2015/6/12掲載
■結成20周年を迎え、なお一線を走り続けるポスト・ロックの先駆者MOGWAIインタビュー
結成20周年を迎えた英国北部スコットランドのグラスゴー出身のモグワイ。リリカルな轟音ギターが核になったインスト主体のポスト・ロックの先駆者であり、ブレない姿勢だからこそ支持が厚く後進に絶大な影響を与え続けているバンドだ。威風堂々のライヴ・パフォーマンスで圧倒した今年3月の東京公演の5時間前に、リーダーのスチュアート・ブレイスウェイト(g)と、98年加入のバリー・バーンズ(g、key、flなど)に訊いた。
なぜポスト・ロックと呼ばれるんだろうという違和感
――記念ライヴも6月にやりますから結成20周年ということを特別なものと思っているように感じますが、実際はどうですか?
■スチュアート「実感はないけど“19”よりは大きい数字だね(笑)。通過地点ではあるけど達成感みたいなのはあるかな。一つのランドマークを越えた記念みたいな感じだよ」
――それ以前にもバンドをやっていたから、モグワイはべつな意識で始めたとも思われますが、最初から遊びでなく真剣に取り組み、長く続ける気持ちでした?
■スチュアート「当時はそんなに先のことまで考えられなかった。十代の頃ってまだ経験も浅くて、時間に対する感覚が大人と違ってそんなに先のことまで考えられないから、長く続けようという意識はなかったな。でも19歳なりに音楽への取り組みは真剣だった」
――今は音楽で生活していると思いますが、その目途が立ったのはいつ頃ですか?
■スチュアート「モグワイでは最初の頃からそれなりにちゃんとお金が入ってきていたから、周りの人が思っている以上に自分たちとしては“これでやっていけるな”と感じていた。最初のうちは地元のパブとかで演奏していたんだけど、97年にペイヴメントとロンドンのアストリアでライヴをやった時に“これでやっていけるかも”という確信ができたね」
――基本的に音楽性が変わっていないと思いますが、ターニング・ポイントになったアルバムを挙げるとすればどのへんになります?
■スチュアート「(即答で)ファースト・アルバム『モグワイ・ヤング・チーム』(97年)がターニング・ポイントだね。みんなに気に入ってもらえたから(笑)」
――それはファーストの時点ですでにモグワイならではのサウンドが確立していたことを示していると思います。今までのバンドにはないサウンドゆえにメディアはモグワイの音楽性をポスト・ロックと呼びますが、そのことに関してはどう思っていますか?
■スチュアート「もともとポスト・ロックという言葉は雑誌『WIRE』のジャーナリストが90年代の半ばに作ったと思う。そのあとからけっこう特定のバンドを、トータスやゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーあたりのバンドだけど、形容するのに使われて、なぜ自分たちもそう呼ばれているんだろうなという違和感はたしかにあったね。初めて僕がポスト・ロックっていう言葉を聞いたのが、イギリスの(BBCの名物DJだった)ジョン・ピールのラジオで、僕のお気に入りのバンドのスターズ・オブ・ザ・リッドを紹介する時だったのは覚えているよ」
活動の長いバンドにはおのおのその理由がある
――セカンドからバリーが加入しましたが、基本的にメンバー・チェンジなしで20年続いているレアなバンドですね。その秘訣は?
■スチュアート「組織化されていないからね(笑)」
■バリー「刑務所と一緒。牢屋に20年入っているとシャバに出ても何をしたらいいのかわからないから、結局警官を殴ってまた戻りたくなるようなもんで、抜け出せなくなる。いろいろな場所に行けるし、楽しいからやっているよ」
――一人のエゴイストがいるとバンドはなかなか続かず、続いてもメンバーは変わるものですが、モグワイは個々のメンバーにエゴがなく調和しているからメンバー・チェンジもなく続いていると、音楽を聴いても思います。
■スチュアート「相手に対して“俺の方が偉いんだ”みたいな気持ちは、みんな全然持ってないね」
■バリー「だからビートルズほど売れていないのかもしれない(笑)」
――ビートルズほどは売れていないにしても人気はキープしているじゃないですか。ほかのアーティストと同じくCDなどの売り上げは落ちているのかもしれませんが、ライヴのお客さんは日本でもいっぱいですし。やはり誠実にやり続けているからだと思いますよ。
■スチュアート「自分たちがトレンドと逆のところにいてイケてないところが功を奏しているのかなと思う。“あ、こういうのがあるんだ”という感じで、みんな発見して来てくれているのがラッキーだね」
■バリー「長く活動を続けているバンドは、おのおのその理由があると思う」
■スチュアート「キム・ゴードン(元ソニック・ユース)が最近自伝を出したじゃないか。その中に彼女らしい辛辣な表現があって、メンバーそれぞれ自分の現実の家族を置いてバンドで活動していくから、自然とメンバー同士が自分の家族になり、そうすると相手がどんな人間だろうと我慢しなければいけないということが書いてあったね」
――ところで今スチュアートが『スター・ウォーズ』のTシャツを着ているので訊きたいのですが、好きな映画を教えてください。
■スチュアート「『エクソシスト』はすぐ思いつくんだけど、ほかにも何かあったはずだな。『スター・ウォーズ』は『帝国の逆襲』がいちばん面白いよね。あとトッド・ソロンズ監督の『ハピネス』がすごく好きだ」
――大メジャーな映画の名前も挙げていますね。タルコフスキーやゴダールあたりのアートな映画が好きなのかと思っていました。
■バリー「もちろんアートな映画も好きだけど、ツアー中飛行機に乗っている時間も多く、そこでピンからキリまで観るから何でも楽しめるよ。観つくしてしまうぐらいだから(笑)」
――モグワイは政治的なメッセージを打ち出していないですが、そういう問題に関わっているバンドですよね。現在英国に属するスコットランド地方の独立についての考え方について語ってもらえますか。
■スチュアート「(独立のぜひを問う昨年9月の住民投票には)ものすごく期待したし、スコットランドにいて興奮したけど、残念な結果に終わってしまった。失望した。でも、それまで政治に興味を持てなかった人も政治に興味を持つようになったおかげで政治家も皮相なことが言えなくなったから、スコットランドは一変したね
――最後に今後の予定を教えてください。
■スチュアート「モグワイの結成20周年コンピレーション作品と、フランスのテレビ・ドラマ『レ・ルヴナン』の第2シーズンのサントラを出す。あと原子力や戦争などに関するアーカイヴ映像を集めた映画のサントラを手がけていて、日本に原爆が投下されてから70年になる今年夏に発表する予定だ。それからあとはしばらく休みを取ろうかと思っているよ」
取材・文 行川和彦 Photo by Kazumichi Kokei CDジャーナル 2015年6月号掲載












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