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| 第15回日本ホラー大賞大賞受賞作!遺体を加工して製品を作り出す「遺工」を家業とする庵堂家の3兄弟… |
| 『庵堂三兄弟の聖職』 |
| 第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作!奇妙な漂浪者が抱えた地図帖には、男の紡ぎだした物語がびっしり書き込まれていた… |
| 『地図男』 |
| 第3回ポプラ社小説大賞特別賞受賞作! 近未来の日本、制度に翻弄される人間群像を描く! |
| 『RANK』 |
| 事故で亡くなった愛妻の肝細胞を密かに培養する生化学者・利明 |

| 第2回(1995年)『パラサイト・イヴ』 著:瀬名秀明 |
| 生命保険会社に勤める若槻は、ある日、呼び出された顧客の家で子供の首吊り死体を発見してしまう |

| 第4回(1997年)「黒い家」 著:貴志祐介 |
| 岡山の遊郭で醜い女郎が語り始めた身の上話。山本周五郎賞も受賞した怪奇文学の新古典 |

| 第6回(1999年)「ぼっけえ、きょうてえ」 著:岩井志麻子 |
| 南の島を訪れた健次は、老人から“貝から中身が落ちるところは決して見てはいけない”と告げられるが・・・ |

| 第8回(2001年)「ジュリエット」 著:伊島りすと |
| さぞ、いい声で鳴くんだろうねぇ、君の姉は―。どうにかして、「姉」を手に入れたい…。僕は烈しい執着にとりつかれてゆく |

| 第10回(2003年)「姉飼」 著:遠藤徹 |
| 妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った |

| 第12回(2005年)「夜市」 著:恒川光太郎 |
−−まずは4連続受賞おめでとうございます。率直な感想を聞かせていただけますか?
真藤さん ドえらい賞を貰ってしまったな、と単純にビビっています(笑)。特に第15回日本ホラー小説大賞は、歴史も伝統もある大きな賞なので、本当に取ってしまっていいのか、と(笑)。 −−ホラー小説大賞の受賞が決まったとき、何をしていたんですか? 真藤さん すでに受賞が決まっていた第3回ダ・ヴィンチ文学賞の授賞式が翌日だったので、髪を…。あ、僕はこれ(帽子)の下はツルツルなんですが、人前に出るのでこぎれいにしようと思って髪を剃っていたときに電話がかかってきました。電話に出てビックリして、つい手がすべって、ツーッと血が…(笑)。 −−(笑)。受賞するまでの投稿時代が長かったと伺っています。 真藤さん はい。2〜3年は、書いては出して、落ちて、また書いて…というのを繰り返していました。2007年12月頃から、毎月一本は賞に応募しようと決心し、一年くらいやって駄目ならあきらめようと思って執筆に没頭しました。短いのもあれば長いのもあります。『庵堂三兄弟の聖職』は長編ですね。応募したいと思っている賞の受賞傾向を調べて、自分が書いた作品の中からそれに近いものに手を加えて応募したり、新たに書き下ろしたり。 −−落ち続けた時代に、「もう書くのをやめよう」と思ったことは? 真藤さん いやー。しんどかったし、大変でしたけど、じゃあやめてどうすんだ、と。続けてどんどん書いていくうちに、表面上には現れてこないけれど、徐々に筆力が鍛えられて、その結果の受賞なのかもしれませんね。 −−本来のお仕事は何をされていたんでしょうか? 真藤さん 作品を自分で撮ったりしながら、助監督や制作助手をやったりと、映像関係の仕事を長くしていました。 −−『庵堂三兄弟の聖職』を読んでいると、シーンごとに鮮烈に映像が浮かんでくるような描写が印象的だったのですが、やはり映像からの転身も影響していますか? 真藤さん 書いているときというよりは、最後に推敲をしているとき、自分でも感じますね。僕は何度も何度も推敲をして、文章やシーンをそぎ落としたり膨らませたりしていくのですが、それは映像の「編集作業」に似ています。シーンごとに映像を思い浮かべて、必要か必要でないかを考えていることもあります。 −−映像ではなく小説だからできた作品、とも言えるのでしょうか? 真藤さん 小説が優れているのは、一人ひとりの感情をしっかり描ききることができる点です。映像ではやはり限界がありますよね。『庵堂三兄弟の聖職』では、3兄弟、彼らを取り巻くさまざまな人々の想いや感情に深く深く潜って、それぞれが絡み合いながら螺旋を描くところをしっかりと描けたという感触がありました。 −−『庵堂三兄弟の聖職』では、遺体を加工して製品を作り出す「遺工師」の三兄弟が主役です。あまりのリアリティに、本当に「遺工師」という職業があるのかと最初思ってしまい、調べてしまいましたが…。 真藤さん 「遺工師」は現実の職業ではありません。実在でも、ひとつの喪のかたちとしていいんじゃないかとは思いますが。 −−死化粧師など、アニメや漫画、映画で、遺体の保存処理を施すエンバーミングや、死化粧師などが周知されるようになってきましたが、エンバーマーではダメで、「遺工師」でなくてはならなかったのは?
真藤さん 納棺師や死化粧師、エンバーマーも同じく死体を手がける職業ですが、やはり死体を通して残された人の想いを保存するというところで止まります。僕は、死体を保存して美化するだけではなく、転生することで残された人々の想いも新たに再生するところを描きたかった。 また、「遺工師」は職人であるのと同時に、モラルの範疇外にいるクリエイターという面もあると思います。遺体を解体加工するクリエイターという点ではホラーでもあるし、モノを作り出す過程で三兄弟が苦悩し、葛藤するという点では人間ドラマです。 −−作業のひとつひとつがものすごくリアルな描写でした。ものすごく取材しにくい分野だと思うのですが…。 真藤さん はい。苦労しました(笑)。医学書を読み漁ったり、医療関係の友人に話を聞いたり。解剖に立ち合わせてくれとも頼んだんですが、それは却下されました。 −−庵堂三兄弟のキャラクターが個性的で、キャラのパワーにぐいぐい引き込まれてしまいます。3人それぞれが突出した魅力や才能を持ち、でも少しづつ欠けている部分があり。あの3人は、強烈なインパクトですね。 真藤さん 長男の正太郎は庵堂家の中では父性を持つ職人肌。次男の久就(ヒサノリ)はいちばん現代っ子ぽいんですが社会と自分の距離感を図りかねているところもある、末っ子の毅巳(タケミ)は感情むき出しの野生児で、でも一番純粋。3人とも、非日常が日常化した世界のなかで、それぞれがもがいてる。ぼくも3兄弟と一緒にもがいていました。 −−「遺工師」という視点から生と死を深く鮮やかに描いた『庵堂三兄弟の聖職』。死体を描いたから、というだけではない怖さが長く頭に残りそうです。 真藤さん 誰にでも必ずいつかは訪れるのが「死」。自分が死ぬだけではなく、身近な人の命が突然理不尽に奪われることも起こりえます。作中に出てくる、死んだ娘を剥製にしてほしいと願う母のように、最愛の人を失うことで常軌を逸してしまう人もいる。普通に生活している人々が狂気の一線を越えてしまう瞬間は誰にでもあります。僕にとってはそれこそがホラー。その危うい人々を、タブーもすべてひっくるめて抱きとめて描いてやろうと思ったのがこの作品です。ホラー小説が苦手、という人にもぜひ読んでみていただきたい。狂気や倒錯に転がりこんでしまう人々も多く出てきますが、転がりこむ先が暗部だとしたら「遺工師」という職業を通して一縷の光へ出る道筋をさぐったつもりです。日常と非日常、彼岸と此岸、光と闇の境界線でせめぎあうような作品世界に浸ってもらえればと思います。 −−再読し、光と闇が織り成す世界を満喫したいと思います。本日はありがとうございました! |