2016.6.14更新
木村と拓哉の右脳と左脳──『What's UP SMAP !』
彼のグルーヴ、ヴァイブス、ストリーム
久しぶりに『木村拓哉のWhat's UP SMAP !』を聴いた。
まず、グルーヴ感がすげえ。ものすごく音楽っぽい。セッションしてるナマの雰囲気がディープで、個人的には実際の楽曲なんて流れなくてもいいくらい。そしたら、くたびれちゃうかな、木村さん。そんなことないよね、ぜんぜん、30分くらい、ノンストップでしゃべりたおせるひとだと思うもん。
グルーヴっていうのは、主に緩急によってもたらされるもので、この緩急に対する留意がハンパねぇのよ。まあ、長年やってる番組だから、意識でどうのこうのって次元はとっくに過ぎてるとは思うけど。緩急っていうのはアレだ、アップ&ダウンのことね。理想的なグルーヴは四角い車輪の自転車で進んでいく感じ、という名言があるんだけど、ほんとは四角い車輪なんてあるはずもなくて、それはきわめてフィクショナルな道具立てなんだけど、ギッコンバッタンしているはずの車体のゆれを感じさせない、スムーズな走行テクニックの凄腕がないと成立しないのね。四角い車輪の自転車に乗ってるんだけど、ゆうゆうと運転してる感じ。
グルーヴがこころにもたらすある種の振動は、そのようにかたちづくられているし、だからこそ、グルーヴのある音楽は、セクシーだとか、エロいとか、言われるわけで。振動、つまりヴァイブレーションって、なめらかなギッコンバッタンなわけ。気持ちのいいヴァイブスを生めるかどうかはほんと、ドライバーのテクにかかってる。
この日の放送は、いきなりシリアスな話からはじまった。音楽で言えば、超マジなイントロだよね。
大人になるって? というリスナーの問いに対して、バックれられないよ、と木村さんは答えるわけなんだけど、ここでまず、緩急が出動してんのよ。
先輩かもしれないけど、大人かどうかはわかんないよ、という名乗りがあって、しばしのちに、でもさあ、という感じで、語りかけるのね。バックれられないよ、ということばが、ただの正論として響いたりしないのは、木村さんが、流れを作り出しながら、そのことばを出迎えてるからなのよ。
出番を待つ、みたいなわざとらしさではなくてね、平易なことばを、きちんと出迎えられるような自分でいる、っていうことかな。つまり、演出ではなく、姿勢なんだよね。人間としての姿勢に、一本スジが通っているかどうかなわけだ、極論を言えば。
姿勢と言っても、ゴリゴリではないのね。さっき言ったみたいに、流れ、ストリームがあるのよ。水がさ、流れるように、ことばの登場を出迎える。さりげないけど、丁寧で。だから、ことばがあんなふうに輝くわけ。
ことばの説得力って、ことばが単体で有しているものではなくて、どんなふうに辿り着いているか、という経路によるものなんだよ。だから、かっこいいことばだけを切り貼りしてるだけのものは、ひとのこころにまったく届かない。美辞麗句のつまらなさはそこにあるし、オイシイとこだけかいつまんでもぜんぜんダメダメ。ストリームがなくちゃね。
木村拓哉的ストリームは、そこから、歯科衛生士ばなしに突入していくんだけど、この、作戦なき作戦の流れの素晴らしさはどうよ! 単に好きな話題に飛びついてるようにしか見えない、陽気な無防備さ。これよ、これ。これが緩急というものよ。
歯科衛生士は別に顔で選ばれてはいない、という善意のお便りたちには、うむうむと、それなりに神妙に応答しながら、あくまでもフラットに、いや、やや物足りなそうにしていながら、やっぱり、歯科衛生士は顔で選ばれてる!という内部告発があると、もう、ワクワクしっぱなしな状態にローリングしていく、とめどのなさ。ギターソロみたいよ、アレ。うぃ〜ん〜、きゅい〜ん〜、響かせる響かせる、泣かせる泣かせる。
低音が効いてる声の持ち主だから、緩急も効くのよね。リスナーのあいさつに、同じあいさつで応える、ひとりコール&レスポンスも、だから落語のような小気味良さ。
なんかね、右脳と左脳が、うまくリンクしてるような気がする。話している木村さんも、聴いてるわたしたちも。
当たり前のことだけど、木村さんは右脳だけで話していないし、左脳だけでも話していない。それがすこやかだし、だから、緩急が生まれ、わたしたちの右脳と左脳も、ほどよくジョイントできるのだと思う。
唐突に結論。
グルーヴとは、右脳と左脳の二人三脚である。木村と拓哉の二人三脚が、この番組のグルーヴを生み出しているのである。
相田★冬二
※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。