
Yogee New Waves、3枚目のフル・アルバム『BLUEHARLEM』が3月20日にリリースになる。日本のロック史の失われた文脈を継ぐような、詩情と愛と祈りと音楽の魔法に充ちた、このアルバムは掛け値無しの大傑作である。『PARAISO』、『WAVES』、そして『BLUEHARLEM』と連なる「島三部作」はどのように生み出されたのか、彼らの向かう旅路の未来はどこにあるのか。「始まり」と「終わり」を描いたこの作品の正体を4人に確かめた。
粕谷 いろんな意味で「抜ける」って感覚が強いです。力が抜ける、感覚の解放、解脱……仕事の合間での「抜き」みたいなのもそうかも(笑)。
上野 いやー、僕は今回のアルバムはマジで何話していいのかわからないですね。まだ全然つかめてないんですよ。いいものができたって感覚はあったんだけど、まだ上を目指せるって感じもするし。「これはなんなんだろう?」って思ってますね。
角舘 乱暴にいうなら『PARAISO』はクソガキの妄想話で、『WAVES』は青年の葛藤。このアルバムは大人になった僕らの本音みたいな感じですね。やっぱり、俺は自分のことしか歌えないなって思って。周りのことを気にしてても、結局は今回も自分のことだったって思ってます。
角舘 島っていうのは、人の営みが行われている場所ってことなんですよ。でも、島ってやっぱり狭いから、そこから出たくなる。っていうか出なければいけない場所だって気づく日が誰しもくる。それに気がついても、そこに留まる人もいるけれど、俺は比喩としても直喩としても、今いる場所=島から出たかったんです。もう少しわかりやすくいうとYogee New Wavesは『PARAISO』のような音楽性をずっと続けることもできたと思うんです。「Climax Night」の次に、みんなが聴きたいものってこれでしょってのも何となくわかってた。それを作ろうと思えば作れたけど、やっぱりその外側に行きたかったんです。これまで三つの島を旅してきて、今度はどこに行くのだろうっていう意味での完結作ですね。
角舘 さっき、粕ちゃんが「抜き」って言ってたけど、抜いたところには何かが必ず埋まるんです。そういう風にして人間の営みって循環してるんだと思う。だって、風が海から生まれて、また海に還っていくのも、人が生まれて死ぬのも結局は同じことで。だからこそ成長だったりとか、展望が見えない状態で同じところにとどまっているのは、どう考えても自然の摂理に反してる。だから一つの事象を終わりにして、また喪失した部分を埋めるための新しい何かを求めようってことを描いたアルバムだと思います。
竹村 このアルバムって実はまさに循環してると思うんですよ。1曲目の「blueharlem」って歌詞をよく読むと実は最後の「SUNKEN SHIPS」で島の外に出た後の歌なんだよね。2曲目以降の楽曲は実は過去の話で。もうすでに僕らは、この島の外に抜け出していて、新しいところにいるんですよ。曲順はレーベル・オーナーと相談して決めたんですけど、作った時点では実はそういうことは意図してなくて。スピリチュアルな話になりますけど、こういう構成になったのは健悟が意識の深いところで描いていた何かが表出した結果なのかなって。
角舘 それは、そうかもね。偶然が呼んだ奇跡というか。
竹村 Yogeeに加入して思ったんですけど健悟はきっと音楽を通して、人間の中の宇宙みたいなものに触れようとしている感じがある。人の心を捉えようとしているというよりは、人類が心に共有している世界そのものを音楽で探している感じがしますね。
粕谷 あぁ、何となくわかるな。
角舘
実はこのアルバムの制作前に、メンバー4人とも旅行してきたんですよ。僕はメキシコのハニツィオ島(編注:メキシコの祝日「死者の日」の名所でもある昔ながらの生活の面影を残す島。別名・魔法の島)っていうところに行ってきたんですけど。その旅ではずっと死んだじいちゃんの牛革のシャツを着てて。で、ぼんやり島で景色を眺めてた時に「じいちゃんも、この景色を今、俺と一緒に見てるはずだ」って、奇妙なテレパシーみたいなものを感じて。
俺、生まれてから今までどこかずっと自分のことを信用できてなかったんですけど、そこで初めて「そろそろ自分のこと愛してもいいのかな」って思えて。それ以降、余計な憑き物がどんどん取れていって、もっとシンプルに自分の心の奥底を覗き込もうみたいなモードになれたんですよね。
上野 やっぱりメンバーでも話してますけど、海外ですよね。でも、さっきも言ったように世界に出ていくためにはあっちのフィーリングとかノリをただ真似するってことじゃなくて、今の時代の俺らが鳴らす音楽っていうものをしっかり突き詰めていかなきゃいけないと思うんですよね。ただ、それって東京で普通に暮らしてたら、結構わからないことも多いから……外に出て行って実際に体感するしかないんだろうなとは思ってます。
竹村 俺は次が全然見えてなくて。また次のアルバムなりシングルなりを作るってなった時に鳴らす一音目でわかるような気がしてるっていうか。もちろんバンドとして、Yogeeの持ってるダブ要素とか心地よいリズムとか東京っぽさみたいな部分を刀にしようって話はメンバーやスタッフとも話すんだけど、現実問題として音出してみないとわかんないからね(笑)。まだ、俺ら自身、このアルバムを咀嚼できてないし、ライブでやってみて、それからかなって気はしてる。でも、「明日、雨降るんじゃない?」ぐらいの感覚で絶対に見えるって確信はありますね。
粕谷 毎回そうだけどさ、気がついたらどこかにいるんだよ。で、そこにいるときは自分がどこにいるのかあんまりわかってないの。今回もレコーディング終わったその瞬間に「島、終わったわ」って気づいたから。そういう感じで、また気づいたら何かに夢中になってるんだと思う。どこにいくかなんて目指す必要はなくて、自然と面白い方に舵をとったらどこかにたどり着いてるんじゃないかな。
角舘 そうだなー。結局のところ、やっぱり俺は「愛」しか歌わなくなるんじゃないかな。作品に関していえば、もっとわかりやすくて、はっきりとしていて、愛をテーマに深掘りしていくようなものを作りたいと思ってますね。エディット・ピアフの「愛の讃歌」みたいな曲が今、結構書けてて。超雑にいうと、次のアルバムは「結婚しようよ」みたいなプロポーズ的な感じかもね。実際、さらっと結婚しちゃったりして(笑)。
粕谷 すごい締めだな。そんな感じらしいですわ(笑)。
