2016/8/1掲載
■果てしないワガママのために――異能女性音楽集団の5作目
キノコホテルといえば、歌謡曲の色気を放つ女性ガレージ・ロック・バンドという、かつてのイメージを抱く人もいるかもしれない。しかしニュー・アルバム『マリアンヌの革命』を聴けば、歌謡曲もガレージも、もはや彼女たちの一要素でしかないことがわかるだろう。今年創業9年を迎えるキノコホテルの支配人、マリアンヌ東雲(ヴォーカル&電子オルガン)は、その音楽性の変化についてこう語る。
■マリアンヌ東雲「“特定のジャンルで語られたくないわ”って、2、3枚目のアルバムを出したころに強く感じたのね。作品をどう判断するかはみなさんの自由だけど、何か言われたら、そこを打ち破ってギャフンと言わせたいという思いが、わたくしの人間の根っこにあるので。新譜を出す以上は新たな試みを打ち出しながら、少しずつ領土を拡げていきたいと思うんです」
今作の中でとくに異彩を放っているのが、ワンコードでセッションを繰り広げる曲。たとえば、クラウト・ロックの影響を感じさせる「赤ノ牢獄」は、ベースが気怠いリフを延々と繰り返し、そのうえでギター・ソロや儚げなコーラスが消えたり現れたりして、なんとも妖しい情景を描く。この曲は、マリアンヌのお気に入りだったSMバーが閉店してしまうことになり、そこですごした心地いい時間を残すべく生まれたという
■マリアンヌ東雲「「今のメンバーになって、ここ数年のうちに4人でセッションしながらお遊び感覚で曲を作ることもできるようになって。〈赤ノ牢獄〉はそこからさらに一歩踏み込んで作った曲です。ただ、新しい試みも、やりすぎるとキノコホテルの音ではなくなってしまうので、さじかげんが難しいところ。何も考えずに作れば、もっとポップにもアヴァンギャルドにも転べるけれど、聴いた瞬間にキノコホテルだってわかる音じゃなきゃダメ。そのバランスを、頭の中のセンサーで自分でも気づかないうちにジャッジしている感じね」
基本的にキノコホテルの従業員(メンバー)は、マリアンヌの頭に降ってきた音像をかたちにするのが勤め。しかしセッションの導入をはじめ、ここ最近はバンドであることの意味も大きくなってきたという。
■マリアンヌ東雲「バンドとして動いている以上、3人を信用して、委ねる部分もないと。やらされ仕事じゃ続かないですからね。文句も言わずについてきてくれる3人のことを考えると、みんなのモチベーションを自分が引き上げていかなきゃと思うし。こんな思考ができるようになったのねって自分でも思うけど。とりあえず彼女たちには、勝手に妊娠はするなとだけは言ってあります(笑)」
バンドの状況について、まだもどかしさを感じるというマリアンヌ。「愛はゲバゲバ」という曲に、“あなたに向かって優雅に微笑む 私で居る為に / 投資しなさいよ”という強烈なフレーズがあるが、欲しいものは欲しいと言う姿勢が潔く美しい。
■マリアンヌ東雲「たとえば、売れるっていうのはすごく大事なことよね。それでいい暮らしをしたいというよりも、売れれば好きなことができるし、言うことを聞いてもらえるでしょう。そもそもワガママでいられなきゃ、キノコホテルの存在意義なんてないし。果てしないワガママのために、理想っていうものにはまだまだほど遠いと思っています」
取材・文 廿楽玲子 CDジャーナル 2016年8月号掲載












![[Della]が贈る癒しの音楽の世界。](https://image.books.rakuten.co.jp/books/img/bnr/event/cd/easy-listening-music/relaxation/20221101-165x100.jpg)

































