2016/9/6掲載
■これってほんとにKIRINJI?まさしく“ネオ”な新作
これがKIRINJI?新作を聴きながら思わず耳を疑ってしまった。前作『11』で新編成になり、バンド名が“キリンジ”から“KIRINJI”へと変化した彼ら。でも、『11』がプロローグにすぎなかったようなフレッシュなサウンドに驚かされる新作『ネオ』について、堀込高樹(ヴォーカル, ギター)、コトリンゴ(キーボード, ヴォーカル)、楠均(ドラム, ヴォーカル)の3人に話を訊いた。
■キリンジと地続きに聞こえる曲は省いていった
――アルバムを聴いてびっくりしました。前作以上の変化ですよね。
■堀込「『11』はこれまでのキリンジと新しいKIRINJIが半分半分、というイメージが自分にあって。聴き直したとき、少し古くさく感じたんですよ。それは自分の気持ちの問題なのか、世の中の音と聴き比べてそう思ったのかはわかりませんけど。それで今回は思い切って新しいことをしないとマズいと思ったんです。そこでメンバーの皆さんに曲を書いてもらったり、候補曲の中から過去のキリンジと地続きのように聞こえる曲は省いていったんです」
――メンバーの曲が2曲採用されていますが、そのうち1曲がコトリンゴさんの「日々是観光」です。これはKIRINJIを意識して書いた曲なんですか?
■コトリンゴ「そういうわけでもないんですけど、自分らしい曲とそうでない曲の2曲を提出したんです。選ばれるとしたらそうでないほうかと思ってたら、自分らしい曲のほうが選ばれてびっくりしました。サビはちょっと指導が入ったんですけど(笑)」
■堀込「指導というか(笑)。盛り上がりたいところでメロディが下降していくから、もったいないなと思って」
――アレンジは堀込さんと話し合いながら?
■堀込「そのへんのプロデュースはコトリさんがやってます」
■コトリンゴ「メンバーがたくさんいるので楽器がいっぱい入った豪華な曲にしたいなって。“ドリーミーすぎる”と言われたらやめようと思いながら、最後に黙って音を足したりしました(笑)」
■堀込「全然大丈夫でしたよ」
――ベースの千ヶ崎(学)さんも1曲提供して、初めてヴォーカルも担当されてますね。
■堀込「彼はじつはすごく綺麗な声を持ってて。でも、うまく歌おうっていう欲がないから、すっと入ってくるんですよね。だから、彼の“私、じつは脱いだらスゴいんです”っていうところを見てもらおうと思ったんです(笑)。あと、こういうワンループの曲って、これまでKIRINJIになかったからやってみようかと」
――前作以上にメンバーのカラーを出しているんですね。
■堀込「せっかく多彩なメンバーがいるから、それぞれの個性が出ないと意味がないと思ってて。“KIRINJIっぽい曲”って僕にもぼんやりしたイメージはあるし聴く人にもあると思うんですけど、それにとらわれてアルバムを作ると、どんどん可能性を閉じていくだけですから」
――そういった点では、ライムスターをフィーチャーしたオープニング曲「The Great Journey」でまず驚かされます。
■堀込「この曲は去年のワンマンで演奏していたんですけど、どんなふうに仕上げるかはノー・プランだったんです。グルーヴ命の曲だから、どんなヴォーカルを乗せるかいろいろ考えたんですけど、歌ものにするとダサくなりそうな気がして。それでラップを、と思ったんです。ウタさん(ライムスター宇多丸)とは交流があって、彼らはKIRINJIを聴いてくれていたし、声の存在感もあるのでお願いしようと思いました」
――初めてラップをのせてみて発見はありました?
■堀込「面白かったですね、なんか自分の曲じゃないみたいで。やっぱり、歌があると情緒的になっちゃうんですよ、自分の声とかメロディとかって。でも、そういうことよりグルーヴだったり、熱量だったりを伝えたいと思うと歌は邪魔なんですよね。“そういうときはラップを乗っけりゃいいんだ”って今頃気づきました(笑)」
■前作以上に踏み出せた
――続く「Mr.BOOGIEMAN」もダンサンブルな曲ですね。ギターの弓木(英梨乃)さんのガーリーな歌声がハマってて、この曲も新鮮でした。
■堀込「マイケル・ジャクソンの〈オフ・ザ・ウォール〉とかマーク・ロンソンみたいなダンスっぽい曲を作ろうと思ったんです。でも、自分で仮歌を入れてみると当時の(80年代っぽい)曲に聞こえちゃうんですよ、AOR声なので(笑)。それだと古色蒼然とした曲になってしまうので、もっと楽しい感じにするために女性に歌ってもらおうと思ったら弓木さんから“歌いたいです!”って強烈な自薦があって(笑)。それでお願いしたんですけど、そこにコトリさんのコーラスが入ると声質が違うから面白いんですよね」
■楠
「この曲は高樹君に“リンドラムみたいに叩いて”って言われて苦労したんですよ。僕の中でリンドラムってプリンスの打ち込みくらいしか記憶になくて、どうしようかなって」
――やはり、曲の屋台骨になるビートに関しては堀込さんと綿密に打ち合わせをするんですか?
■楠「打ち合わせをしても、叩く人のノリはどうしても出ちゃいますからね。それを拒絶する人もいるけど高樹君は受け入れるほうだと思います。すごく厳しいことを言うところもあればユルいところもある(笑)」
――KIRINJIは個性的なプレイヤーの集まりなので、セッションしていく過程で曲が大きく変化したりもするんでしょうか。
■堀込「曲の骨格は同じなんですけど、大きく変わることはありますね。千ヶ崎君とかは結構アイディアを出してくれるし、田村(玄一)さんに関してはどんなふうにやるかは基本的にお任せなんです」
――今回、目立ったソロ・プレイはないんですけど、田村さんのスティールがサウンドの隠し味になってますよね。
■堀込「そうなんですよ。たとえば 〈あの娘のバースデイ〉のアンビエントな感じとかもそうだし、〈fake it〉ではメロトロンとペダル・スティールがユニゾンするだけで不思議な音響が出来上がるんですよね」
――サウンド面でいうとミックスも新鮮でした。いつもよりパキッとしてて。
■堀込
「今回は、パソコンでも、コンビニで聴いても、ちゃんと曲の良さが伝わるような今の音のミックスにしようと思ったんです。70~80年代前半くらいの感じのミックスでKIRINJIの曲をやると懐古趣味っぽく聞こえてきちゃうんですよ。でも、〈Mr.BOOGIEMAN〉があがってきたときは抵抗があって悩みました。やっぱり、やめようかって。そして、そこで気がつくわけですよ。普段、自分がCDを買って聴いてるときはカッコいいって思ってる音なのに、なんで自分の曲だと抵抗があるんだろう?って。それはやっぱり、自分の癖とか経験みたいなものにとらわれてるから一歩踏み出せないんだって。それで決心がついたんです」
――アルバムの5曲目までヴォーカルは次々と変わっていくし、曲の雰囲気も違う。そんなめくるめく展開のなかでサウンドも一新されて、まさに“ネオ”なアルバムですね。
■堀込
「曲そのものは以前とそんなに大きく変わらないんですけど、歌う人によってそこで表現されるものがぜんぜん違ってくることが再確認できたし、サウンドも含めて前作以上に踏み出せたと思います。ジャケットは具体的なイメージを連想させないように抽象的なものにしたので、ジャケを見ながら聴いてもらえると“なんだろう?これ。ほんとにKIRINJI?“っていう感じも増すんじゃないでしょうか(笑)」
取材・文 村尾泰郎 CDジャーナル 2016年9月号掲載












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