2013.11.19更新
『Sound Room』で中居正広、最新のMC術を堪能する
パスを送る中居と、シュートするリリー
『Sound Room』は、一回目と二回目では印象が異なる。これはいったい、何を意味しているのだろうか。
一回目、印象的だったのは、中居正広とリリー・フランキーのコンビネーションであった。基本的に、中居がパスを送り、リリーがシュートする。そのような関係性がかたちづくられていたように思う。シュートは決まることもあれば、そうでない場合もある。ゴールするとか、得点に結びつくとか、そういう「結果」はどうでもいい、というのは、もはやリリーの芸風と言ってもいいだろう。キックすること。というか、とりあえず、足にあてること。それだけが最優先されている。
パスを送る中居はそのことを充分心得ており、ボールがどこからどう流れてきても、とりあえず、リリーが足でふれることができるように、球を持っていく。その華麗なまでの躊躇のなさ。
もちろん、それは、これまで数々の番組で磨いてきたスキルの賜物であろう。しかし、それ以上に、かぎりなく「ぶっつけ本番」に思える、中居とリリーの、もはや互いを信頼しきっている「空中戦」のありように、しばし見惚れた。もはや、ずいぶん長いこと連れ添った「夫婦(めおと)」のように思えたから。
一瞬、この番組、何年ぐらいやってるのかなあ、あれ、初回か、みたいな。真面目で不真面目な中居と、不真面目で真面目なリリーと。相手と自分との違いを、すっきり理解しているからこそ、しっかり自分の領分を守り、はっきりボールのやりとりができる大人たち、だと思った。
ルールが脱臼していく、部活としての談話室
『Sound Room』とは、「音楽室」だと思っていたら「談話室」だった。というのが、二回目の印象である。
つまり、Soundは、音楽でもあるが、おしゃべりの響きでもあるのではないか。この回は、Kis-My-Ft2のメンバーが次々にリリー・フランキーに質問を投げかけるという「逆インタビュー」方式で番組が始まったものだから、合計9人の男の子たち(中居&リリーも含む)のさえずりの集積が、Soundとして感じられた。
その様相はある意味「部活」だった。先輩ふたりの話を聞く、後輩7人の幸せな情景は、音楽番組とか、トーク番組とかの、定型からゆるやかに逸脱しており、番組2回目にして、もはやルールはあるようなないような、そんな自由気ままな風を吹かせていた。
リリー・フランキーが下ネタを人生の問題としてスライドさせることで、本質を脱臼させていくのに呼応するように、中居のアプローチも、この番組の一回目にはあったはずの決まり事を、はやくも、呆気なく、ズラして、骨ぬきにしていた
歌詞について思うことを、中居とリリーがあれこれ語る、というのが確かこの番組の本筋だったと思うのだが、この2回目で中居は、自分はこの歌詞のようなことはとても言えない、というトバ口から、まさしく談話を開始するのだ。「永遠」とか「愛してる」とか言えないよ、という吐露から、リリーが、しかし、そういうことを言えてしまう男がモテるのだという、やんわりとした不満表明につなぎ、音楽を超えた、大いなるおしゃべりへと転じてゆく様が、たまらなく、これこそSoundだと思わせられたのが、二回目であった。
変わっていくことをおそれない、無手勝流の実験
話術というものを考えさせられる番組である。言ってみれば、『Sound Room』は、中居正広にとって「実験室」なのではないか。深読みするならば、最新の「古女房」リリー・フランキーを前にすることで、中居正広というMCの「脳の中身」が覗けるような錯覚をもたらすのである。
たとえば、中居とリリーのやりとりを眺めながら、それをスポーツ中継のように楽しむことができたなら、アスリートの反射神経や筋肉の躍動とともに、瞬時の判断の断面図のようなものさえ掴めるのではないかと、思ったり思わなかったりするのである。
ここでの中居は、ラフなフォームだからこそ緻密なMC術を内蔵しているように感じられる。柔軟でいるための構築が、実に細やかなのである。思わず、そうした細部に耽溺しそうになるが、けれども、本作の醍醐味はもっと、全体をまったり俯瞰したほうがより楽しめるはずだという気がする。
なんだか、三回目は三回目で、また違う印象をもたらしてくれそうなのである。それは、ゲストの顔ぶれによって変幻するというよりは、中居とリリーという生命体が、変わっていくことをいささかもおそれていない、語り手としての自負があるからなのだと思う。
ゲストの話を聞き出すのではなく、ゲストの曲を肴に、マスターが自分の話をしたりしなかったりする、カフェのような、居酒屋のような、ゆるゆるで、ずぶずぶで、居心地のいい空間が、『Sound Room』なのではないだろうか。
リラックスしながら「実験」すること。前の日か、次の日か、よくわからない放送時間も含め、「無手勝流」の真髄に遭遇するような、豊かなSoundがここにはある。
文:相田★冬二
※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。