内容紹介

ストーリー

【解説&ストーリー】
ルネ・クレール監督の風刺喜劇である。ルネ・クレールの喜劇としては、「ル・ミリオン」(31)、「自由を我等に」(31)などが有名だが、この「最後の億萬長者」もすこぶる過激で面白いコメディになっている。カジナリオという小さな都市国家が舞台。カジノの収益で成り立っている国という設定で、ちょっとモナコを連想したくなる。この国が財政危機に陥り、女王は外国で大金持ちになったカジナリオ人のバンコ氏を孫娘と結婚させ、彼の財力で経済危機を脱しようとする。凱旋将軍のように迎えられたバンコ氏は、ふとしたことから頭を強打し、過去の記憶を失い、そのうえ奇妙なことを命令するようになる。たとえば、臣下に犬の格好をさせたり、髭を生やしているものには半ズボンをはかせたり…。笑いの飛躍が面白い。政治風刺というよりは人間風刺になっているところに、ルネ・クレールの軽妙で自由なイマジネーションの素晴らしさがある。加えて、独特の優雅さ。これもルネ・クレールならではのものだ。この優雅なナンセンスは貴重である。