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コドモクロニクル1

コドモクロニクル 1 [電子書籍版]
宮内悠介

800(税込)

  • 発行形態:
  • 電子書籍

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商品基本情報

商品説明

〈ナショナル・エッセイ・プロジェクト 1〉

コドモクロニクル 1


本書は子供時代に関するエッセイの書き下ろしコレクションです。御寄稿いただいたのは以下の二十八名です。


斎藤真理子 宮内悠介 北原尚彦 Pippo

桐谷麻ゆき 吉野隆 照子 清水さやか

遠藤紘史 粕谷知世 佐伯紺 しげる

今井みどり 舞狂小鬼 夏野雨 川合大祐

mayumiNightly 三月の水 岩崎元 須藤岳史

矢田真麻 らっぱ亭 吉野仁 中川マルカ

馳平啓樹 下楠昌哉 深緑野分 林由紀子 (掲載順)


当たりまえのことですが、最初から大人として生まれてきた者はいません。

ではわれわれはいつ子供でなくなったのでしょう。いつ大人になったのでしょうか。大人になった者はいったいどこにいるのでしょう。


ワーズワースはかつて詩のなかで、子供はその人間の親だという意味のことを述べました。子供のころの経験、それはたしかに人の方向を決め、あるときは助け、あるときは挫きます。


本書に集められた歓び、驚異、孤独、不安、恐怖は、多くの人間が共有するものです。けれども不思議なことにそこにはなぜか明確な個人性もあります。見事に普遍なものと独自なものが共存しているように見えます。


おそらくここに集められた優れた文章は読者の心に鮮やかに子供時代を蘇らせます。濃密なノスタルジーを見ることもできますが、それはある種の錯覚でしょう。われわれはおそらく子供時代を失ってはいません。違います。子供時代はつねに心の奥のほうでそのままつづいています。われわれはみな大きな子供なのです。


本書は〈ナショナル・エッセイ・プロジェクト〉の一冊目です。叢書名はポール・オースターの出版企画「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」から直接的に借用したものです。


400字詰め原稿用紙換算約240枚。


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【抜粋】

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「砂鉄」 斎藤真理子


星座には線が引いてあると思っていた。図鑑や子供用百科事典で見た通りに。線が引かれた星座を実際に見たことはなかったが、たまたまお天気が合ってなかったのだろう、出来の悪い日に夜空を見たのだろうと思っていた。

あるとき、そんな線はないと知った。

だめだ。

世界、本気ではない。

とうっすら思ったが、気持ちは隠した。


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「PS41」 宮内悠介


高学年になると、給食や弁当のほかにアウトランチというものが許された。親から三ドルくらいをもらって外食してもよいというものだ。おのずと、皆、いかに食費を切りつめて駄菓子を買うかに腐心した。ピザ屋で巨大なピザの一切れとスプライトを買って二ドルくらい。残る一ドルで菓子を買うということが多かった。もう少し切りつめると漫画も買える。でもぼくは小さなスケートボードの玩具がついてくる食玩が好きで、色とりどりのスケートボードを好んで集めていた。


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「祭りの記憶」 北原尚彦


わたしは女の子の次に、そのくじ引きをやることにした。

くじを引き、女の子の真似をして手のひらを振り、再挑戦を要求する。

それを何度も繰り返す。

何回目だかにわたしが手を振ると、屋台の男性ーー若かったか年寄りだったかは覚えていないが大人の男性だったのは確かーーが言った。

「あんた、まだ続けられるほど金を持ってるのかい」

わたしは衝撃を受けた。「やり直し」は最初の代金での権利ではなく、ただ何回もくじを引かされていただけだったのだ。そして、引いた回数分の代金を、後から要求されるのだ。


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「わたしのヒーロー」 Pippo


その年の夏、ひょんなことからラッキィ池田の誕生日(十月二十五日)を知り、「そうだ! 帽子を作って誕生日プレゼントに贈ろう」と不意に思い立った。調べたら、ラッキィの所属する事務所の住所が判明したので、そこへ送ればきっと本人へ届くだろう、と幼心に算段をつけた。


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「そこにはみじかい光があって」 桐谷麻ゆき


空の広い、大きな川と中くらいの川がぶつかる街に住んでいたころ、ひとつ年上のお兄ちゃんは秘密基地をあちこちに作っていた。アパートの裏の畑に生えた木の陰、歪んだフェンスと生い茂った草のわずかな隙間、公園の裏山の木の洞なんかに。十四箇所ほどあった基地のなかでも第五基地のスケール感は群を抜いていた。第五基地は中くらいの川の堤防沿いに生えた一本の大きな木で、長くしなやかな枝葉は地面につくほどに垂れ、幹を中心にしたドームをかたちづくっていた。その枝葉をかきわけて中に入ると太い幹から大きな枝が何本も大胆に伸び、ところどころねじれあって、怪物がぱっくり口を開けているみたいに見えた。


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「お玉に目盛りを付けただけ」 吉野隆


僕は担任の先生に「お玉に目盛りをつけたい」と提案した。もちろん、夏休みの宿題をひとつ終わらせたかったからだ。なぜとか思いつくまでの経緯とかは説明することができない。なんとなく思いついただけの話だ。担任の先生はすぐに同意してくれて、隣のクラスの担任に相談してくれた。そしてすぐに我々の(つまり僕と先生たちの)「目盛り付きお玉」の作成


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「おっはみー」 照子


そんなふうに、世の中には私の知らない摂理が働いていて、不思議な力に満ちていることを疑わなかった。それは呪いのようだとも思う。あの階段の五段目から飛び降りることができれば、幼稚園でずっと遊んでいられると信じていたし、特別なマントを羽織れば透明になれると信じていた。ノストラダムスの大予言を信じていた。やさしさで人は癒えると信じていた。大人になれば、自由で、気がつくと恋をしていて、家庭ができて、子供が産まれ、一切のわだかまりなく人生が回っていくと信じていた。いったいいつ魔法は解けてしまったんだろう。


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「大好きなとうもろこしを食べすぎること」 清水さやか


祖母もまた一本を手にし、茹でるための下処理をしていた。さやかちゃんお手伝いしてくれておばあちゃんうんと助かるんよ、ありがとねえ、と私に向かって高く細い声を出しながら、そのくせ残酷なほど力強くとうもろこしの皮をむしり取ってゆく祖母の姿には迫力があり、私もそのまねをしてなるべく暴力的に皮を剥いでいった。


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【プロフィール】


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斎藤真理子(さいとう・まりこ)

韓国語翻訳者。編み物人間。


宮内悠介(みやうち・ゆうすけ)

小説家、著作に『盤上の夜』『ヨハネスブルグの天使たち』『彼女がエスパーだったころ』『カブールの園』『あとは野となれ大和撫子』など。


北原尚彦(きたはら・なおひこ)

古本とSFとシャーロック・ホームズをメインフィールドに書いています。


Pippo(ぴっぽ)

近代詩伝道師。昆虫・釣り好き。詩の読書会「ポエトリーカフェ」主宰。著作に『心に太陽を くちびるに詩を』。


桐谷麻ゆき(きりたに・まゆき)

歌人。真冬の北海道に生まれる。一六歳のころこっそりと短歌をつくりはじめる。かばん所属。


吉野隆(よしの・たかし)

一九六六年生まれ。東洋大学理工学部教授。専門は幾何学の理工学への応用。文学好き。


照子(てるこ)

一九九〇年生れ。俳人。『ヒドゥン・オーサーズ』(惑星と口笛ブックス)、『アウトロー俳句』(河出書房新社)などのアンソロジーに入集。


清水さやか(しみず・さやか)

サミュエル・ベケットについての博士論文を執筆中。


遠藤紘史(えんどう・ひろふみ)

会社員。惑星と口笛ブックスより短篇集『クォータービュー』を刊行。


粕谷知世(かすや・ちせ)

二〇〇一年『クロニカ 太陽と死者の記録』で日本ファンタジーノベル大賞受賞。そのほかの作品に、子供時代をテーマにした『ひなのころ』、『アマゾニア』『終わり続ける世界のなかで』がある。二〇二〇年二月に『小さき者たち』を刊行。


佐伯紺(さえき・こん)

一九九二年生まれ。短歌同人誌「羽根と根」「遠泳」に所属。二〇一四年に「あしたのこと」で第二五回歌壇賞受賞。二〇一八年、合同歌集『ベランダでオセロ』刊行。


しげる(しげる)

一九九〇年生まれ。「ALL REVIEWS 友の会」会員。


今井みどり(いまい・みどり)

物語のお陰で生き延びてこられた会社員。世界小説化計画に参画、綺譚作家を目指してます。


舞狂小鬼(まいくるこおに)

会社員、本好き。


夏野雨(なつの・あめ)

詩人。二〇一八年、思潮社より、詩集『明け方の狙撃手』を刊行。福岡県詩人賞受賞。


川合大祐(かわい・だいすけ)

川柳書き。

一九七四年、長野県生まれ。「川柳スパイラル」同人。著書に『川柳句集 スロー・リバー』(あざみエージェント)。


mayumiNightly(まゆみないとりー)

シューゲーズロックポップユニット "ChelseaTerrace"とエレクトリックソロ"GrayNightly"の作詞作曲。


三月の水(さんがつのみず)

東京の西で生まれ、育ち、いまに至る。

よく行く、書店/ジュンク堂吉祥寺店、古本屋/音羽館、レコード屋/ディスクユニオン 新宿ラテン・ブラジル館、映画館/アップリンク吉祥寺。


岩崎元(いわさき・げん)

『海豚座に捧ぐ百一発の砲声』(河出書房新社)刊行まで真木健一を名のる。なおオジキの殺気は若書きのエテュード『白い血』(河出書房新社)『微熱の夏休み』(角川書店)所収の短篇「銃声」などにも色濃くあらわれている。


須藤岳史(すどう・たけし)

ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者/文筆家。


矢田真麻(やだ・まあさ)

小説家。一九八六年生まれ。短篇集『ラヴ・ロング』ほか。


らっぱ亭(らっぱてい)

放射線科医、ラファティアン。時々、翻訳。


吉野仁(よしの・じん)

一九五八年東京生まれ。書評家。


中川マルカ(なかがわ・まるか)

一九七七年北九州市生まれ。東京都在住。マルカフェ文藝社主宰。


馳平啓樹(はせひら・ひろき)

一九七九年生まれ。作家。短編集『かがやき』(水窓出版)を発売中。


下楠昌哉(しもくす・まさや)

同志社大学文学部教授。アイルランド文学、幻想文学研究の営みを続く世代に引き継ぐことが我が責務。講道館柔道五段。


深緑野分(ふかみどり・のわき)

一九八三年十月六日生まれ。

自分の誕生日が好きすぎて数字の中で「6」を異様に愛しています。

割りやすいし。


林由紀子(はやし・ゆきこ)

一九五八年東京生まれ 銅版画家。


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