2016.3.15更新
『震災から5年 "明日へ"コンサート』を観て。
この瞬間、きっと夢じゃない
八代亜紀が「舟唄」をうたうのなら、SMAPは「世界に一つだけの花」をうたうのだ。
プリンセス プリンセスが「Diamonds」をうたうのなら、SMAPは「オリジナル スマイル」をうたうのだ。
Perfumeが「ワンルーム・ディスコ」をうたうのなら、SMAPは「この瞬間、きっと夢じゃない」をうたうのだ。
それは、ほとんど対バンだった。
コール&レスポンス。
中居正広は、前を向くことも大切、だけど、過去を振り返ることも大切、と言った。
有言実行。
ここに記した6曲はすべて、2011年以前に発表されたものである。
八代亜紀は1979年、つまり、香取慎吾が2歳のときから、「舟唄」をうたいつづけている。
プリンセス プリンセスが「Diamonds」で一大ブレイクを果たした1989年、SMAPは結成2年目だったが、未だCDデビューしていなかった。
歌い手には、ここぞというときにうたう曲がある。きっと、八代にとっては「舟唄」がそうだし、SMAPにとっては「世界に一つだけの花」がそうなのだろう。
うまく言えないけど、宝物だよ、と、プリプリは、いくつかの場面を、ダイアモンドだね、と形容する。
生まれつきの笑顔、それは、女神がくれた最高の贈り物、と、SMAPはたとえて、そこに戻れ、と伝える。
しみじみ飲めば、しみじみと、想い出だけが行き過ぎるように、いくつかの場面は、ダイアモンドのような宝物だし、最高の贈り物である笑顔に、わたしたちは戻ることができる。
それにしても。
「ワンルーム・ディスコ」と「この瞬間、きっと夢じゃない」のシンクロニシティには驚かされた。
「ワンルーム・ディスコ」がリリースされたのは2009年3月25日、「この瞬間、きっと夢じゃない」は2008年8月13日。
なのに、「この瞬間、きっと夢じゃない」が、「ワンルーム・ディスコ」への返歌に思える、音楽の奇跡。
新しい場所でうまくやっていけるかな、と、ひとり暮らしの出発の、不安とときめきを、等価のものとして、孤独のダンスとしてうたう「ワンルーム・ディスコ」。
そして、「この瞬間、きっと夢じゃない」の主人公も、たったひとりで、僕ら、をうたっている。
僕らは、いつだって、ひとりじゃないんだよ、と、うたうのは、うたっている者がひとりだからこそ、説得力がある。
うたっている者がひとりだからこそ、ここではないどこかにいる、やはり、ひとりのだれかに、うたいかけることができる。
ひとり、と、ひとり、が、響き合う。
どんなに、遠く、離れていても、そばにいるから、というフレーズは、ひとりが、ひとりに、届けているなにかなのだと、思う。
そして、SMAPは、うたうのだ。
ことばじゃ、伝わんない、と。
歌い手がうたうのは、ことばではない。
言霊である。
わたしたちが振り返るための言霊である。
相田★冬二
※次回のMap of Smapは、3月25日(金)更新予定です。
※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。