとまったものがあってもいいんじゃないか、限りある人だけではなく、たくさんの人に伝えていくのもいいんじゃないか、との思いに駆られ始めたんですね。
- −−執筆に際しては、ご自身の経験をベースに書くということにこだわられたということですよね?
- 斉藤さんその通りです。世の中にコーチングの本はたくさんあります。その中にあって、「スキル本」というより「人本」にしたかったんです。私という人間が何をやってきたかを書こうと。書けるとしたらそこかなと思いました。
- −−「人本」というのは、いかにもこの本を言い当てていますよね。その名の通り、ご自身のことをかなり赤裸々に書いていらっしゃいますが、抵抗などありませんでしたか?
- 斉藤さんかなり深いところまで書きましたが、曲げて書いたところは一切ありません。誰がいいとか悪いとかではなく、事実を書いたつもりです。その中で自分が何を考え、どう学んでいったかを正直に全部書きました。これを濁して書いてしまったとしたら、伝わらないと思うんですよ。だから悔いはないですね。
- −−この「人本」を通じて、特にどんな人に、どういったことを伝えたいですか?
- 斉藤さん今、2007年問題に直面していますよね。私より少し上の世代の方たちが、来年には退職して趣味の世界に入るわけです。私は今53歳ですが、もしあのまま会社にいたとしたら、あと3年で役職定年なんです。あと3年で定年なんて、あり得ないですよ。団塊の世代の方たちも同じだと思うんですね。そういった方たちが、これまで培ってきた経験やスキルに新たなコミュニケーションスキルをプラスすれば、活躍の場をいろいろ創造できると思うんです。この本にはサラリーマンだった等身大の私のことが書かれています。私がやってきたことに照らして、こういうこともできるんだよというのを、ぜひ伝えたいですね。
- −−本を書きたいと思ってもなかなか出版できるものではないと思いますが、そのきっかけはどのようなものだったんでしょうか?
- 斉藤さんある雑誌でインタビューを受けまして、そこでチラッと「本を出版してみたいですね」と漏らしたんです。そうしたらインタビューアーのライターの方が興味を示してくれたんです。それがきっかけで、徳間書店さんとのつながりもでき、出版できたんです。ライターの方が私と打ち合わせながら、企画書から何からすべてお膳立てをしてくれました。文章も彼が私から聞き取って全て書いてくれました。だから彼には本当に感謝しています。
- −−たまたまインタビューで、ちょっと口にしたことがきっかけだったんですね?
- 斉藤さんこれはコーチングでもよく言われることなんですが、口に出して言わないと相手に伝わらないんです。もちろんライターの方が私に興味を持ってくださらなかったら出版にはこぎつけられなかったでしょうけど、まずは自分で発してみるということから始まるんです
- −−コーチングとの出会いも、たまたまテレビを見ていたことがきっかけだったそうですね。
- 斉藤さんそうなんです。私が勤務していた会社は合併を繰り返し、いろいろな価値観を持った人がひとつの会社の中で働くという、非常に混沌とした状態だったんです。私はそれをまとめていくという役割を担っていたものですから、みなの思いをひとつにする方法がどこかにないものかとずっと考えていたんですよ。そのときにたまたま、テレビでコーチングを知りました。そこで紹介されていたコーチの養成学校「コーチ21」にさっそく行ってみたんです
- −−そこでの行動も、素早かったんですね。
- 斉藤さんテレビで見た「コミュニケーションで社風を変える」というキーワードが、しっくりきましてね。行ってみると、音楽が流れる中笑顔の女性に取り囲まれて、うわー、何か買わされちゃうのかな、という感じでした(笑)。そこでコーチの資格を持つ男性に、「これは今後ビジネスの中で注目されていくものだから、今やっておけばパイオニア的な立場に立てる可能性もありますね」と言われて。もともとピンときていたうえに、さらにその言葉が胸に刺さったんですね。しかも、ここで学べば50万円以上のお金がかかるのですが、「今50万円を自分に投資するとしたら、何がありますか?」という、絶妙な質問を投げかけられたんですよ。さすがコーチですよね。その言葉に心から納得し、コーチングを学ぶことを決めました。
- −−即断即決して学び始めたわけですが、葛藤や迷いなどはなかったのですか?
- 斉藤さん葛藤はありましたね。電話で学ぶというスタイルなのですが、どれくらい自分の身に付いているのか、どのくらい活用できるのか、ずっと疑問に思っていました。また、私はビジネスに生かすことを考えていたのですが、学習内容にビジネスの要素がないんですよ。この頃はまだ、自分の目線が外に向いていたんですね。教材が悪いとか、運営が悪いとか、教師が悪いとか、電話システムが悪いとか。そこに自分の意識が向いているうちは、学びの度合いは低かったです
- −−その姿勢が変わり始めたのは、いつ頃からですか?
- 斉藤さんコーチングには、学びのトライアングルというのがあるんです。自分で学ぶ、コーチをつける、自分がコーチをするという3つです。この3つをやることによって学習の度合いが深まるのですが、なかなかそこには踏み込めなくて、半年くらい経ってからようやくその3つを実践するようになったんですね。特にコーチからコーチングを受ける過程で、全部人のせいにしていたことを、自分の問題としてとらえられるようになりました。電話学習という環境の中で自分は何ができるか、ビジネスに生かすには自分がどういうスタンスで学べばいいのか、そういった考え方ができるようになっていきました。それからは加速度的に学習効果が上がっていったように思います。
- −−そのときのコーチに、今もついているそうですね。
- 斉藤さんそうなんです。正直言うと、最初はいやでしたね(笑)。私より年下の女性ということもあり、この人がつくの?大丈夫かな?という思いがありました。私はビジネスを求めていたのですが、彼女にはコーチングのスキルはあってもビジネス経験はないんです。だから何をしてくれるんだろうと。ここでも目線が外に向いていたんですね。このコーチは私の可能性をどう引出してくれるのか、何を教えてくれるのかという視点だったために、違和感があったんです。彼女はよくまあ、そんな姿勢だった私にお付き合いをしてくれたなと思いますね。彼女は揺らいでいた私にさまざまな気付きを与えつつ、終始私のことを認めてくれていました。そのスタンスはずっと変わりませんでした。素晴らしいコーチだと思います。今私が独立できて、コーチングのことをいろいろな人に語ることができるのは、彼女にコーチングを受けたからです。この出会いは大きかったですね
- −−ということは、本にも書いてあった通り、コーチには性別や年齢は全く関係がないということなのですね?
- 斉藤さんクライアントに行動させる、結果を出させるという役割においては関係ないですね。ただ、コーチはコーチたる見本でなければならないと思うんです。コーチがどことなく体の調子悪いとか、なんかモチベーション下がっているというのはだめですよね。コーチ自身がアップグレードしている姿を見せるというのは大事ですね。私のコーチもそうですよ。自分自身を変えていく努力をされていますね。私もコーチングの仕事をしていてつくづく思いますが、自分自身が停滞していたらこの仕事はできないですよ。自分自身が変わっていかないとね。
- −−では起業についてお聞きしたいのですが、独立を決意したときはすでにかなり準備は進んでいたんでしょうか。
- 斉藤さん準備は何もしていませんでした。ただ、決意があっただけです。営業の見通しもほとんどありませんでしたし。会社を辞めたのが6月20日、会社を設立したのが7月18日。その間は1円起業するために動いていました。7月23日に六本木ヒルズ49階に会場を借りていて、そこで創立記念セミナーを行い、1円起業のノウハウをみんなに伝えようと思っていたんです。だからそれをゴールに動いていたんですよ。思いのまま自由に動けるし、何もかもが新鮮で楽しかったですね。でも収入があるわけではない。不安が全然ないわけではなかったですけど、まずは創立記念セミナーを成功させようと一生懸命でした。それをやりきることで、次にまた見えてくるものが絶対あると確信していましたね。
- −−最初のクライアントがついたのはいつですか?
- 斉藤さん9月末くらいですね。コーチ仲間の知り合いの方の勤める会社がコーチングに興味を持っていて、そこに私を紹介してくれたんです。私はいろいろなところでビジネスコーチとして独立しましたと宣言していましたし、もちろんコーチ仲間にも伝えていました。やはり私が口にすることによって、最初のクライアントに結びついたんです。私が何も言っていなかったら、何も進んでいなかったということですよね。
- −−クライアントがつくまでの約2カ月は、どのように過ごされていたのですか?
- 斉藤さんその間も研修コーチとしての仕事は、それなりにありました。その仕事をこなしていたら、ある日私のコーチから「あなたは独立して研修コーチがしたかったのですか?」と言われたんです。それは違うと。そこで初心を思い出しました。以来研修の仕事をメインにするのではなく、もともとやりたかった企業に入ってビジネスコーチングを行うことに焦点を当てていきました。やっぱり私のコーチは核心を見ているんですよ。あれを言われなければ、プロ研修コーチになっていたかもしれませんね。
- −−起業してから、一番嬉しかったことはなんですか?
- 斉藤さん嬉しいことはたくさんあるのですが、やはりサンデーヒルズカンファレンスを通してコミュニティができたということですね。いろんな方が集まって、私を介して新しいビジネスを展開したり、新しいつながりを作ったりしています。そこに自分が参画していることを体感し、その人たちから賛同を得たり賞賛されたりというのは、すごく嬉しいです。昨日六本木ヒルズでこの本の出版パーティをやったのですが、その運営を支えてくれたのは、このコミュニティのメンバーです。しかも全部ボランティアです。対価を払わないでも仕事をするというパートナーシップで結ばれているわけです。ガッチリ固まるというよりも、少し緩やかに固まっているんですね。その方が仕事がやりやすいんですよ。もしそこにお金が介在していたら、これをやらなければならない、というのがでてきます。そうではなくて、今日できなければ、あ、じゃあ他の人に頼むからいいよって、気軽に言い合える。その感覚がいいんです。
- −−そこで人が拡散せずに、むしろ増えていっているのがスゴイですよね。
- 斉藤さん拡散していかないのは、信頼関係でしょうね。もちろん離れていった方も続かなかった方もいます。でも思いが強い方は残りますし、また広がってもいきます。これは『パートナーシップ・マネジメント』を書いた橋口寛さんという方が言われている、「バリューファースト」という考え方なんです。「マネーファースト」ではなくて「バリューファースト」。それを実践することによって、お金は後からついてくるということです。まさにそうなんです。みなさんがこのコミュニティを通してビジネスチャンスを得たり、人と知り合うチャンスを広げたりしているんですよ。
- −−それは何よりの財産ですね。では最後に、斎藤さんのこれからの夢をお聞かせください。
- 斉藤さん今の仕事は60歳までだと決めています。あと7年、とにかく体を動かして仕事に励みます。そして60歳になったら、東京、香港、そして日本の田舎の3箇所に、1年の3分の1ずつ住むんです。最近はニューヨークにも興味を持ち始めたので、香港がニューヨークになるかもしれません。とにかく60歳で自分の仕事のフェーズを変えたいんです。コーチングを辞めるわけではなくて、今の組織コミュニケーションにおけるコーチングから、個人に焦点を当てたコーチングに切り換えたいと考えています。そのときには通信がもっと発達しているでしょうから、どこへ行ってもコーチングはできるでしょう。そして田舎では旅館業をやるんです。候補地も絞られてきていて、魚の仕入先とかも目星をつけているんですよ。そして香港、もしくはニューヨークでは自由に過ごしたいなと。3箇所を動きながら、60歳からは好き勝手に楽しみますよ!
- −−まさにバラ色の人生っていう感じですね!今日は奥深いお話を、どうもありがとうございました。
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