2016.7.19更新
中居正広は、こころの瞳孔で、あなたに話しかける
7月16日、『サムガ』を聴いた。
SMAPの中居さんが好きというひともいるでしょうし、MCやってる中居さんに憧れるひともいるでしょうし、俳優としての中居さんにくすぐられるひともいるのでしょうけど。
わたしも、SMAPのうたの要は実は中居さんだと考えていますし。彼が歌ってる場合にせよ、歌ってない場合にせよ、彼の存在感は唯一無二で。いや、むしろ、歌ってないときのほうが、「不在」という存在感が発揮されていると思うわけです。SMAPのうたにおける、中居さん歌唱の旨味成分、あるいは薬味成分については、いずれ、がっちり語らなければいけませんね。
そして、MCとしての中居さんには、好感度とか、いいひととか、そういうチャチな次元をはるかに飛び越えた、孤高の「技術」があるわけで、まあ、わたし的には、それは、彼が非常に優れたインタビュアーであることから、きちんと論じなければいけないと思いますけどね。彼は、相手にインタビューしてるだけではなくて、「その場」という環境に対してもインタビューをおこなっている。それが、テレビというメディアを通して、「わたしたち」にインタビューすることにもなっている。だから、彼は称賛に値するMCなわけです。
俳優、中居正広については長くなりそうなので割愛しますが、彼が、いくら、演技という場にそれほど興味がなくても、このひとは、選ばれてしまっているのですよね、わたし的に言えば「映画の神様」に。紛うことなき天才。その「底」は計り知れませんが、おそらく彼が、その「底」をさらすことは一生ないでしょう。個人的には、ワンポイント出演でもいいので、その輝きを、キャンドルのように灯しつづけてほしいと願うばかりです。
とまあ、大雑把に見積もっても、この世界には、3つの中居さんがいるわけですが、「もうひとり」、忘れてはいけないのが、ラジオDJとしての中居さんで、これがいちばん重要かもしれません、中居正広という表現を考える上で。
『中居正広のSome girl’s SMAP』という番組名からして壮絶ですが、ここで彼は凄まじいばかりの光を放っています。
攻撃は最大の防御、なんていうことばがあるわけですが、中居さんは完全にそのウラを貫いていて、ひたすらな否定形で自己を表出するというハンパない領域に到達しています。「拒絶にしかかたちづくれない本音」と言えばいいんでしょうか。
この夜は、リスナーのハガキにお答えするというコーナーだったわけですが、もう、「ないな〜」を連発するわけです。星を観に行きますか? 願い事をしますか? という質問に対して。
このね、否定形から入る口調に、なんとも言えないニュアンスがあるんですね。それは、非常に「個的」なものなんです。隠蔽してるわけではなく、むしろ、開いてるんですね。「ないな〜」って言うことによって。自分というものを、否定形によって、開く。
中盤では、腕時計とか、一人旅とか、デパートの袋とか、ポジティヴに語ってもいるわけですが、最終的には、着てみたい職業制服は? と訊かれ、「全然、着てみたいと思わないわ」と〆る! 入口と出口を統一することで、アイデンティティが確立されるんですね。
ひとは、相づち打ってるとき、案外、いい加減だったりするじゃないですか。相手の話を聴いてるようで、全然、聴いてなかったりして。実は、「それは違うな」って、ちゃんと口にしたとき、そのイノセンスに、ハッとして、そのひとが見えてくるということはあるわけで。
そういうことを、中居さんはもはや、DJのキャラとしておこなっているんです、しかも、ダウナーかつルーズに。
延々「いや、それは違う」と言いつづける天の邪鬼ではなくて、「違うものは違うんだよね」と、やわらかな楔(くさび)を、コミュニケーションの流れのなかに、打つ。的確に。しかも、あからさまな鮮やかさはカモフラージュしたまま。だから、心地良いし、親しみをおぼえるんですね、わたしたちは。
で、思うんですが、これは「無意識という技術」だと思うんですね。勘、という言い方だと、なんだか雑になりますが、とても精度の高い勘が、そこにはありますね。
いやいや、中居さんは、そういう性格なんじゃないの? って言う方もいるかもしれませんが、いやいや、「性格こそが最大の才能」なわけで。性格なんていうものは、だれにでもあるもので、己の性格を、最良のかたちで表出することこそが才能というものであって、そのためには結局、技術が必要なんですね、「無意識という技術」が。
「無意識という技術」によって「性格という才能」を、あえて小出しにしていく中居さんは、徹頭徹尾、控え目な、つまり、品性のある表現者なわけですが、このラジオを聴いていて、見えてくる情景は、中居さんのこころのなかにある「瞳孔」が開いているということなんですね。
ご存知のように、瞳孔というものは、光量に対する反射によって、そのかたちを変えていく「ひとつの機能」なわけで、自分の意識でコントロールできるわけではありません。
わたしが、DJとしての中居さんに惹かれる最大の理由は、この「こころの瞳孔」のありようです。おそらく、彼は、「こころの瞳孔」を、「無意識という技術」と「性格という才能」によって開く術を知っているのだと思います。
相田★冬二
※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。