2016.8.2更新
「木村拓哉」というレシピ──『付タク』感想文。
夏のおもいで
きっと、みんなは、家族旅行のこととか、ポケモンGOのこととか、夏休みの過ごし方の反省とかについて書くのでしょう。だから、ぼくは少し違うことを書こうと思います。
ぼくは、自分で言うのもなんですが、先輩にかわいがられるタイプです。それなりにいいおもいをしてきたので、中学生になっても、高校生になっても、大学生になっても、バイト先でも、就職して社会人になっても、ずっとずっと後輩キャラでいこうと思っていました。イヤなヤツだと思われるかもしれませんが、それを無理なくこなす自信もありました。そうすることで、ぼくの人生はうまい具合に進む。そんなふうに考えていたのです。
でも、『SMAP×SMAP PRESENTS 木村拓哉、ついて来てもらっていいですか?』という番組をみて、考えが変わりました。
これは、SMAPの木村拓哉さんが、芸能界の後輩である濱田岳さん、桐谷健太さん、それぞれと、男同士でデートする番組です。番組の中ではデートとは言ってませんでしたが、あれはデートなんじゃないかと、ぼくは思いました。助手席に座ってるひとが、運転席で運転しているひとに、甘えたり、わがままを言ったり、自分の行きたいところに連れていってもらったりする。これって、デートなんじゃないかと思うのです。
濱田さんは、山中湖に連れて行ってもらって、なんだかよくわからないスポーツを、ふたりでしていました。
濱田さんのところで印象に残ったのは、なんと言ってもドライブしているところです。
濱田さんが、桐谷さんにくらべれば、はるかに遠慮ぎみで、さらに、ちょっと緊張しているように見えたからかもしれません。木村さん、いや、木村先輩のやさしい対応が、とてもいいなと思ったのです。
一生懸命、話す濱田さんに対して、木村先輩は、ただ聞いていたり、ちゃちゃを入れたりしているのですが、ずっとふつうのペースをくずさないでいます。
いいよ、おまえのまんまでいればいいんだから。
ぼくは、木村先輩が、そんなふうに言っているように思えました。
いい先輩は、いい緊張をくれるものです。いい緊張がなにかと言えば、こっちがおとなしくしていても、多少ハメをはずしていても、態度が変わらないことだと思います。ぼくは、そんないい先輩たちに、これまでかわいがられてきました。
こっちがどんな状態でいても、変わらず、先輩のままでいてくれること。ぼくは、そんないい緊張を与えてくれる先輩たちに、ずっと頼ってきましたが、木村先輩にもそれを感じました。
なんだか、よくわからない水上でやるスポーツをやり終えたあと、木村先輩は、濱田後輩に、「あまり乗り気じゃなかったけど、楽しかった」みたいなことを言うのですが、その「楽しかった」は、木村先輩が、ずっと、ふつうのペースをくずしていなかったからこそ、こころに響くものになっていたと思います。
桐谷さんは、キャンプに連れて行ってもらいました。
桐谷さんのところで印象に残ったのは、木村さんが料理をするところです。
料理といっても、カボチャを半分にしたものを、アルミホイルで包んで、たき火に放り込み、そのあとで取り出して、種の部分を取り除き、そこにバターを入れ、さらに、塩を少々ふりかけるだけです。
桐谷さんは、それをとてもおいしそうに食べていましたが、あれは絶対、おいしいと思います。
先輩が「これ、食ってみ」と言って、差し出すものは、おいしいに決まっています。ぼくは、近所の公園で遊んでいるとき、中学生のお兄さんが、ヤキイモ屋さんから買ったヤキイモを半分に割って、ぼくにくれたときのことを思い出しました。
とてもおいしかったです。そのヤキイモが特別なわけではありません。そのお兄さんが、ふつうのヤキイモを、特別な食べものにしてくれたのです。焼いたのは、ヤキイモ屋さんなのに。
あのとき、ふりかけた、ちょっぴりの塩。
きっと、それが、木村先輩です。それで、なんでもないカボチャは、特別なカボチャになります。おもいでに残るカボチャになります。
ぼくは、後輩キャラをやめることにしました。ちょうど来年から高学年になるし、いい機会です。
木村先輩のような先輩になりたいと思います。
助手席に座った後輩がうれしくなるような、味のある先輩になりたいと思います。
これが、ぼくの、夏のおもいでです。
4年1組 あいだとうじ
相田★冬二
※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。