
雅楽を基調としながら様々なジャンルの要素を採り入れ、かつてない音楽を作り続ける東儀秀樹さん。アルバム『ヒチリキ・ラプソディ』は令和にちなんだ曲から始まり、デビュー時に制作した曲で終わるという、まさに“ときを駆ける”1枚です。誰も足跡をつけていない道を歩み続ける東儀さんに、音楽に対する想いを伺いました。
デビューして以来、アルバムのテーマやコンセプトを考えたことがないんです。テーマを絞ってものを作ると、自由度がなくなってしまうことがもったいなくて。同じ時期に自然な流れでひらめくものは、何かしらリンクしている気がします。
ただ今回のアルバムの制作中、日本中が躍動感を持って、令和という新しい時代を迎えました。僕もワクワクした1人です。ここ数年はカバー曲が多かったのですが、せっかく新時代を迎えたこともあり、今回はオリジナルを中心にした“THE・東儀秀樹”な1枚にしようと思いました。
僕は今年、還暦を迎えます。「還暦」は人生が一周して、振り出しに戻るという言われ方もしています。奇しくも令和元年に還暦を迎えるということは、初心に戻るタイミングが来たのだと感じました。
ちょっと“乗っかっちゃってる感”がありますけど(笑)、それはそれでいいと思っているんです。逆になぜ、今までこのタイトルにしなかったのだろうと感じるくらい。ラプソディを訳すと「狂詩曲」で、民族的なものを含む意味合いもあります。雅楽の楽器を使う僕には、ぴったりだと思いました。
もともとクイーンが大好きで、『ボヘミアン・ラプソディ』のカバーをこのアルバムに収録しています。そこでふと「そういえば“ラプソディ”って、素敵な言葉だな」と感じ、タイトルにしようとなりました。
制作しながら、「また曲ができちゃった、じゃあ入れよう」という形で増えていきました。僕はアルバム制作も生き方も、計画性がないんです(笑)。そのときひらめくものは、紛れもなくそのときの自分。特に僕は、音楽を作る上で無理を全くしません。「作りたくないものを、我慢して作る」ことをしないんです。非常に恵まれた環境にいるので、ジレンマやフラストレーションのないものができあがっています。
幼いころ海外に住んでいて、幼稚園のときにビートルズを好きになったんです。友達とよく「リンゴ(・スター)が好き」「ジョン(・レノン)派だ」なんて話していて。僕は圧倒的にポール・マッカートニー派だったんですけどね。一方で父親はベートーベンが大好きで、家ではクラシックをよく聴いていたし、母親はミュージカル曲や映画音楽、童謡などを歌ってくれました。
音楽教育はひとつも受けていません。ただ物心がついたときから、「音楽の才能がある」と自覚はしていました。例えば父親がハーモニカを買ってきたとき、幼い僕はいきなりベートーベンの第九を間違えずに吹いたんだそうです。自分では、覚えていないんですけどね。そのあとにも「音楽的に特殊なものを持っているな」と自覚する状況が何度もありましたが、僕自身の夢はプロゴルファーや漫画家でした。
中学に入ると友人の影響でロックを聴くようになり、高校生でやっと「ロックやポップ方面のミュージシャンになりたい」と思ったんです。それまで音楽家になろうとは、全く思っていませんでした。
実は、算数が苦手です。数学じゃなくて「算数」。今でも暗算レベルの計算を、指で数えてやっています(笑)。
もし僕が小さなころから雅楽をやっていたら、今の自分はいなかったことでしょう。雅楽は普通、小学生で始めます。でも僕は、高校を卒業してから始めています。入門したときは「これほど大変な音楽を今から始めるなんて遅すぎる、無理だ」と言われました。でも僕には自信があった。音の高さと長さをコントロールできれば、どんな音楽でもできると思っていたので、「とにかく試してくれ」と試験を受けさせてもらったんです。
他の音楽を通ってきたことが、雅楽を見つめるにあたりとても役立ちました。雅楽しかやったことのない人には浮かびもしないような疑問を、僕は持つことができましたから。最終的に「平安時代の人たちは、なぜこのような音楽を楽しいと思ったのか」と精神論まで追究しました。
ありがとうございます、あれは制作過程も楽しかったですね。雅楽は当然ながら、ジャズやロック、プログレッシブを知らないとああいう音楽は作れないと思います。
エマーソン・レイク&パーマーの『展覧会の絵』か、ビートルズの“青盤”と呼ばれる『ザ・ビートルズ1967年〜1970年』ですね。中学1年のときに、当時住んでいたメキシコで買いました。
『展覧会の絵』は、イギリスのプログレッシブ・ロックバンドであるエマーソン・レイク&パーマーのライブアルバム。聴いたとき、「なんだ、これは!」と驚きました。『展覧会の絵』の原曲はクラシックですが、ドラムがバシバシ来るし、途中でアコースティックギターのソロが出てきたりと、何もかもが衝撃的です。隅々まで聴いて、面白がっていた記憶があります。
ビートルズの青盤に関しては、“赤盤”と呼ばれるベスト盤もありますが、最初に手にしたのはこれです。ある程度音楽を楽しめるようになった小学校高学年あたりから、『Let It Be』や『Hey Jude』みたいな重みのあるしっとりとした曲が好きになったんですね。そういう曲が収録されていたのが、青盤だったので。
エレキギターを作ることです。クイーンのブライアン・メイが14歳のときに自分で図面を書き、父に手伝ってもらいながらギターを作り上げたそうなんです。うちの息子もクイーンにハマっていて、しかもギターが好きだからブライアン・メイに傾倒しています。それで、「オリジナルのギターを作りたい」とイメージを描き始めたんですね。僕も中学のときに「世界で1つしかないギターを作りたい」と設計図を描いたことがあるのですが、当時はノウハウがなかったので作ることはできませんでした。じゃあ今、実現しようかと。
どうせ作るなら一生使える本物にしようと、専用の工具選びから始まり、使い方や失敗例まで研究して。毎日少しずつ進めていますが、楽しくてしょうがないです。それこそギターを作る工具や材料を、楽天で買いましたよ。他にも生活雑貨などを買うのに、楽天をよく使っています。『お急ぎ便』が、とても便利です(笑)。
僕が若いころは、店頭へ買いに行くのが当たり前でした。足を運んだのにほしいものがないと、時間がもったいないなという気がしていました。ネットショッピングなら、ほしいものをピンポイントで購入できる上に、レビューで使用した人の感想も知れる。そこに触発されてほしいものやイメージがふくらんでいくのは、ネットならではだと思いますね。
「雅楽」「東儀秀樹」というと堅苦しいイメージを抱くかもしれませんが、実はとてもフレキシブルな人間です。また、「こういう風に楽しんでくれ」ということを僕は一切言いません。好きなようにこのアルバムを楽しんでもらえたら、嬉しいです。
1959年生まれ。
1996年、アルバム『東儀秀樹』でデビューする。
2004年、文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。
音楽家として以外に、雅楽師としてのテレビ出演や、役者としてNHK大河ドラマ『篤姫』に出演するなど、活動は多岐に渡る。