2015.8.18更新
ギターサウンドとSMAP──「$10」と「Otherside」
MIYAVIさんにお願い♡
新曲「Otherside」をチラ見せするというので『SMAP×SMAP』を観ました。MVのふたつの断面を見ることができました。
が、あれですね、この曲は全体を聴かないと、何も言えませんね。映像自体はかなりバビロンな作りになっていて、それぞれが歌うさまを大写しにするあたりがかなりカッコいいのと、香取慎吾さんのボディアクションが強く印象に残ります。
変拍子で大きな話題を呼んだ「Top of the World」を発展させた感じで、「長尺」(実際に分数が長いかどうかはさておき、体感としての「大作」を予感させます)を思わせるうねりもあったりして。「Top of the World」よりは平易な曲に思えますが、SMAPは難しいことを難しそうにはやらないグループなので、全体を聴くまで油断はなりません。
それよりも。「Top of the World」「Otherside」(空間を意識させるタイトル的なつながり方も意味深ですね)の作曲を手がけたMIYAVIさんがゲストで出演、「$10」を演奏したことにかなりの衝撃を受けました。
林田健司さんの「$10」「君色想い」「KANSHAして」、そして5人SMAPの最初のシングル「青いイナヅマ」の4曲はSMAPグルーヴの礎と言ってもいいものだと思いますが、個人的にSMAPの楽曲にギターサウンドを感じたことがなかったんですね。もちろん、ギターは鳴っている。しかし、グルーヴというものは基本的にベースによってかたづくられているので、どうしてもそっちに耳がいっていたのでしょう。ギターソロのある「Top of the World」にしてもギタリストが手がけた楽曲ということはさほど意識していませんでした。
カバーというものは、ときに、自作曲以上に、そのひとの本質を明るみにします。「解釈」という「血肉化」がおこなわれるからでしょう。そしてMIYAVIさんは「$10」をカバーすることで、SMAP自身にも大いなる輝きを与えたと思います。
すごく単純なことばで言えば、それは「身体性」ということになります。
「$10」はとてもグルーヴィですが、同時にムードを重視した、アダルトな「虚構性」が際立つ曲です。日常を歌うことが多いSMAPの楽曲のなかでも、かなりフィクショナルな内容だと思います。MIYAVIさんのアプローチは、この「虚構性」に、あっけらかんと「身体性」を付け加えたのみならず、フィクションがカラダを含有するのではなく、カラダがフィクションを包容する、独自のヴィジョンを提示したと思います。そのことによって、SMAPメンバーのダンスも、わたしにとっては、これまでとは違ったものに映りました。
「$10」は、その世界観も含め、森且行さんの存在が大きい楽曲だと考えていましたが、MIYAVIさんの「解釈」によって、ようやく5人時代の「$10」が、21世紀の「$10」が生まれたような気がしてなりません。
せっかくですから、MIYAVIさん選曲で、10曲ほど、SMAP楽曲を生まれ変わらせて、5人に歌い直してもらいたいくらいくらいです。わたしなら、アルバムのタイトルを『SMAPルネサンス』にします。MIYAVIさん、どうかご検討よろしくお願いいたします。
相田冬二※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。