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ジャンル別インタビュー「生活」
「これも学習マンガだ!」の11ジャンル(※)を1ジャンルごとに各ジャンルの専門家が紹介するインタビュー企画。第4弾は「生活」ジャンルを取り上げます。お菓子研究家でありながら、マンガ関連の著作も多く手がける福田里香氏に「生活」選書作品についての感想や、学びの多様性について語っていただきました。
(※)「文学」「生命と世界」「芸術」「社会」「職業」「歴史」「戦争」「生活」「科学・学習」「スポーツ」「多様性」の11ジャンル
プロフィール
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- 福田里香(Ricca Fukuda)
お菓子研究家 - 多彩なお菓子レシピを提案して書籍や雑誌で活躍。
レシピ本に『自分でつくるグラノーラ』『フレーバーウォーター』(文化出版局)、『フードを包む』(柴田書店)など多数。マンガ好きが高じ、著書に名作マンガのコラム&レシピ『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』、コラム集『フード理論・ゴロツキはいつも食卓を襲う』(共に太田出版)、対談集『大島弓子にあこがれて』(共著/ブックマン)がある。また、民藝にも造詣が深く著書に『津軽の民藝刺繍 こぎん刺しの本』(共著・文化出版局)やDISCOVER JAPANで連載「民芸お菓子巡礼」がある。装苑のフードコラム連載は16年目。
- 福田里香(Ricca Fukuda)
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- □ 聞き手
山内康裕(Yasuhiro Yamauchi) 『これも学習マンガだ!』選書委員 - 1979年生。法政大学イノベーションマネジメント研究科修了。2009年、マンガを介したコミュニケーションを生み出すユニット「マンガナイト」を結成し代表を務める。
イベント・ワークショップ・デザイン・執筆・選書(「このマンガがすごい!」等)を手がける。また、2010年にはマンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」を設立し、マンガに関連した施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務等を提供している。主な実績は「立川まんがぱーく」「東京ワンピースタワー」「池袋シネマチ祭」など。「DOTPLACE」にて『マンガは拡張する』シリーズを連載中。「NPO法人グリーンズ」監事、税理士なども務める。
- □ 聞き手
マンガ作品をお菓子で二次創作したい
山内 福田さんはお菓子研究家でありながら、『まんがキッチン』などマンガ関連の著作も多く手掛けていらっしゃいます。かなり特殊なキャリアだと思うのですが。
福田私、美大出身なんです。卒業後に就職したのが新宿高野という果物屋さんで。その後、独立してお菓子研究家になりました。40歳間近になって、ふと、「このままマンガに関わらず死ぬのかな」って思った時に、いや待てよ、ちょっと仕事のやり方をひねればマンガに関わることができるんじゃないかな、と思って。
山内マンガ家を目指したことは?
福田マンガ家になる夢は小学生の頃諦めたんです。でも、マンガは大好きで。マンガを描かなくても、マンガを紹介することならできるんじゃないかなって思って。それで1999年頃に「オリーブ」という雑誌で「料理研究家の秘密」みたいな特集ページがあって、そこでやってみたんです。そのページは料理研究家がお気に入りのものを紹介する、という内容なんですけど。オリーブですもんね。すてきなエプロンやお気に入りの調味料を紹介しろって話なんですけど、私、空気を読まずにマンガをおすすめしたんですよ(笑)。そこで紹介したのが、よしながふみ『こどもの体温』、大島弓子『いちご物語』や安野モヨコ『ハッピー・マニア』など。そこで、BL(ボーイズラブ)のえみこ山『抱きしめたい』も紹介したんですけど、オリーブは全部載せてくれた。それで、あ、載るんだって思って(笑)。結局、マンガは私の作るお菓子に影響を及ぼしているわけで、「料理研究家の秘密」として紹介するのはおかしなことじゃないんですよね。それから十数年経っているけど、未だにたまに言われるんですよ、あのときオリーブで見たって。大多数に届いたわけじゃないかもしれないけれど、ピンポイントで誰かの胸を打っていて、それが今の仕事につながったりするんですよね。
山内オリーブをきっかけにマンガコラムを手掛けるようになったんですね。
福田そうですね。オリーブの後、2000年にファッション誌「装苑」で1ページのフードコラムの連載の仕事が来たんです。そこでフードマンガ特集ページを担当編集さんと企画して、よしながふみさんを特集したんですが、ディレクターから担当編集が怒られちゃって。まあ、そうですよね。装苑的にはマンガじゃなくて、新しくできた美味しいお店を紹介してよってことだったんだと思います。でも、私はファッション誌にマンガの情報が無いのってどうなの?って、思っていて。そしたら、その後よしながさんが講談社漫画賞を取って、『西洋骨董洋菓子店』が月9ドラマになり、風向きが変わって「年1回やっていい」と(笑)。その後は羽海野チカさんの『ハチミツとクローバー』や二ノ宮知子さんの『のだめカンタービレ』と、15回続いています。
山内『まんがキッチン』はどんな経緯で?
福田竹村真奈さんが編集長の「Girlie」誌でマンガに出てきたお菓子を再現した連載をしませんか?と言われたことがあって、「それは嫌だ、マンガをイメージにしたものをお菓子で作りたい」って言ったら、それが通って(笑)。それがまとまったのが『まんがキッチン』なんです。
山内作中のお菓子を再現するんじゃなくて、作品からインスパイアされたお菓子を作りたいということですね。
福田そうそう。私にとって再現は美術で例えるなら石膏像を模写するようなものなんですよ。それも楽しいのは分かっているんだけど、私がやりたいのは二次創作。『まんがキッチン おかわり』で中村明日美子先生と対談させて頂いたんですけど、中村先生からズバッと「福田さんのやっていることって二次創作ですね」って言われて、本当にそうだなと。好きなマンガ作品を小説かマンガで二次創作してコミケに出す代わりに、私はお菓子で二次創作してるという。しかも公認で(笑)。