2014.9.9更新
「いまここ」がパレードする──『Mr.S』東京ドーム公演を観て。
シンプルな魔法と∞のセカイ
Dear.S
お元気ですか。そっちの天気はどう? こっちは涼しくなったと思ったら、暑さがまたぶり返しちゃったよ。
きみが何を知りたくて、何を知りたくないか、それはわからないけど、書いてみるね。自分なりに、きみのために。
これから書くのは、9月4日、Mr.S“saikou de saikou no CONCERT TOUR”初日の東京ドームでのことだ。
あたらしいアルバムはもう聴いてるよね? 初回限定盤にはDVDがついていて、そこには「Mr.S-SAITEI DE SAIKOU NO OTOKO-(MUSIC VIDEO)」がおさめられている。CDのDisc 1の2曲目にも収録されているこの曲は、タイトル曲というだけじゃなくて、このアルバムの名刺がわりみたいな存在だ。言ってみれば「顔」。
ぼくは狂ったようにこのアルバムを聴いていたけど、このDVDを観たのはついさっき、たったいまのことだ。
曲だけで聴いているのとはまったく違うニュアンスが得られる体験だった。すぐれたMVはみんなそうよ、と言われてしまえばそれまでだけど、とても新鮮だったんだ。モノクロの妄想が、カラフルな陽射しの下にさらされる快感っていうのかな。
このツアーもまさにそうだった。なにしろアルバム発売日の翌日がツアー初日だからね。いくら聴きこもうにも限界はある。だから、言ってみれば、先に「種明かし」されてるようなものさ。思いきって、『Mr.S』を一切聴かないでツアーに臨むっていうのも、実はかなり贅沢な試みかもしれないね。「アンサー」から「クエスチョン」にさかのぼるクイズの旅も、ものすごくオツってもんだ。
これは明かしておいたほうがいいと思うけれど、最新作の17曲は全部やる。イントロ、アウトロ含めてすべて。きみはもう想像していると思うけど、あのMVの世界観は踏襲されているよ。MVのバックグラウンドがわかるツアー用の映像もたんまり流れる。最初の5曲はまさに『Mr.S』ワールドだ。アルバムに収録されてない曲も『Mr.S』仕様──というより、その曲がそもそも『Mr.S』のノリを予告していたと気づかされる。そんな仕組み。
ひとつの気づきが、過去の予兆を発見させる。ほら、鏡と鏡をあわせると、そこには無限の世界がひろがっていくような気がするだろ? あんな感じ。シンプルな魔法が、∞(無限大)の時空をつかませてくれるんだ。過去がいまにやってくる──っていうのかな。いまから過去にいくんじゃなくて、過去がいまになる。そんなときめき。
過去いま未来が溶け合う
だから、このツアーでは、古い楽曲も、懐かしモードでは繰り広げられない。「いまここ」のスパークがあるんだ。そもそもコンサートってそういうものじゃない? と言われてしまえばそれまでだけど、楽曲に古いも新しいもない、ただ「いまここ」があるだけなんだと思わせられたよ。
もう20年近くも前だけど、SMAPに『BOO(Remix -Hardcore Idol Machine-)』ってリミックスアルバムがあったでしょ。あれに「GANTAN Sound Machine」と「SHOGATSU Sound Machine」という複数の曲をクラブミックスしたシークエンスが2つあったの憶えてる? あれってメドレーじゃなかったと思うんだ。曲と曲とのあいだに横たわる時間的差異をマジックのように消滅させて、きゅってつなげちゃう。あんなふうな心地良さが大きな波になって、こっちを呑み込んでくれる213分だったよ。SMAPはどんどんあたらしくなるけど、実は何も変わっていない。変わらない何かがあるから、あたらしくなれるんだ。
実際、リミックスコーナーみたいな場面もあったし、演出も照明もスタジアム・ダンスホール化するときもあったけど、単にコンサート用のアレンジを施しているというよりも、ノリが、つまりグルーヴそのものが、過去をいまにリミックスしていた。で、それって、方法論ではなくて、SMAPという生命が、いま、そういうことになっちゃってるんだなって思った。
コントコーナーがまさにそうで。「生であること」と「あらかじめ用意された映像」が並列化されて、つながってるんだよ。つまり、いまと過去が溶け合ってる。「映像」も「生」っていうか。このときいちばん印象的だったのはコーナーの最後に香取慎吾さんが口にした「反省会は2時間後にしよう!」。こんなに未来を感じさせるコトバってないじゃない? だって、たぶん、この日にしか言えないことばだよ。初日だから言ったんだよ。これから21公演あるから言ったんだと思う。
あれ、ものすごく元気出たなあ。ぼくが行けるツアーはこの初日だけ。だけど、このツアーには未来があってさ、お客さんには未来があって、もちろんSMAPに未来はあって、今回ツアーには行けないお客さんにも未来があるってことなんだよ。「反省会は2時間後にしよう!」っていうコトバは。たった2時間後の未来を想像すること。なんて、素敵なんだろう。ああいうヴィジョンをかたちづくることができるのは、紛れもなく「いまここ」を生きているからさ。
行進しながら更新する
とにかく、まわるんだよ。あるときはメンバーそれぞれが、あるときは5人一緒に、まわるまわる、めぐるめぐる。ドーム内を移動する。ぼくにはその姿が「パレード」に見えた。
やっぱり「Joy!!」が大きいと思う。「Joy!!」にはカーニバルの要素もあったけど、やっぱり、曲そのものがパレードしていた。こんな時代だからこそ必要なパレードがあった。あのパレードする感覚が、コンサート全編の機動力になっていた。
パレードってさ、過去を未来に変えていくことだと思うんだよ。行進することで更新する。過去と交信しながら「いまここ」を昂進させていく。たかぶりながら進んでいく。たまかりながらのぼっていく。そんなエナジー。「Joy!!」のあとに、何を歌ったかは書かないけど、つまり、あれがいまのSMAPの「答え」なんだと思う。
ちょっと古い曲も、すっごく古い曲も、最新の17曲と隣り合わせで、手をつないでいる。あれ? この曲、こんな「顔」してたっけ? そんなサプライズが、パレードしていた。過去を美化するんじゃなくて、遠くにあると思っていたものが実はすごく近くにあって、その「素顔」に出逢って、うれしくなる。ハッピーってさ、過去の再現じゃないんだよ。たったいま、この地上に降ってきた何かなんだよ。時間差で到着するハッピーもある。過去が降らせてるハッピーもあるかもしれないし、未来が降らせてるハッピーもあるかもしれない。でも、ぼくたちにとっては、全部、すべて、「いまここ」でしかない。そのことを、SMAPは全力で体現していた。彼らが証明していたのは、ほんとうに単純なことだった。つまり、「いまここ」はある。これほど、確かなことはない。
『Mr.S』のある曲には、27歳で死んだ高杉晋作の辞世の句がサンプリングされてるけど、いま、もう、これしかないと思う。
おもしろき
こともなき世を
おもしろく
ぼくは元気だ。SMAPからこのコトバを授かったから。きみも元気でいてくれると、ぼくはもっとうれしい。きみの幸運を祈ってる。
相田“Mr.M”冬二
※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。