秩父郷里はあさつき村の畑に住むあさたろうは、色白でまん丸顔の、元気のいいネギぼうずです。

のどかなとある日、みると、村のあぜ道で、やつがしらのごんべえが幼なじみの椎の実のおようちゃんをいじめているではありませんか。

「きょうこそは勘弁できない」と、ネギ畑をとびだしたあさたろうは、得意のねぎ汁をふりまいて、こっぴどくごんべえをやっつけます。

さあ、これで黙って引き下がるごんべえではありません。しかたなく、あさたろうはしばらく故郷を後にするはめになります。回し合羽に三度笠、旅支度をきりりときめて、旅立つあさたろう、見送るはおっかさんとおようちゃんーー。さあ、行く手にどんな危険が？はたまた、峠の茶店の怪しい浪人の正体は？

この本にはちょんまげ姿の野菜たちがたくさん登場して、ナンセンスと痛快さに満ちたお話がテンポよく繰り広げられます。

それに、浪曲調の語り口とカメラアングルを思わせる場面描写は、まるで昔懐かしいチャンバラ映画を観るような楽しさです。子どもたちが喜ぶ、あのあっけらかーんとした面白さ！

少年時代は映画と浪曲とチャンバラごっこが大好きだったという作者の熱い思いがいっぱいつまった、楽しさ抜群の、浪曲風野菜づくし痛快時代劇絵本です。