- 超絶技巧トリオの痛快なデビュー・アルバム
一聴するとハイトーン・ヴォイスが魅力的なエレクトロ・ポップ、2度目にはジャズ / フュージョン的なアレンジに気づき、3度目にはテクニカルな演奏に舌を巻く。そんな一粒で何度も美味しいデビュー作をリリースしたダーティ・ループスは、スウェーデン発の新世代のポップ・トリオ。名門レーベルのヴァーヴが時間をかけて口説き落とした大型新人だ。
ダーティ・ループスはジョナ(vo、key)、アーロン(ds)、ヘンリック(b)の3人組で、ヨーロッパ最古の音楽学校、王立ソードラ・ラテン音楽学校で知り合っている。1歳の頃から聖歌隊に所属していたジョナ、幼少期から音楽の英才教育を受けたヘンリック、ジェフ・ポーカロに触発されてドラムを始め、音楽学校で優れた成績を残したアーロン。三者三様のエリートたちがバンドを結成した経緯についてヘンリックが答える。
「僕らは昔から友達で目指す方向性も似ていた。最初に3人で音を出したときに、続けていくべきだっていう運命を感じたよ」
彼らが初めて一緒に演奏したのは、ジャズのスタンダードではなく、リアーナのヒット曲「ドント・ストップ・ザ・ミュージック」のカヴァーだったという。その後もさまざまなカヴァーに挑戦するが、彼らのアレンジはエレクトロ・ポップにジャズ / フュージョンのテクニカルな演奏をぶつけるという、独自のバランス感が印象に残る。
「リアーナの曲は流行っていたから、どんなアレンジにしてもメロディさえ聴けば曲がわかったんだ。それに僕はエレクトロ系のアーティストのプロデュースもしているから、生演奏のダイナミズムに加えて、エレクトロニクスの要素も入れたかったんだ」(ジョナ)
そんな彼らの人気に火が付いたきっかけはYouTube。

「カヴァーした曲をYouTubeに投稿したら数人くらいは観てくれると思っていた」とヘンリックは言うが、現在のヴューワー数は150万を超える。そんな彼らの1st作『ダーティ・ループス』はオリジナル曲を収録しているが、それまでカヴァー以外のものを作ろうと思ったことはなかったようだ。そのため本作は、ポップス界の大御所アンドレアス・カールソンをアドバイザーに迎え、彼ららしいポップさを追求したという。
「曲を書き始めた当初は味気ないアレンジになってしまったけど、アンドレアスの意見を聞きながら、テクニックを詰め込んだり、印象的なコードを加えながら“遊び”を増やしたりしたよ。もちろんシンプルでメロディが良い曲が前提にはあるけどね」(ヘンリック)
彼ら自身「自分たちの持てる演奏技術はすべて詰め込んだ」
と語る本作。
そうはいっても技巧のみに陥らず、それをキャッチーに聴かせる“ポップな感覚”が彼らの持ち味だろう。超絶技巧を駆使しながらも、一般層にもアピールするストレートな表現を追求するダーティ・ループス、その音楽はじつに痛快だ。
取材・文 伊藤大輔 (CDJournal 2014年6月号より転載 )