楽天ブックス 著者インタビュー

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 辛辣&容赦ない観察と分析のはてに、本当はあなたも私も密かに思っている本音?と妄想?の境界線上あたりをマンガ&エッセイに書いてしまう辛酸なめ子さん。出版が相次ぎ、最近はテレビでもお見かけする機会が増えた彼女の『ぬめり草』には、セラピー/渋谷デビュー/犬/合コン/霊/ブレイク予想/トリビアンプレイ/霊泉家の母/六本木ヒルズなどなど、気になる旬ネタをテーマにしたマンガが多数収録されている。 そんな辛酸さんに、お話をきいてみました。

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辛酸なめ子さん『ぬめり草』『ぬめり草』
セラピー/犬/合コン/霊/六本木ヒルズなどなど、気になる旬ネタをなめ子がぬる〜く斬る!
1,260円(税込)
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辛酸なめ子さんの本!

アイドル万華鏡『アイドル万華鏡』
霊道紀行
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セレブマニア
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だれでも一度は、処女だった。
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プロフィール

辛酸なめ子さん (しんさん・なめこ)/池松江美さん
1974年8月29日埼玉県生まれ。乙女座、A型。武蔵野美術大学短期大学部グラフィックデザイン専攻卒業。学生時代から漫画、イラスト、文章、展覧会など、メディアアクティビストとして創作活動を行う。雑誌連載、寄稿他、自主制作の雑誌や作品販売など行ってきた。本名「池松江美」とペンネーム「辛酸なめ子」両方で、漫画、エッセイ、小説、アート作品(秘宝グッズ)、ポエトリー・リーディングなど、さまざまなメディアで作品を発表している。最近はテレビ出演でも活躍。
公式ホームページ「女・一人マンション」: http://sinsan.blog.smatch.jp/ 

インタビュー

−−最初に収録されているマンガが「念!増刷計画」ですが、辛酸さん、今回は大丈夫じゃないでしょうか、『ぬめり草』売れ行き良さそうですね。
辛酸さんどうなんでしょうね。とくに売れているとかそういう話はまだないんですけれども…。
−−増刷になるといいですね。
辛酸さんそうですねー。
−−2年半ぐらいの間に、さまざまな雑誌や媒体に描かれたものを一冊にまとめられたんですね。いろんなネタがあって、お得な感じですねー。
辛酸さんそうですね。創作系とか、取材系のものとかいろいろあるんですけれども、とくに心霊系の話は、前の本で、宜保愛子先生のキャラクターで描いていたんですが、2003年5月に亡くなられたので、別の、新たな霊能者の女性を描いてみました。…霊的な話題は描いていて楽しいですね。
−−辛酸さんは霊とかにも興味をお持ちなんですね。ご自身も霊感があったり? 作品では嘘と本当の境界みたいなところが、キワドクてハラハラしますけど…。
辛酸さんあまりにも霊的なものに支配されちゃうと、ただのスピリチュアル系のマンガになってしまうので、いつも「疑う視点」みたいなものを持って描いてるっていう感じですね。完全に盲信しているわけではないんです。
−−その辺のサジ加減が絶妙で、ドキドキしますね。疑う視点はほかの作品でもうかがえますね。
辛酸さん疑うっていうのは…そうですねー、どこかに醒めている自分がいるということなんでしょうか。
−−ものごとの見方や視点が普通の人と違うところが魅力ですね。男女問わずファンがいるのもわかります。
辛酸さん…ありがとうございます。特に読者の性別を意識して描いているわけではないですが。自分の描きたいものを、描きたいように描いているという…。『道徳の時間』では、「あさってのザビエル」というマンガがあって、連載していたのが、ヤングチャンピオンという青年誌だったものですから、やっぱり…その、リクエストとして下ネタを多くしてほしいということもありまして。そういうことがあれば、合わせることもあるわけですけれど、まぁ、普通は編集者の方とお話しして、何となくそういうのも取り入れながら、結局、やりたいようにやるという…。
−−反響も考えながら、自分のテーマに近いものを描いているということなんですね。いま、テーマってどのくらいお持ちなんですか? ネタのジャンルは幅広いですよね。
辛酸さんそうですね、オカルトと時事ネタと動物系と…。あとは、日常の中の恐怖とかそんなものですか。この前、星占いの人にホロスコープをみてもらったら、私はオカルト系に興味を持ちやすい星の配置になっていると言われました。それで、なんだか私の使命は、描いたもので人を癒すことだそうなんです…、癒し効果があるのかは、ちょっとわからないですけれど…。
−−普通の人が言えないことまで描いてしまう辛酸さんの作品には、共感している読者もいっぱいいるような気がしています。
辛酸さん …そうなんですねぇ。
−−マンガも文章も、そしてオブジェなどの作品まで作られるマルチな活動をされていますが…。
辛酸さんアイディアを思いついた時に、それをどうやって表現するのが一番いいのかを考えているとこうなりました。オブジェみたいな物があっていると思ったら作るし、マンガが良いと思ったら描くということです。
−−表現方法にコダワるのではなくて、描きたいテーマに合わせて表現するから、いろんな手法になるわけですね。しかし、それはやっぱり、普通の場合だとあんまりなさそうなことですね。
辛酸さんそうですかねぇ。うーん、ちょっと節操がない感じに見られてしまうかもしれませんが、これからも、アウトプットはこの形でやっていきたいなと思っています…。
−−最近は、テレビにも出演されてますね。
辛酸さんはい、そうですね。本当はテレビには、しゃべるのがうまくないので、出る気はあまりなかったんですけれど、出版社の人とかに相談したら、宣伝になるから出た方がいいと言われまして。それに、今まで、アイドル系のコラムを書いたりしてたのに、そういう世界を直接知らなくて、遠くから眺めてただけだったので、勉強になるかな、というか、観察するのもいいかなと思って。それで、出演してみました。  それでわかったのは、「芸能人はリアクションが命」というか、すぐ手を叩いて大声で笑ったりとか、反応が早いんですね。私はそういうことがなかなかできないので、どんどん前にでてくる人たちの間で、逆にどんどん画面から浮いていってしまうんです。ですが、性格は変えられないので、ちょっとジレンマに悩んでいるんです。出演の依頼した人とかは後悔しているんじゃないかなと思いますけれども…。
−−それでも、ネタを拾うという意味では、生の現場は宝の山なんじゃないですか?
辛酸さん最初はネタを拾おうと収録中もメモを持っていったんですが、スタジオで、ライトがあたって、みんなが前へ前へと出て来る異常な空間では、とてもゆっくり観察しているわけにはいかなくて。雰囲気に飲まれてしまって…。
−−辛酸さんは、いつも細かく、どんな場所でもメモをとってらっしゃるんですね。
辛酸さんそれが今回はなかなか、前に机とかあればできるんですけど、番組では座って全身が見えていますから、手も動かせないし、メモも出せない。そんな余裕はないですね。本当に、芸能人の方々の、テンションの高さにはいつも驚いています。ですが逆に、最近忙しくて、友達と遊ぶ時間がとれなくなったのが悩みだったんですけれど、芸能界の人たちは、その場だけ、瞬間仲良くして、すぐ次の現場へ行くというドライな人間関係を築いていて、それはそれでちょっと自分には合っているんじゃないかっていう気もしています。
−−なるほど、辛酸さんの作品では、女の子たちの仲良しシガラミや、ベタベタの距離感に批判的だったりもしますね。芸能界はそういう感じじゃないんですか。
辛酸さんみんな社交辞令でしゃべっているという感じですね。ぜんぜん親友とかではないのに、会ってまだそんなに時間もたっていないのに、なんとかチャン〜と呼び合ったり。そういうプレイだと思えばけっこう楽しいですね、親友ゴッコだと思えば。
−−そういうお友達とか、いたりするんですか?
辛酸さんそうですね。勝手に、井上和香さんとかが隣にいて、スキンシップされたりするとウレシかったりしますね。  ただ以前、連載していた『裏BUBUKA』って雑誌に、そういった、テレビに出演した時のネタを描いたところ、やっぱり関係者にすぐチェックされまして、注意されたことがありました。ですので、描きたい話はありますけど、今すぐは描けないですね。いつかほとぼりが冷めたら…。時間を置いてからですね。
−−話題をかえますが、辛酸さんは昔から、そういう創作がお好きだったんですか?
辛酸さん…子供の頃からいろいろ創作が好きで、絵本みたいなものを綴じたり、一人で雑誌を作ったり、書くことが好きでしたね。最初の本『ニガヨモギ』も、仕事を初めてから6年ぐらいかかっているので、ひたすら信じて続けるということですね。
−−なるほど。今後のご予定はどのような?
辛酸さん『STUDIO VOICE』(パルコ出版)で連載していた小説みたいなものがありまして、もしかしたら、来年前半には、池松江美名義で本にまとめるかもしれません。画数は本名の方がいいので、自分としては、本名を使いたかったんです。ずっとネットで本名で書いていた『自立日記』を出した時にも、本名を使いたかったんですけど、出版社の営業の人から、ペンネームの方がいいといわれて、ダメになっちゃったので。
−−なるほど、初めての本名の本を準備中なんですね。それは、楽しみです。あとは、そうですね…、辛酸さんが好きな男性のタイプを教えてください。
辛酸さん理系の人があっているような気がします。文系の男性って、話す話題とか知識とかでも、こちらの知能をためすような感じがして、議論とか仕掛けてきたりとか。そういうのよりは、もっとは素直で、お互いぜんぜん違うけれども、補いあえるような、理系の人がいいですね…。
−−たしかに、挑まれたら、勝ってもアレだし…、負けても困りますよね…。
辛酸さんあとは楽天ブックスさんだと、IT長者さんたちとかの合コンに潜入してみたいですね。ここで、アピールすると「六本木ヒルズの集い」とかに誘ってもらえたりしないでしょうか(編集注:取材時の楽天は六本木ヒルズにありました)。IT長者が好きッ!とか、そういうアレではないんですが、みなさん、どういう生活をしていて、どんな女性が集まってきているのかとか見てみたいです。女子アナとか、神田うのがいたりするんでしょうか。
−−うーん、読者としてもそれはぜひ、潜入してマンガにしてもらいたいです。しかし、六本木ヒルズは迷路のようで迷いますね。
辛酸さん六本木ヒルズにはもう何十回も遊びに行っていますが、社長さんなら一度は住んでみたいと思う…野望のシンボルみたいになっていますしね。この本の最後の作品もそんなヒルズのことを描いたストーリーです。
−−最後になにかアピールを。
辛酸さんまったくはじめて私の名前を知ったという方がいらっしゃいましたら、文庫だと安いので、『ニガヨモギ』を読んでみてください。自分では、すごくオシャレっぽくガーリーな感じにしたいんですけど、出来上がった物を見るとなんだかオシャレじゃないんですね、不思議です。メジャー感が足りないのでしょうか。  そんな中で、今回の『ぬめり草』は、デザイナーの方が凝ったデザインをしてくださって、いままでの本の中ではトータルデザインで一番気にいっています。秘密博士さんというミュージシャンでもある方が、時間をかけて作ってくれたので、将来デザイナーになりたい方も、いろいろ勉強になる本だとおもいます。ぜひ、よろしくお願いいたします…。
−−…ああっ、裏表紙もスゴかったんですね。これは買って、ぜひ見てほしいですっっ!今日は本当に、ありがとうございました!
苦節●年?辛酸さんのブームが来ている(ような気がする)。出版も相次ぎ、テレビなどでの登場も増えている。ガーリーなナンシー関とも評される辛酸さんの、きわどい話題にも、どこかに絶妙なバランス感覚を宿す視線は、やみつきになる人も多いだろう。まだ読んだことがない人はぜひ一度試してほしい。また、ファンの方は胸をはってファンと言ってみましょう、意外にお友達が増えるかもしれません。このあと、辛酸さんは謎めいた微笑みを残して、赤坂の夜の雑踏へと消えて行ったのでした…。ありがとうございました。

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