2013/07/04掲載
前作からわずか11ヵ月という短いスパンでアルバム『クウェイカー』を発表するシガー・ロス。前作とはまったく異なるあまりにも激しいサウンド、そして長年活動をともにしてきたキャータンの脱退……。いまこのバンドになにが起きているのか、フロントマンのヨンシーに聞いた。

| 3人になって 初期の自分たちを思い出した |
アイスランド出身の独創的なロック・バンド、シガー・ロスが通算7作目のアルバム『クウェイカー』をリリースする。長年のメンバーだった鍵盤担当のキャータンが脱退し、トリオ編成に戻った今回の作品は、前作『ヴァルタリ〜遠い鼓動』での静謐な音響空間とは打って変わって、アグレッシヴなサウンドがマグマの如く湧き出る驚きの一枚だ。果たして、彼らの中に一体どのような変化が起きたのだろうか? 武道館公演を明日に控えたヨンシーに直接聞いてみた。
――新作『クウェイカー』を聴いて非常に興奮しています。ベースのゲオルグも本作について「こんなに興奮したのは久しぶり」と最近語っていましたが、あなた自身はいかがですか?
「うん、僕も同じくらいに興奮しているよ」
――『クウェイカー』は2012年の前作『ヴァルタリ』とは異なり、とてもヘヴィなサウンドですね。まるで新しいバンドに生まれ変わったかのように聴こえました。
「じつは『ヴァルタリ』と『クウェイカー』は、ほぼ同時進行で作っていたんだ。最初に『クウェイカー』を作っていて、一旦それを中断して『ヴァルタリ』を仕上げて、それからまた『クウェイカー』に戻って最終的に仕上げたんだよ。前者はドラム・ビートがなくてアンビエントな作品だったから、それとは正反対のものが作りたいと思ってね。それでガツンガツンと攻めてくるような感じのサウンドになったんだ」
――今年1月にキーボードのキャータンの脱退がアナウンスされましたね。ということは今回のアルバムは3人で作ったということなのでしょうか?
「そう、『ヴァルタリ』までは参加していたけど、この『クウェイカー』を最終的に仕上げる時点では彼はもう参加していなかった」
――3人でのレコーディングというのはヨンシーとゲオルグにとっては、97年のデビュー・アルバムの『ヴォン』以来のことだと思うのですが、ひさしぶりに3人に戻ってみてどう感じましたか?
「キャータンとはずっと一緒に活動してきたから、最初は彼がいないことに違和感を覚えたけど、同時に“新しい出発”という感覚も生まれたんだ。メンバーがひとり欠けた分、“そこをどう埋めるのか” っていう課題ができて、“違うことをやらなくては”という意識が高くなっていった。実際、いろいろと実験的なこともしたし、本当にさまざまなことが試せるっていう自由な雰囲気があったんだ」
――『ヴォン』を制作した時の興奮が戻ってきた、いわゆる原点回帰みたいな感覚もあったのでしょうか?
「わからないけど、本当に楽しみながらできたのはたしかだよ。曲作りをはじめる時にオーリーのガレージにみんなで集まって、3人で笑いながらいろいろと試したんだ。とてもいい雰囲気だった。そういう意味では初期の頃の自分たちの姿を思い出したね」
――メディアではアルバムのサウンドをドゥーム・メタルのヘヴィさと比較している人もいました。メンバーは若い頃にメタルを聴いて育ったという話を聞いたのですが、これは本当ですか?
「もちろん若い頃はよく聴いていたよ。メタリカ、アイアン・メイデン、AC / DC、メガデス、ブラック・サバスとかね。でももう酔っ払った時ぐらいにしか聴いてないけど(笑)」
――では、新作にはそうしたメタル・ミュージックからの影響は?
「いや、それはないね。たとえば、1曲目の〈ブレンニステイン〉は最初のきっかけとなったのがベースのサウンドだったんだけど、それがとても歪んでいたから、そのまま重たいサウンドになったんだ。どの曲もそういうふうに自然な成り行きで生まれていった」

| ライヴ前にはディプロや メジャー・レイザーを聴いているんだ |
――では、アルバム全体に流れているダークな感覚は何処から生まれてきたのでしょう?
「『Takk...』以降、ここ数枚のアルバムのサウンドはポップ寄りだった気がするんだ。だから今回は基本に帰ってみようと思ったのはたしかだね。そしてそれがすごくアグレッシヴな形で現れたんじゃないかな。方向性を変えようという意識があったことは間違いないね」
――たしかに新作はここ最近では一番バンドらしいアルバムともいえる気がします。とくに印象に残るのはドラムの力強いビートです。ドラムに対するこだわりのようなものはありましたか?
「うん、そういう意識はあったよ。オーリーにもっと激しく叩くようにみんなで励ましたんだ。ドラムについては普段よりもよく話し合ったし、実際彼はすばらしいドラマーだからね。今回のアルバムはオーリーのドラムとゲオルグのベースが全体を引っ張っていると思うよ」
――ちなみに2曲目「プラムティナ」にはガラスのような音色のパーカッションが使われていますが、これはどのような楽器を使っているのでしょう?
「あれはゴングだよ。バリのガムランでよく使われる感じのもので、12の音階が付いていてそれを鳴らしているんだ。ゴング自体は以前にも使ったことがあったけど、ああいうふうに音階が付いたものを演奏したのは初めてだったね」
――なるほど。ヘヴィなサウンドの中にフラジャイルなサウンドが鳴っているというコントラストがとても美しいと思いました。
「おお、それはありがとう(笑)」
――あと4曲目の「イーヴィルボルズ」で四つ打ちのビートがフィーチャーされているのにビックリしました。
「うん、自分たちでもこれは結構イッちゃってる曲だよなって思うよ(笑)」
――ダンス・ミュージックやエレクトロニカといった音楽には興味がありますか?
「じつはステージに上がる前にディプロやメジャー・レイザーといった歪んだ感じの激しいダンス・ミュージックをよく聴いているんだ。だから、そういうところからの影響はあるかも」
――意外ですね! ところで、サウンドがヘヴィになった一方で、あなたの歌うメロディにはこれまでの作品よりもある種の“ポップさ”が感じられました。とくに3曲目「イースヤキ」や8曲目「ブラゥスラウズゥル」といった曲ではメロディの美しさが際立っているように思います。こうした感覚はどのように生まれたのですか?
「たしかに8曲目はポップだし、3曲目に関してもアップ・ビートでポップなんだけれど、ちょっと風変わりなヨレた感じのストリングスを入れているんだ。だから、そういうポップな要素と少しヘンなものとを混ぜるっていうことに興味があったんだよ」
――なるほど。そうしたさまざまなアイディアが反映された新作を聴くと、これまでのファンもきっと驚くのではないかと思います。現在世界ツアー中で、すでにニュー・アルバムから何曲かプレイしているようですが、今のところ新曲に対するオーディエンスの反応はいかがですか?
「うん、手ごたえは感じるよ。でもまだアルバムが出ていないから驚いている人も多いみたいだね。アルバムが発表されたらもっと反応が良くなるんじゃないかな。明日の武道館のライヴも楽しみだよ。ロックのライヴでは伝説的な場所だからね」
――あそこは元々柔道とか空手などの武道をおこなう場所なんですよ。
「そうだね。だから今回の攻撃的なアルバムにはピッタリなんじゃないかな(笑)」
取材・文 / 佐藤一道 (CDジャーナル2013年7月号より転載)












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