2014.11.4更新
中居正広は目に見えないことをする──『ザ!世界仰天ニュース』。
なにか違うの「なにか」の塩梅
ぼくは、橋本環奈さんより、断然、小松菜奈さん派です。いいですよね〜、シュノーケルつけて、頭の先までバスタブにつかるんですって。素敵です、菜奈さん。
あ、すみません、10月22日放映の「巨大赤ちゃんスペシャル」の話です。
『ザ!世界仰天ニュース』って、今週でレギュラー放送としては500回めを迎えるんですって。すごいですね。
実は「巨大赤ちゃんスペシャル」の回は、小松菜奈さんのことしかおぼえてないので翌週29日放映「涙があふれるスペシャル」の話をしたいと思います。
えーっとですね、この番組は、もう長く続いているからでしょうか。スタジオと、VTRとの距離感が、なんていうか、ものすごくこなれたことになってるんですよね。「巨大赤ちゃんスペシャル」ではもはや、スタジオがほとんど巨大赤ちゃんの内実にはふれずに進行していて。ある種のパラレル感すらあったわけです。いや、そもそも、巨大赤ちゃんって、ダイエットが必要な赤ちゃんたちのことなんですが、これはなかなか具体的にコメントしづらいわけです。「大変ですね」とも「かわいそうですね」とも言いづらい話題なわけで、まあ、ある意味、VTRはVTR、スタジオはスタジオで、ゲストの赤ちゃん時代の写真を披露するとか、巨大赤ちゃんとは全然関係ないことをやるんですね。いやあ、小松菜奈さんは赤ちゃんのころから、可愛かったな〜。
え? あ、はいはい、失礼しました。
で、何が言いたいかといいますとね、このこなれた距離感が、「涙があふれるスペシャル」でも、とても見事に作用していたんじゃないかと思うんです。
まあ、泣き系って、楽と言えば、楽だと思うんですよ。ぶっちゃけ、ゲストは泣いてりゃいいし、司会は泣かせるように誘導してればいいし。でも、この番組は、なにか違いましたね。はっきり違うんじゃなくて、なにか、違うんですよ。その「なにか」の塩梅をね、中居正広さんは、作り出していたような気がしますね。これね、かなり、ことばにしづらいことなんで、うまく伝えられるかどうか、ぜんぜん、わかんないんですけど。まあ、やってみます。
あなたが、したいように、してください
私の名前を知っていても
私の物語を知った事になんてならない
私が何をしたか聞いても
私が何を経験したかを知る事にはならない
番組未見の方は
公式HPをご覧ください。そこに詳しく載ってますが、これは13歳の誕生日を迎えた矢先に骨肉腫で亡くなったイギリスの女子中学生ボクサーが、自室の鏡の裏に書き留めてあったことばの一部なんですね。彼女に真実を告げられずにいる両親を気遣いながら、懸命に生きようとしたこの少女は、他のだれよりも自身の余命に真剣に向き合っていた、ということがわかりますね。このふたつの文章はね、もう、泣くとか、そういう次元ではないわけです。言ってみれば、孤独の自画像みたいなもので、ぼくたちの共感やら同情やらといった安っぽい反応を、あらかじめ超えていて、ほとんど絶句するしかなくなるんですよね。
このテロップがVTRに映し出されて、しばらくして、画面がスタジオに切り替わったんですが、そのときの中居さんが、あれは何て言うんだろうな……もう、ほとんどわからない程度にうなづいて、あとは、ゲストに「どうですか?」的なことを訊くだけなんですが、なんていうか、その場をいたわってるんですよね、しかも、どこか身体的にはリラックスした風情のままで。こういうとき、真面目くさった様子で語りかける、っていうのは定番だし、簡単だと思うし、それはそれで場が成立すると思うんですが、そういうことをしないんですね、中居さんは。おそらく、場を硬直させたくないからだと思います。場が硬直する、って、どういうことかと言えば、決まりきったことしか言えなくなる雰囲気を作り出すことで、そういう状況からは画一的なことばしか生まれないんですよ。その場をうめるだけのことばですね。
中居さんの態度というか、振る舞いは、ほとんど何も表現はしていなんですが、その分、押しつけがまったくないわけなんです。
──あなたが、したいように、してください──
ぼくなりに翻訳すると、そういうことになりますかね。何を言ってくださってもいいですよ、というようなムードを、派生させるんですね。そのひとが、そのひとのことばで、そのひとが話したいことを話してくれれば、それでいい。そういう状態を、中居さんは、何も言わずに、何も強制せずに、そこに置いている。
あれって、MC術とは別のことだと思いますね。
私の名前を知っていても
私の物語を知った事になんてならない
私が何をしたか聞いても
私が何を経験したかを知る事にはならない
このことばは、ゆっくり大切に受けとらなければいけないことばだと思います。中居さんは、人間の想像力というものを信頼しているし、それがひとそれぞれのかたちをしていて、ひとそれぞれの色をしていて、ひとそれぞれに速度は違うということ、それらすべて全部を、黙って肯定しているように思いました。おしまい。
相田“Mr.M”冬二
※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。