2014.4.22更新
中居正広MC最新番組『UTAGE!』が映し出すもの。
プロが他人の持ち歌を歌うということ
中居正広さんがMCを務める新番組『UTAGE!』が始まりました。
毎回「かつて」の楽曲たちにスポットを当てて、毎回独自のランキング形式で、「いま」のプロ歌手集団がそれを歌うという企画です。第1夜は、SMAPが初めてオリコン第1位を獲得した「Hey Hey おおきに毎度あり」の年、「1994」が主役でした。当時のヒットチャートではなく、「いま」カラオケで最も多く歌われている「1994」製楽曲のベストテンを発表。つまり、「いま」に歌い継がれている「20年前」が披露されたのです。
「かつて」の楽曲を、「いま」のプロが歌うという趣向は決して新しいものではありません。むしろ、音楽番組の基本ともいうべき構成です。それこそ「かつて」のプロ歌手たちはみなさん、持ち歌以外の歌を歌うことで力量を見せつける機会を、音楽番組によってもたらされていたのです。
そもそも、持ち歌というものには「上手い」「下手」という概念は存在しません。そのひと(たち)のための歌、すなわち、オリジナルである、という厳然たる事実によって、価値は保証されています。自分(たち)の歌を、自分(たち)が歌う。それだけで充分であり、極論すれば、歌唱として優れているかどうかは二の次、三の次です。むしろ、そこで試されているのは楽曲の善し悪しでしょう。
『UTAGE!』第1夜で、プロ歌手集団「UTAGEアーティスト」のみなさんが一様に緊張なさっていたのは、己の歌唱がシビアにジャッジされざるをえない「完全アウェイ」に飛び出さなければいけないからです。「20年前」をリアルに知っているひとも、そうでないひとも、この過酷な「腕試し」に参加しなければいけない。それが、まずは『UTAGE!』という番組の見どころのひとつだったように思います。
だれもが等価の存在になる場所と時間
ただ、この番組は決して「スターのど自慢大会」のような様相を呈してはいませんでした。これは「UTAGEアーティスト」の人選によるところも大きいのですが、ハレとケで言うところのハレではなくケとしての「小さなパーティ」の雰囲気があったんですね。たとえば「あるサークルの二次会」といった趣。決して「一次会」ではないのだ、といういい意味でのカジュアルさが画面に漂っていたと思います。
このようなムードを醸成しているのが中居さんであることは言うまでもありません。中居さんは序盤では、プロ歌手集団にさんざんプレッシャーをかけながら、彼ら彼女らが歌い終わったあとはいかなる「ジャッジ」もしないという姿勢を貫いていました。音をハズしたアーティストはただ笑いのネタにされただけですし、そのような空気のなかで、自ら「音、ハズしてすみません」と申告するアーティストもいました。これ、なにかに似てますよね。そう、カラオケです。グループでカラオケに出かけたときの、あの気分にとても似ているんです。
「UTAGEアーティスト」は、決してその歌唱に定評のあるひとばかりが集まっているわけではありません。彼ら彼女らは全員プロではありますが、すべてが飛び抜けた歌手ではありません。ここが重要な点です。つまり、歌唱力には明らかに差がある。しのぎを削る場ではないんですね、ここは。全員が横並びで歌う空間なわけです。歌が上手いひとがいる。そうでもないひとがいる。でも、それぞれに歌う。歌うこと、正確に言えば、持ち歌ではない、他人の、それも「かつて」の歌を歌いきるという行為の下に、彼ら彼女らは等しく肯定されているのです。考えてみてください、カラオケとはそのような時空ではないでしょうか。
あれからの20年がもたらした小さな宴
あのひと、やっぱり、うまいな。へー、このひと、こういう歌だと、こういう声なんだ。男性歌手の歌を、女の子が歌うってグッとくるな。一生懸命、歌ってるな、なんだか、いいな、とっても。
カラオケで歌うだれかの歌を聴きながら思うのは、たとえば、たぶん、そういうことです。それが、この番組にはあります。たまたま集まった、何人かのひとびとが、その場で肯定されている。
ステキだなあと思うのは、歌わないひとも肯定されていることなんですね。曲紹介するひとも、DJ風にイントロにからむひとも、MCにいじられるゲストのひとも、みんな、等しくそこにいるし、いられる。ほら、カラオケでも決して歌わないひとっているでしょ。タンバリン叩いてるだけのひと。あるいは、どの曲にしようかじっと悩んでるだけのひと。あのひとたちも、カラオケというスペースは受け入れていると思うんです。
ランキングのあいだは一切コマーシャルが入らず、ぶっつづけだったのも、時空としての一体感があって、すごくよかったですね。『UTAGE!』という番組の根本にあるのは、だれかを「受容する」というスピリットだと思います。
これは単なる偶然の一致だと思うのですが、「1994」という年は、先日終了した国民的番組に、中居さんが初めてレギュラー登板した年なんですね。この4月でちょうど20年。あの番組から引き継いだ何かを、中居さんはMCとして、ここに「温存」させているような気がしてなりません。だからこそ『UTAGE!』という番組名なのかもしれませんね。
文:相田★冬二
※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。