2015/10/2掲載
古い革袋にとびっきり新鮮なワインを注いだら、極上な味わいのソウル&ロックンロールが生まれた。ヴィンテージ・トラブルのセカンド・アルバム『華麗なるトラブル』は、魂と腰骨に訴えかける本能的な作品だ。ジャズの名門“ブルーノート”レーベルと契約、ローリング・ストーンズやボブ・ディランなどを手がけてきたドン・ウォズをプロデューサーに迎えたこのアルバムを引っ提げて、彼らは本格的な世界侵攻を図る。
日本も彼らのターゲットのひとつだ。プロモーション来日した彼らに新作、その原点、そして向かっていく先について語ってもらった。
■ドン・ウォズはバンドのベストを魔法のように引き出す
――『ボム・シェルター・セッションズ』を2011年に発表してから、あなたたちを取り巻く環境はどのように変化しましたか?
■タイ・テイラー(vo)「すべてが一変したよ。『ボム・シェルター・セッションズ』はまるでボム・シェルター(防空壕)に隠れているように、スタジオに籠って作ったアルバムだった。それからワールド・ツアーで地球を2~3周して、世界のあらゆる国でプレイして……とにかくすごい変化だった」
■ナリー・コルト(g)「ただ、何も変わっていないとも言えるんだ。ほぼ毎晩ライヴをやるという生活はまるで同じだからね。『華麗なるトラブル』には、初期からライヴで演ってきた曲もある。ただ、プロデューサーのドン・ウォズがアレンジに関してアイディアを出してくれて、かなり変化した曲もあるけど」
■リチャード・ダニエルソン(ds)「音楽で食っていけるようになったのは、大きな変化だよ。それでもヴィンテージ・トラブルの音楽は同じだ。ブルーノートと契約したのは最高の気分だけど、それに合わせて音楽性を変えたりしないし、レーベルからの干渉もなかった。『ボム・シェルター・セッションズ』で俺たちを気に入ったファンだったら、きっと『華麗なるトラブル』も好きになると思うよ」
――ほぼノンストップで世界をツアーしてきて、いつ、どのようにして曲を書いたのですか?
■タイ「あらゆる機会を逃さず、曲のアイディアを書きためてきたんだ。ツアー中、サウンド・チェックの時に書いた曲もあるし、ちょっとしたオフの時にも書いたりした。それぞれの曲をどんな状況で書いたか、だいたい覚えているよ。だからこのアルバムは俺たちの4年間の人生の経験を集めたスクラップブックでもあるんだ」
■リック・バリオ・ディル(b)「ベストな曲は“さあ、曲を書くぞ!”と意気込んで書いたものよりも、ショウを終えてホテルの部屋でふと浮かんだものや、シャワー中に何気なく口ずさんだりしたものが多いんだ。iPodに録音したそんな断片を全員で持ち寄り、ドンと一緒に聴いて、曲の形に仕上げていったんだよ」
■タイ「ドンはベーシストとしてもプロデューサーとしても経験が豊富で、頼りになる人だった。彼は自分の考えを押しつけることがなく、一歩後ろに退いて、バンドのベストな部分を魔法のように引き出す。さりげなく“ちょっとこういう風にやってみようか”とか提案して、実際にやってみると曲が一変するんだ。驚きの連続だったよ。ドンの仕事で俺がいちばん好きなのは、ボニー・レイットの『ニック・オブ・タイム』なんだ。けっしてコマーシャルではないブルースのアルバムを妥協することなく大ヒットさせた手腕は、尊敬に値するよ」
■自分たちの音楽は“プリミティヴ・ソウル”かな
――『1 Hopeful Rd.』(アルバムの原題)は、実在する通りなのですか? シカゴのチェス・スタジオがある“2120 サウス・ミシガン・アヴェニュー”やボブ・マーリーの邸宅だったキングストンの“56 ホープ・ロード”を思い出すタイトルですね。
■タイ「もともとは〈ラン・ライク・ザ・リヴァー〉の歌詞だったんだ。“ママが見せてくれた、ある希望に満ちた通り”っていう一節だった。それを通りの名前にしたら面白いと思った。歌詞を書いた時点で“ホープフル・ロード”は架空の通りだったんだけど、インターネットで検索したら、アラバマ州に実在することがわかったんだ。その1番地にある家を調べてもらっているところだ。直接行ったこともないし、まだ現実的な話じゃないけど、その場所で何かできたら面白いだろ?」
――ヴィンテージ・トラブルは20世紀のソウルやロックンロールを現代に蘇らせたバンドと呼ばれますが、具体的にはどんなアーティストから影響を受けたのでしょうか?
■タイ「アイク&ティナ・ターナー、リトル・リチャード、ブッカー・T.ジョーンズ、ローリング・ストーンズ、それからスタックスやモータウンのアーティスト全部かな。最近のアーティストでは、エイミー・ワインハウスがオールドスクールな音楽に新しい生命を吹き込んでいた。『ボム・シェルター・セッションズ』を作ったとき、彼女はまだ生きていたんだ。ゲイリー・クラークJr.もソウルやブルースにモダンな解釈を加えているし、人々はつねにソウルフルで生々しいライヴ・フィーリングのある音楽を求めているんだよ。AC/DCもそんなバンドのひとつだ。彼らとヨーロッパ・ツアーを一緒にやったけど、毎晩数万人の観衆が彼らの演奏にクレイジーになるのは、壮観だった」
――「ハニー・デュー」はオーティス・レディングの「愛しすぎて」に通じるスタックス風ソウル・バラードですね。
■リック「この曲は数年前、〈ストライク・ユア・ライト〉と同じ頃に書いたけど、発表するタイミングがなかった。『華麗なるトラブル』用にたくさん曲を書いたけど、ほかの曲を押しのけてアルバムに収録されたということは、良い曲だったんだと思うよ」
――「ストライク・ユア・ライト」について教えてください。
■タイ「すごくシンプルでエキサイティングなソウル&ロックンロールだ。カミラ・マーシャルが最高のヴォーカルを聴かせている。この曲は『ボム・シェルター・セッションズ』の頃に書いて、ライヴで連日プレイして熟成させたんだ。この曲を演奏すると毎晩ダンス・パーティになるし、ヴィンテージ・トラブルの必殺ナンバーのひとつだよ」
――タイがニュージャージー、ナリーがスウェーデン、リックがフロリダ、リチャードがカリフォルニアと、出身地がバラバラですが、“シカゴ・ブルース”や“メンフィス・ソウル”のように自分たちの音楽を形容するとしたら、どう呼ぶでしょうか?
■ナリー「“プリミティヴ・ソウル”かな(笑)。ヴィンテージ・トラブルの音楽は地域やジャンル以前の人類の感情の原点に立ち返る、本能的な音楽なんだ。コンピュータやインターネットが普及した現代だからこそ、俺たちの生身の音楽が支持されるんじゃないかな」
取材・文 山崎智之 2015年10月号掲載












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